
#2469 - Brigham Buhler
- 概要 このエピソードでは、ジョー・ローガンが機能的・再生医療クリニック「Ways2Well」のCEOであるブリガム・ブラーを迎え、アメリカの医療制度の根本的な問題点と、ペ...
- [0:01] ペプチド規制改革の最前線 ブラーは、前政権下でFDAがペプチドを「危険」と分類した決定を「トロイの木馬」と表現する。彼はFDAに対して17件の情報公開請求(...
- ブラーは、現在のFDA長官マーティ・マカリーとの関係にも触れる。マカリーの著書『Blind Spot』は、医療におけるドグマ(教条主義)の問題を扱っており、ブラーは「ドグ...
英語Podcastの要点を、聴く前に日本語で把握したい人。
The Joe Rogan Experience / Joe Rogan
概要
このエピソードでは、ジョー・ローガンが機能的・再生医療クリニック「Ways2Well」のCEOであるブリガム・ブラーを迎え、アメリカの医療制度の根本的な問題点と、ペプチド、幹細胞、遺伝子治療といった予防・再生医療の可能性について深く掘り下げている。ブラーは、ビッグファーマとFDAの既存システムが「病気の治療」ではなく「病気の管理」を前提に構築されており、慢性疾患の予防や健康寿命の延伸を阻害していると主張。ケネディ保健長官の下で進む規制改革の最前線と、患者の自己決定権を重視した「現金払いモデル」という新たな医療の形を提示する。会話は専門的でありながらも、ブラーの熱意とローガンの好奇心が交錯する、非常に密度の高い内容となっている。
ペプチド規制改革の最前線
ブラーは、前政権下でFDAがペプチドを「危険」と分類した決定を「トロイの木馬」と表現する。彼はFDAに対して17件の情報公開請求(FOIA)を提出したが、一度も回答を得られなかったと述べ、前政権の情報閉鎖性を批判する。しかし、ケネディ保健長官の就任と「MAHA(Make America Healthy Again)」運動の台頭により、状況は一変した。ケネディ自身がペプチドを使用し、その恩恵を理解していることが大きいとブラーは強調する。
ブラーは、現在のFDA長官マーティ・マカリーとの関係にも触れる。マカリーの著書『Blind Spot』は、医療におけるドグマ(教条主義)の問題を扱っており、ブラーは「ドグマとコンセンサスを混同するな」という同書の一節を引用。医療界が科学よりも既存の原則や同調圧力を優先する傾向を批判する。マカリー自身は外科医としてペプチドに精通していなかったが、オープンマインドで学ぼうとする姿勢を示しているという。
テストステロン神話の崩壊
ブラーは、テストステロン補充療法(TRT)と前立腺がんの関連性について、根強い誤解を解く。この恐怖の根源は、1930年代のたった3人の患者を対象とした研究に遡る。その研究では、化学的去勢された患者(テストステロン値ゼロ)にテストステロンを投与すると、理論的に前立腺がんを悪化させるリスクがあるとされた。しかし、正常なテストステロン値を持つ患者にはリスクがなかった。ブラーは「植物に水をやる」比喩を用いて説明する。受容体サイトが飽和状態になれば、それ以上は水を吸収できない。最適値を超えてテストステロンを投与すると、むしろ複数のがんに対する防御効果が得られるという。
ブラーによれば、テストステロン療法の普及後、前立腺がんの罹患率が急増したという証拠は一切ない。この神話が1990年代に著名な泌尿器科医モーガン・タイラーによって実質的に否定された後も、医学教育の中で繰り返し教えられ、「都市伝説」のように生き続けている。現在、FDAの新体制は男性・女性ホルモン療法のブラックボックス警告を撤廃する方向で動いており、これはブラーが約10年にわたって主張してきたことの実現だと彼は語る。
ペプチド規制をめぐる政治経済学
ブラーは、ペプチド規制の背景にある巨大な経済的利害関係を詳細に解説する。彼自身が「典型的なアメリカ人患者」だったと告白。肥満で糖尿病予備軍だった彼は、年一回の血液検査と医師の指示に従う「システム」を信じていたが、それが機能していなかったと振り返る。
問題の核心は、医薬品開発のコスト構造にある。ブラーによれば、1つの医薬品を市場に出すには最低でも3億ドル、場合によっては30億ドルかかる。このシステムはビッグファーマの特許保護と利益最大化のために設計されており、自然に存在する分子や特許化が難しいペプチドはこの枠組みに適合しない。ブラーは「ペプチドは一度も犯したことのない罪で有罪判決を受けた」と表現する。
