
#2500 - スコット・ホートン
- 概要 スコット・ホートン(リバタリアン研究所所長、『Provoked』著者)がジョー・ローガンと対談し、アメリカの外交政策、特にイラク戦争からウクライナ戦争、そして202...
- [1:38] メディアの変化と議論の場 ホートンは、オックスフォードでのウクライナ討論で敗北した経験を語る。聴衆は「この議場は、ウクライナを失うくらいならロシアと戦争する...
- [6:50] 新世界秩序からネオコンへ:ホートンの思想的変遷 ホートンは自身の思想的変遷を語る。1990年代には「新世界秩序(New World Order)」陰謀論を信...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
The Joe Rogan Experience / Joe Rogan
概要
スコット・ホートン(リバタリアン研究所所長、『Provoked』著者)がジョー・ローガンと対談し、アメリカの外交政策、特にイラク戦争からウクライナ戦争、そして2025年のイラン攻撃に至るまでの一貫したパターンを徹底的に解説する。ホートンは、ネオコン(新保守主義者)のドクトリンが冷戦終結後もアメリカの軍事帝国主義を推進し、NATO拡大によるロシアへの約束違反、ウクライナでのクーデター関与、そしてイランとの不要な戦争へと導いたと主張する。会話は専門的でありながらも、ジョークや辛辣な皮交じりのリラックスした雰囲気で進み、ホートンの長年の研究と現場での議論経験が随所に光る。
メディアの変化と議論の場
ホートンは、オックスフォードでのウクライナ討論で敗北した経験を語る。聴衆は「この議場は、ウクライナを失うくらいならロシアと戦争する方を選ぶ」という命題に賛成票を投じたという。ホートンは「彼らはH爆弾を7,000発も持っている。ロシアと戦争するなんて話は非現実的だ」と述べ、議論の枠組み自体が馬鹿げていると指摘する。また、ピアース・モーガンのような対決型フォーマットは視聴率は取れるが、深い議論には向かないと語る。ホートンは、かつてはラジオこそが「本物のメディア」だったが、今やポッドキャストが完全に市場を変えたと述べ、テレビは広告の中断やスポンサー圧力で深い議論ができない「死にかけの市場」だと断じる。
新世界秩序からネオコンへ:ホートンの思想的変遷
ホートンは自身の思想的変遷を語る。1990年代には「新世界秩序(New World Order)」陰謀論を信じていたが、イラク戦争を通じて考えを改めた。彼は「新世界秩序とは国連による世界政府ではなく、ワシントンDCによる世界政府を築くことだった」と説明する。転機となったのは、ポール・ウォルフォウィッツが1992年に起草した「国防計画ガイダンス(Defense Planning Guidance)」、通称「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」の発見だ。この文書は「米国が地球上のあらゆる大陸で最も支配的な勢力となり、他のいかなる国や同盟が米国に対抗して結束する試みさえ許さない」と宣言していた。ホートンは、これが冷戦後のアメリカの軍事政策の青写真であり、中東、東欧、東アジアへの軍事拡大を正当化してきたと主張する。
七カ国とイラク戦争の真実
ホートンは、ウェズリー・クラーク元NATO最高司令官が語った有名な「七カ国」のエピソードを詳しく解説する。クラークは国防総省の将校から「これから5年で七カ国を制圧する」というメモを見せられたという。リストにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが含まれていた。ホートンは「イランを除くすべてが実際に実行された」と指摘する。彼は、この政策の背後にある「クリーン・ブレイク(Clean Break)」ドクトリンを紹介する。これは1996年にリチャード・パールとデイヴィッド・ワームサーがネタニヤフのために書いた政策文書で、オスロ和平プロセスを放棄し、「力による平和」を追求するよう提言していた。ホートンは、このドクトリンがイラク戦争の理論的基盤となり、結果的にイランを地域で大いに利することになったと説明する。「彼らはシーア派がヨルダン王の言うことを聞くと思い込んでいたが、実際はイランに権力を与えただけだ」とホートンは皮肉る。
