
#2473 - Bill Thompson
- 概要 退役米陸軍准尉官でAI搭載ハンティング予測マッピングツール「Spartan Forge」のCEOであるビル・トンプソンが、ジョー・ローガンとの対話の中で、1840年...
- --- [0:15] ランデブー文化と伝統工芸 トンプソンはまず、ローガンに贈った特別なナイフの説明から始める。このナイフは、トンプソン自身が2017年にカナダで仕留めた...
- このナイフ製作の背景にあるのが「ランデブー」と呼ばれる1840年以前の生活再現イベントだ。トンプソンは5歳で父親を亡くした後、継父に連れられてこの世界に入った。ランデブー...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
The Joe Rogan Experience / Joe Rogan
概要
退役米陸軍准尉官でAI搭載ハンティング予測マッピングツール「Spartan Forge」のCEOであるビル・トンプソンが、ジョー・ローガンとの対話の中で、1840年代の山岳民族再現イベント「ランデブー」での少年時代の体験、軍でのシグナルインテリジェンスとサイバー攻撃開発のキャリア、個人の自由と国家権力の関係についての深い考察を展開する。このエピソードは、伝統的な生活様式への郷愁と最先端テクノロジーへの精通という一見矛盾する二つの世界を生きる男の知的好奇心と、現代アメリカ社会への鋭い批判が交錯する、密度の高い会話となっている。
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ランデブー文化と伝統工芸
トンプソンはまず、ローガンに贈った特別なナイフの説明から始める。このナイフは、トンプソン自身が2017年にカナダで仕留めた最大級のクロクマの顎骨を二つに割って柄にしたもの、1860年代のアンティークナイフの刃を弟が研磨し直したもの、そして伝統技法で作られた鞘から構成されている。鞘はバッファローの脳なめし革、表側はビーバーの尾の革、装飾にはヤマアラシの針と馬と七面鳥の毛が使われている。
このナイフ製作の背景にあるのが「ランデブー」と呼ばれる1840年以前の生活再現イベントだ。トンプソンは5歳で父親を亡くした後、継父に連れられてこの世界に入った。ランデブーでは、キャンプ内のすべての物品が1840年以前のものでなければならない。冷蔵庫などの近代的な道具は一切禁止される。1840年という年号は、毛皮猟師の黄金期、いわゆる「ジェレマイア・ジョンソン」の時代の終わりにあたる。
トンプソンはこのランデブーで、動物の脳を使った革のなめし方、伝統的な弓術などを学んだ。特筆すべきは、どの動物も自分の皮をなめすのに必要な量の脳を正確に持っているという事実だ。脳をすりつぶして水に混ぜ、きれいにした革を浸すことで、柔らかく上質な革ができる。トンプソンは「なぜ脳が効くのか、脂肪なのか、そこまでは調べていない」としながらも、この伝統技法への敬意を示す。
ランデブーには二種類ある。一般的なものではテント内にクーラーボックスを持ち込めるが、招待制の「ジュリー・サザンズ」と呼ばれるより厳格なものでは、キャンプ内のすべてが1840年以前のものでなければならない。参加者は駐車場で待ち合わせ、荷物をラバに積んで山奥に入る。縫い目がミシン縫いだと指摘されれば外されるほど厳格だ。参加者の約60%は本名ではなく「キャンプネーム」を使う。トンプソンのキャンプネームは「イオタ(よくしゃべる奴)」で、14歳の時にビッグホーン山脈で命名された。
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通過儀礼の喪失と男性性
トンプソンは、現代社会に欠けているものとして「成人の通過儀礼」を挙げる。「部族社会では、『お前はもう大人だ』という明確な構造があった。しかし今は、男性が45歳、50歳、60歳になっても子供のままでいることができる」。女性は生物学的に成熟し、子供を産み、安全を求める必要に迫られるが、男性は地下室に引きこもって永久に子供のままでいられる。
ローガンは自身の黒帯取得と格闘技の経験を挙げ、「グループの男たちが『お前はこのレベルに達した』と言い、もし落ちぶれたらすぐに注意してくれる。そういう仕組みが若い男性には必要だ」と同意する。