さらに、GLP-1(肥満治療薬)市場をめぐる争いについて、ブラーはビッグファーマの戦略を暴露する。イーライリリーは中国のペプチド企業を70億ドルで買収しながら、同時に「中国からのAPI(医薬品有効成分)は危険」とロビー活動を行っている。調剤薬局(コンパウンダー)が特許侵害をしていると主張する一方で、リリー自身は特許そのものではなく、広告方法などを巡って訴訟を起こしているに過ぎないとブラーは指摘する。
調剤薬局vs.ビッグファーマ:GLP-1戦争の真相
ブラーは、HIMSという企業を巡る事件を「業界全体を破壊するために設計された策略」と断じる。HIMSはスーパーボウルで、調剤薬局としては違法となるブランド名(ノボノルディスクの製品名)を使用した広告を流した。これにより規制当局の怒りを買い、調剤薬局全体への締め付けが強化された。ところが、そのわずか2週間後、HIMSはノボノルディスクと提携し、ブランド薬の提供を開始。株価は急騰した。
ブラーは「これはマーケティング企業による計画的犯行」と断言する。HIMSは調剤薬局ではなく、マルチビリオン・マーケティング企業であり、この一連の行動は意図的に調剤薬局業界に地雷を仕掛けたものだという。現在、この事件を巡る大規模な独占禁止法訴訟が進行中であり、ブラーはリー・ローズブッシュという弁護士・薬剤師が主導する訴訟に注目している。
ブラーが強調するのは、このような「悪質な行為者」の存在が、規制当局に業界全体を敵視させる口実を与えているという点だ。彼は「4つのペプチドのうち5つは、グレーマーケットまたはブラックマーケットを通じて流通している」と衝撃的な数字を挙げる。つまり、大多数のペプチドは医師や薬剤師の関与なしに、品質管理もされずに患者の手に渡っている。これは「最も危険な時代」だとブラーは警告する。
現金払いモデル:保険医療からの脱却
ブラーのビジョンの核心は、既存の保険モデルとは完全に独立した「現金払い(キャッシュペイ)モデル」の構築にある。彼はアメリカの医療保険を「自動車保険」に例える。自動車保険は事故(心臓発作や脳卒中などの緊急事態)には対応できるが、慢性疾患の予防には全く機能しない。そして、現在のシステムは「処方箋管理システム」であって「医療システム」ではないと断じる。
ブラーは「連邦政府の税金やメディケア・メディケイドの資金を一切要求しない」と明言する。彼が求めているのは、患者と医師の神聖な関係を信頼し、患者が自分の健康に対して主権と自律性を持つことを認めることだけだ。「もし私がブレット・ファーブで、進行したパーキンソン病と診断されたら、FDAの承認プロセスに10年も待つ理由があるのか?」と彼は問いかける。
このモデルの利点として、ブラーは「消費者による監視」を挙げる。現金を支払っている患者は、効果がなければすぐにサービスを解約する。保険モデルのように「セット・アンド・フォーゲット(放置)」では済まされない。これこそが品質保証の仕組みだと彼は主張する。
MUSE幹細胞:再生医療の聖杯
ブラーが最も熱く語るのが、日本の科学者・ Mari Dezawa(出澤真理)が2010年に発見した「MUSE細胞」だ。MUSEとは「Multilineage(多系統)」と「Stress-Enduring(ストレス耐性)」の頭文字を取ったもので、体内に元々存在する幹細胞のうち、わずか2%未満の超希少なサブセットである。
発見の経緯は偶然だった。出澤は細胞を培養皿に置いたまま夕食に出かけ、翌日戻ると他の細胞は全て死滅していたが、このサブセットだけが生き残っていた。この「超回復力」がMUSE細胞の最大の特徴の一つだ。
ブラーはMUSE細胞の4つの画期的な特性を説明する。第一に、真の多能性(pluripotency)を持つ。従来の間葉系幹細胞(MSC)は体内で分化せず、単に損傷部位にシグナルを送りミトコンドリアを移すだけだが、MUSE細胞は損傷した細胞を「食べて」(貪食)、その細胞の若く健康なバージョンになる。第二に、非腫瘍形成性。従来の多能性細胞はがん化のリスクがあったが、MUSE細胞は既存のがんを持つマウスの実験でも腫瘍を悪化させず、むしろ縮小させた。第三に、免疫調節能。従来のMSCでは10-15%にインフルエンザ様症状が見られたが、MUSE細胞では0%だった。第四に、高い生着率。従来のMSCが3-5%の生着率だったのに対し、MUSE細胞は15-30%と格段に高い。
ブラーは、ドバイで交通事故で昏睡状態に陥った少年がMUSE細胞治療で脳機能を取り戻した事例や、日本で生後8日以内にMUSE細胞を投与された脳炎の新生児全員が正常な脳機能を獲得した研究を紹介する。また、ミトコンドリア年齢を1回のIV投与で1.5年若返らせたデータにも言及する。
遺伝子解読と未来の医療