ウクライナ:アメリカが仕掛けた代理戦争
ホートンは、ウクライナ戦争の起源を冷戦終結直後まで遡る。彼は、ジェームズ・ベイカー国務長官らがミハイル・ゴルバチョフに対して「NATOを東に1インチも拡大しない」と約束したことを、複数の機密解除文書を引用して立証する。しかし、クリントン政権はこの約束を反故にし、NATOをロシア国境まで拡大した。ホートンは、ジョージ・ケナン(冷戦期の封じ込め政策の提唱者)が1998年のニューヨーク・タイムズで「NATO拡大はロシアの否定的な反応を招き、その後『ほら、ロシアは危険だ』と言ってさらに拡大する口実にされる」と警告していたことを紹介する。ホートンは、アメリカが2004年のオレンジ革命と2014年のユーロマイダン革命の両方でウクライナ政府転覆に関与したと主張する。さらに、ヴィクトリア・ヌーランド(ロバート・ケーガンの妻)がウクライナ政府のあらゆるレベルに「我々の人々」を配置していると証言したことを引用する。ホートンは、ランド研究所の2019年の報告書「Extending Russia」を重要な証拠として挙げる。この報告書は、ロシアを「過剰拡張」させるために、ベラルーシでのクーデター試行、シリアのジハード主義者への武器供与、カザフスタンでの政権転覆、ウクライナ軍への支援強化など、ロシアを多方面で刺激する戦略を提案していた。ホートンは「バイデンはこの報告書から警告部分だけを削除して実行した」と非難する。
ノルドストリーム爆破とドイツ・ロシア分断
ホートンは、ノルドストリーム・パイプライン爆破事件について詳細に論じる。彼は、このパイプラインがドイツとロシアを結びつけ、アンゲラ・メルケルが推進した「ユーラシアの家(Eurasian Home)」構想の要だったと説明する。「ドイツの製造力とロシアの原材料、そして両国の軍事力が結びつけば、東欧を支配し、他のすべての国を締め出すことができる。これこそが英米の政策立案者の『原初の恐怖(primordial fear)』だ」とホートンは語る。爆破の実行犯については、シーモア・ハーシュが米軍の潜水夫によるものと報じた一方、ジェレミー・スカヒルやジェームズ・バンフォードはウクライナの関与を主張するなど、複数の説があると述べる。しかしホートンは「誰がやったにせよ、明らかにアメリカの利益になった」と結論づける。また、この爆破が歴史上最大のメタン放出を引き起こした環境犯罪でもあると指摘する。
イラン戦争:帝国の虚構が暴かれる
ホートンは、2025年2月に開始されたイラン攻撃を「アメリカの軍事帝国の破産宣告」と評する。彼は、イランが18の米軍基地を攻撃し、レーダー基地、滑走路、給油タンカー、AWACSレーダー機を破壊し、湾岸地域のミサイル防衛システムの大部分を無力化したと説明する。カタールはイランと取引し、米軍の主要航空基地からの出撃を禁止したという。ホートンは「戦争ができない軍事基地に何の価値があるのか」と問いかける。彼は、2007年に統合参謀本部がブッシュに対し「イランとの戦争ではエスカレーション優位(escalation dominance)を確保できない」と警告していたことを明かす。ホートンは、トランプがネタニヤフに説得されて戦争に踏み切った経緯を詳述する。ネタニヤフは「イランが民生用核プログラムを持つこと自体が核兵器製造と同じだ」というイスラエルの立場をトランプに受け入れさせたという。ホートンは、イランの核プログラムはIAEAの厳格な監視下にあり、兵器級ウランへの転換には1年かかること、プルトニウム経路はすでに断たれていることを説明し、「核の脅威は幻想だった」と断言する。
終末論と軍事的意思決定
ホートンは、米軍内部に広がるキリスト教終末論の危険性について警告する。彼は、ある軍事司令官が非 commissioned 将校たちに対し「ドナルド・トランプ大統領はイエス・キリストに油注がれ、イランに狼煙を上げてハルマゲドンを引き起こし、キリストの再臨を告げる者だ」と語った事例を紹介する。ホートンは、マイキー・ワインスタイン(軍事宗教自由財団)の証言を引用し、特に空軍の高級将校の間でこのような終末論的信念が広がっていると述べる。「彼らが核兵器を管理しているというのが恐ろしい」とホートンは語る。彼は、この終末論がイラク戦争の正当化にも使われたと指摘する。多くのプロテスタント牧師が信者に「中東戦争は携挙(ラプチャー)への道だ」と説いたが、『レフト・ビハインド』シリーズの予言が実現しなかったことで、現在は福音派のイスラエル支持が大きく減退していると説明する。