トンプソンにとって軍が最初の転機だった。「父が5歳の時に亡くなり、13、14歳まで男性の権威がなかった。軍に入って初めて、基準があり、それを守ることが期待される環境を得た」。さらに子供を持つことで、「これは自分の問題ではない。自分に依存している脆弱な小さな人々のために背骨を折る覚悟が必要だ」という第二の原初的な感覚が生まれたと語る。
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離婚文化と家族の崩壊
トンプソンは1980年代から90年代の「離婚文化」を批判する。「もちろん虐待的な関係なら離婚すべきだが、離婚が簡単になりすぎて正常化された。最も被害を受けるのは子供たちだ」。統計的に、再婚家庭における新しい配偶者は幼い子供の虐待の最も有力なベクターになるという。
自身の経験として、父親の死後すぐに母親が再婚した相手は虐待的で、特に弟に厳しく当たったと語る。母親はすぐにその男のもとを離れたが、この経験がトンプソンの家族観に影響を与えている。「すべての家族は尊重されるべきだが、崩壊した家族を統一された家族と同じレベルに置くべきではない。それは難しい線引きだが」。
ローガンはこれを「フックの法則」に例える。1940年代から60年代にかけて離婚が不可能だった反動で、ベビーブーマー世代が過剰に離婚を正常化した。「人間は常に過剰修正をする。一方向に行き過ぎて破壊的だと気づき、逆方向に過剰修正する」。
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政治思想と規律の重要性
トンプソンは自身を「政治的に居場所のない男」と表現する。「私は保守的な性質を持っている。システムは変わる必要があるが、ゆっくりと、実用的に変わるべきだ。社会実験はほとんど意図した結果にならない」。連邦主義の精神に基づき、「カリフォルニアにはしばらくクレイジーなことをさせておいて、何が学べるか見てみよう」と語る。
ローガンは「この国で最大の問題の一つは、規律への敬意の深刻な欠如だ」と指摘する。「規律は保守主義と結びつけられている。私はどちらかの側に完全に同一化しているわけではないが、保守派が重視する規律、勤勉、文句を言わずにやる、与えられた状況で対処する、という姿勢には同意する」。
トンプソンは「自殺的共感(suicidal empathy)」という概念を紹介する。「社会は自殺的共感に苦しむことができる。ある時点で、ルールを enforce し、人々に自分の人生を立て直させる必要がある」。この共感は、それを押し付ける側が自分自身を良く感じるための道具になりうる。「立法者やシンクタンクの人間は、自分が作ったルールの影響を決して受けない。他人に押し付けて、自分は慈悲深いと感じる。それが政府の大きな問題だ」。
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政府のインセンティブと無駄
トンプソンは軍での経験から、政府システムの根本的な問題を指摘する。「システムには独自のインセンティブがある。そのインセンティブは任務の成果ではなく、組織の拡大と予算の執行だ」。自身が目撃した事例として、予算を全額執行しなかった将校が国防総省で叱責される場面を挙げる。「300百万ドルの海外派遣作戦資金を執行しなかったと言って、一時間も叱られた。予算を使い切らなければ、翌年の予算が減らされるからだ」。
このインセンティブ構造が、39兆ドルの国家債務と150兆ドルの未積立負債につながっているとトンプソンは主張する。「システムは存在し、成長すること自体が目的になっている。もはやなぜこれだけの債務があるのか疑問ではない」。
ローガンは「GDPの巨大な割合が詐欺で構成されている」という指摘を紹介する。「詐欺を排除するとGDPが下がる。だから政府は本気で詐欺を取り締まれない」。カリフォルニアのホームレス問題では240億ドルが使われたが、その使途は追跡不能で、監査も拒否されている。「ホームレス産業複合体」がGDPを支えているという皮肉な構造を二人は批判する。
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アウトサイダーとしてのトランプとパターン分析
トンプソンはトランプを「ジャクソニアン」であり「アウトサイダー/救世主」パターンに当てはまると分析する。このパターンは『荒野の七人』やX-MENのウルヴァリン、パットン将軍などに見られる。「システムが腐敗しきっている時、夕食会に招きたくないような人物に頼らざるを得ない。しかしシステムがリセットされたら、彼らには去ってもらう必要がある」。