ネタニヤフの影響力とアメリカの従属
ホートンは、ネタニヤフがトランプを戦争に導いたプロセスを詳細に分析する。ニューヨーク・タイムズの報道によれば、ネタニヤフはトランプと机を挟んで向かい合って座り、戦争が「簡単」だとプレゼンテーションを行ったという。他の閣僚たちは「ボス、彼の言うことを信じないでください」と警告したが、誰も「イランは核兵器を製造できない」という核心的な事実を指摘しなかったとホートンは嘆く。副大統領のJ.D.ヴァンスはアゼルバイジャン訪問中で会議に出席できなかったが、ホートンは「ネタニヤフが意図的にヴァンスの不在を狙った可能性が高い」と示唆する。ホートンは、ビル・クリントンがネタニヤフとの初会談後に「誰が超大国で誰が従属国だと思ってるんだ」と叫んだ逸話を紹介する。また、イスラエルが核兵器を保有しながらNPTに加盟していない矛盾を指摘し、ジョン・F・ケネディがイスラエルの核施設査察を要求したこと、リンドン・ジョンソンがモサドのエージェントだった愛人(マチルダ・クリム)の影響を受けて政策を転換した可能性についても言及する。
イラン戦争の行方とアメリカの選択肢
ホートンは、イラン戦争の現状と今後の見通しについて pessimistic な見解を示す。彼は、トランプが「勝利宣言」して撤退するのが最善の選択肢だと主張するが、ネタニヤフがそれを許さない可能性が高いと述べる。イスラエルは停戦合意後もレバノンでの爆撃を即座に再開し、合意を破壊したという。ホートンは「トランプはネタニヤフに何らかの形で『奴隷化』されている」とタッカー・カールソンの発言を引用する。彼は、アフガニスタンでの20年間の教訓を挙げ、「負けを認める勇気が必要だ」と訴える。ホートンは、この戦争がイランの地域支配力をさらに強化したと結論づける。「2月27日には湾岸はアメリカの支配下にあった。3月1日にはすべてが終わった。20年間言い続けてきたことが現実になった。湾岸の全資産はイランの手の届く範囲にあり、我々にはどうすることもできない」と語る。
まとめ
このエピソードの核心は、アメリカの外交政策が「無知と傲慢と利益の複合体」によって動かされているというホートンの痛烈な分析にある。彼は、イラクからウクライナ、イランに至るまで、同じネオコンのドクトリンが繰り返し適用され、その都度「予測可能な失敗」を繰り返してきたことを、膨大な一次資料と歴史的証拠で立証する。特に印象的なのは、ランド研究所の報告書が警告したリスクがそのまま現実化したこと、そして政策決定者たちが核不拡散条約の基本メカニズムさえ理解していないという指摘だ。ホートンの議論は単なる反戦論ではなく、アメリカの「疑似帝国」が自らの軍事力の限界と向き合う時が来たという現実認識に基づいている。
要点
- 冷戦終結後、アメリカはNATO不拡大の約束を反故にし、ロシアを挑発し続けた。ジョージ・ケナンは1998年にこの結果を正確に予言していた。
- イラク戦争の真の目的は「クリーン・ブレイク」ドクトリンに基づく中東再編であり、結果的にイランを地域の覇権国に押し上げた。
- ウクライナ戦争の根源は、2014年のアメリカ主導のクーデターと、NATO拡大という長年の挑発にある。ランド研究所はロシアを過剰拡張させる戦略を提案していた。
- ノルドストリーム・パイプライン爆破は、ドイツとロシアの接近を阻止するための戦略的行為であり、誰が実行したにせよアメリカの利益に適った。
- イランの核プログラムはIAEAの厳格な監視下にあり、兵器製造能力は持っていなかった。戦争は虚偽の脅威に基づいて開始された。
- 米軍内部にはキリスト教終末論を信じる高級将校が存在し、政策決定に影響を与えている可能性がある。
- ネタニヤフは歴代アメリカ大統領に対して異常な影響力を持ち、自国の利益のためにアメリカを戦争に導いてきた。
- 2025年のイラン戦争はアメリカの軍事帝国の限界を露呈させ、湾岸地域におけるアメリカの支配は事実上崩壊した。