トンプソンはパットン将軍を例に挙げる。「彼は将軍らしい風格がなく、アイボリーのピストルを持ち、普通の将軍のように話さなかった。しかしバルジの戦いでは彼しかいなかった。ドイツ軍は彼を神話的な存在として語っていた」。しかしこのパターンは常に悲劇的な結末を迎える。「パットンは奇妙なジープ事故で死に、ウルヴァリンは荒廃した世界に一人残される」。
ペトレイアス将軍も同様の例だ。「彼は2006年のイラクで機能していなかったシステムを立て直した。しかしCIA長官になった後、女性問題で失脚した。彼らは『彼の役割は終わった』と言わんばかりに」。
トンプソンはトランプを「C+かB-」と評価する。「バイデン政権よりは確かに良かった。しかし彼がシステムを根本的に変えるかどうかは、まだ結論が出ていない」。
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軍における「ウォーク」政治と個人の評価
トンプソンはバイデン政権下の軍で経験した問題を語る。「将官たちに読むよう指示された本には『White Rage』があった。『あなたは白人の男性だから、システム的人種差別の一部だ。暗黙のバイアスから逃れられない』と教えられた」。
トンプソンはこの考え方に強く反発する。「私が知っている戦死者の80%は中西部の白人農場の出身者だ。彼らはおそらく戦うべきではなかった戦争で命を落とした。そして今、彼らが問題の一部だと言われるのか?」。
特に問題視したのは、意図ではなく受け手の感情で判断するという「平等機会ブリーフィング」の内容だ。「女性が素敵なドレスを着ていて、『妻に買ってあげたい』と思って『素敵なドレスですね』と言っただけでも、相手が性的に感じ取れば調査対象になる」。トンプソンは「合理的な人物の基準」ではなく、完全に主観的な基準で判断されることに警鐘を鳴らす。
「私たちは何年も戦争をしていた。ギャロウズ・ユーモア(死をネタにした笑い)でストレスを発散していた。しかし誰かがそのジョークを聞けば、軍事調査の対象になり、キャリアが終わる。戦場で人を殺して一時間後に、誰かの感情に敏感になれと言われても無理だ」。
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シグナルインテリジェンスとサイバー作戦の実態
トンプソンは軍でのキャリアを詳述する。最初はシグナル・インテリジェンス(SIGINT)で、レーダーの電子信号を分析し、地上面攻撃の前にパイロットに地対空ミサイルの位置を伝える任務だった。その後、通信インテリジェンスに移行し、携帯電話、無線機、衛星通信の分析を行うようになる。
スマートフォンの登場により、軍はコンピュータネットワーク運用(CNO)の専門職種を新設した。トンプソンはその立ち上げから関わり、「倫理的ハッキング」と呼ばれる活動を展開する。具体的には、Wi-Fiネットワークへのwar driving、エンドポイントの収集、携帯電話のフォレンジック分析などを行う。作戦後に回収した端末から最大限の情報を抽出し、次の作戦を計画する。
特筆すべきは、フィリピン南部での活動だ。トンプソンは2007年からフィリピン南部のミンダナオ島で対テロ作戦に従事していた。アブ・サヤフ・グループやジェマ・イスラミアといった組織が、パキスタンやアフガニスタンから往来しながら、キリスト教徒を標的にしたテロを展開していた。トンプソンは第1特殊部隊グループに所属し、これらの地域で情報収集を行っていた。
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ペガサスと携帯電話のセキュリティ
トンプソンはペガサス(Pegasus)について説明する。これは最初はクリック型のエクスプロイトだったが、後にノンクリック型に進化した。つまり、ユーザーが何かをクリックしなくても、電話番号を知っているだけで端末に侵入できる。ペガサスの優れていた点は、通常のフォレンジックでは発見されにくい場所にインプラントを保存したことだ。
「私が軍でインプラント開発をしていた時は、ゼロデイ脆弱性や未パッチの端末に依存していた。しかしペガサスは別次元だった」。トンプソンは、中国製ルーターやHuawei、ZTEの機器についても警告する。「中国はアフリカ中に通信インフラを無償で提供している。それは資源を得るためであり、人々の会話を傍受するためだ」。
ローガンが「最も安全な電話は何か」と問うと、トンプソンは「答えはなく、トレードオフしかない」と答える。「あなたが誰で、何をしているかによる。もし政府を信頼するならApple、信頼しないならAndroidでGraphene OSを使う選択肢がある」。Androidはオープンソースであるため、コードレベルでの検査が可能だが、Appleはクローズドで信頼に依存する。
トンプソンは自身のセキュリティ対策として、Raspberry PiでWireGuard VPNを自宅に設置し、すべてのトラフィックをそこに通すことを推奨する。「しかし、国家レベルの攻撃者に対しては、最終的にはアクセス手段を必ず見つけられる。高価になるかどうかの違いだけだ」。
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憲法修正第17条と権力の集中
トンプソンは憲法修正第17条を「個人と州の権利を奪った最も重要な変更」と位置づける。建国当初、上院議員は州議会によって任命されていた。その役割は、連邦政府から州の権利を守ることだった。「下院は『手に負えない子供たち』で、クレイジーなアイデアを出す。上院はその間に立ち、『これは良いアイデアだが、残りは馬鹿げている』と言う役割だった」。
しかし第17条により、上院議員も直接選挙で選ばれるようになった。「これで上院は下院の冗長になった。ノースダコタ州では人口の85%がファーゴとグランドフォークスに集中している。上院議員に選ばれたいなら、その二つの都市だけでキャンペーンすればいい。残りの州を代表する必要はない」。
この変更により、権力は州から連邦政府に吸い上げられた。「かつて州は『思考実験』の場だった。カリフォルニアがクレイジーなことをしても、テキサスには影響しない。しかし今やすべての権力はワシントンに集中し、個人は無力になった」。
トンプソンはさらに、最高裁判所の違憲審査権(Marbury v. Madison)も本来は憲法にない権限だと指摘する。「8人のローブを着た人間が法律の合憲性を判断する。それは民主主義ではなく、寡頭制だ」。
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まとめ
このエピソードの核心は、伝統的な山岳民族の生活様式と最先端のサイバーセキュリティ技術という一見相反する二つの世界を生きる男の視点から、現代アメリカ社会の病理を浮き彫りにした点にある。トンプソンの「個人の自由」への執着は、1840年代のランデブーでの体験から軍でのサイバー作戦、そして憲法解釈に至るまで一貫している。彼の主張は時に過激だが、システムのインセンティブ構造を「内部から見た」経験に基づく具体性がある。ローガンとの対話は、政治的左派・右派の枠組みを超えた「個人vsシステム」という普遍的なテーマを、技術的詳細と歴史的教養を交えて掘り下げた貴重な内容となっている。
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要点
- トンプソンは1840年代の生活再現イベント「ランデブー」で育ち、動物の脳を使った革なめしなどの伝統技術を習得した。この経験が彼の「個人の自立」への信念の基盤となっている
- 軍でのシグナルインテリジェンスとサイバー攻撃開発のキャリアを通じて、政府システムのインセンティブは「任務の成果」ではなく「組織の拡大と予算執行」にあると結論づけた
- ペガサスのようなノンクリック型エクスプロイトの存在は、電話番号を知っているだけで誰でも標的になりうることを意味する。最も安全な電話は「誰が何のために使うか」に依存する
- 憲法修正第17条(上院議員の直接選挙化)は、州の権利を守るための上院の機能を無効化し、連邦政府への権力集中を促進したとトンプソンは主張する
- 軍における「意図ではなく受け手の感情で判断する」方針は、合理的な基準を排除し、個人のキャリアを破壊する危険な運用がなされていた
- トランプは「アウトサイダー/救世主」パターンに当てはまるが、歴史的にこのパターンは常に悲劇的な結末を迎える。トンプソンはトランプをC+からB-と評価する
- 無料のアプリやサービスは「ユーザーが製品」であり、顔認識やAIトレーニングのためのデータ収集が目的だとトンプソンは警告する
- AI(大規模言語モデル)は「意識の投影」に過ぎず、真の知性や意識を持つことはない。トンプソンはAGI到達宣言に強く反対する立場を取る