ブラーは、Ways2Wellが開発中の次世代アプリについて説明する。このアプリは、血液検査、DEXAスキャン、VO2 Max、ウェアラブルデバイスからのデータを統合し、大規模言語モデル(AI)で分析する。さらに、遺伝子配列解析(ゲノムシーケンシング)を組み込む計画だ。
ブラーの友人で遺伝学者のライアン・ロズナー(元DARPA勤務)は、人間の遺伝子を「ソフトウェア」に例える。20,000の遺伝子のうち、ほとんどの人は自分がどの「コード」で動いているか知らない。ブラーは、柔術家ゴードン・ライアンの遺伝子解析結果を例に挙げる。ゴードンは腱を強くする10万人に1人の遺伝子と高い骨密度の遺伝子を持ち、それが彼の格闘技での成功に寄与している。一方で、ブドウ球菌感染症にかかりやすい遺伝子と胃酸過多の遺伝子も持ち、これが彼の慢性的な胃腸問題の原因だと判明した。
ブラーはさらに、DARPAで研究されている「骨密度を8倍にする遺伝子編集注射」や、200年生きるクジラに特有のタンパク質を人間に応用する研究など、SFのような未来技術にも言及する。「中国とロシアはすでにこれらの研究を進めている」と警告し、アメリカが規制に縛られている間に世界は動いていると指摘する。
プラスマフェレーシスとマイクロプラスチック問題
ブラーは、Ways2Wellが導入した「プラスマフェレーシス(治療的血漿交換)」について説明する。これは50年以上前からメイヨークリニックなどで使われている技術で、血液を透析機のような装置に通し、血漿中の炎症マーカーや老廃物を除去する。ブラーは「車のオイル交換」に例え、1回の施術で体内の有害物質の70%を除去できると述べる。
具体的な成功例として、ブラーは共通の知人フィリップ・フランクリン・リーのケースを紹介する。リーは慢性的な疲労と極度の低テストステロン(80-90 ng/dL)に悩まされていた。マイクロプラスチック検査の結果、Ways2Well史上最高レベルの数値が検出された。リーがプラスチックボトルの使用を止め、Ways2Wellのプロトコルを実施した結果、テストステロンはテストステロン補充なしで1,200 ng/dLまで回復した。ブラーは「どれだけ多くの人が同じ問題を抱えているのか」と問いかける。
まとめ
このエピソードが聴き手に残すのは、アメリカの医療システムが「病気の治療」ではなく「病気の管理」を前提に設計されているという衝撃的な事実と、そのシステムを根本から変えようとする動きが現実に起きているという希望だ。ブラーの主張は単なる批判に留まらず、ペプチド規制改革、MUSE幹細胞、遺伝子治療、プラスマフェレーシスといった具体的な解決策と、それを実現するための政治・規制戦略まで含んでいる。特に、ケネディ保健長官の下でFDAがテストステロンのブラックボックス警告撤廃に動いている事実は、変化が確実に起きていることを示す。このエピソードは、医療の未来に関心がある全ての人にとって、単なる情報提供以上の価値を持つ。なぜなら、ブラーが提示する「現金払いモデル」という生命線(ライフラフト)は、既存システムに頼らない第三の道として、患者の自己決定権と医療の質を両立させる可能性を示しているからだ。
要点
- テストステロンと前立腺がんの関連性は、1930年代の3人(うち1人は化学的去勢)を対象とした研究に基づく誤ったドグマであり、その後の研究で否定されている。FDAは現在、このブラックボックス警告の撤廃を進めている。
- ペプチドの「危険性」は科学的根拠ではなく、ビッグファーマのロビー活動と既存の医薬品承認システムに適合しないという理由で作られたものである。ブラーはFDAに17件の情報公開請求を提出したが、一度も回答を得られなかった。
- 調剤薬局(コンパウンダー)市場はGLP-1薬で約15-20億ドル規模だが、イーライリリーの時価総額は8,000億ドルに達する。ビッグファーマの「損失」主張は、会計上の操作に過ぎない。
- 現在、ペプチドの5分の4はグレーまたはブラックマーケットを通じて流通しており、医師や薬剤師の関与なしに品質管理もされていない。規制の欠如が最も危険な状態を生み出している。
- MUSE幹細胞は、体内に元々存在する超希少な幹細胞で、従来の幹細胞と異なり真の多能性を持ち、損傷細胞を若く健康な細胞に置き換える。非腫瘍形成性で免疫調節能も高く、再生医療の「聖杯」とされる。
- プラスマフェレーシス(治療的血漿交換)は50年以上の歴史を持つ安全な技術で、1回の施術で血漿中の炎症マーカーや有害物質の70%を除去できる。Ways2Wellではこれを幹細胞やペプチドと組み合わせたプロトコルを開発中。
- ブラーが提唱する「現金払いモデル」は、保険や政府の関与なしに患者と医師の関係を中心に据える。患者は自分の資金で医療を購入するため、効果がなければ即座に解約するという「消費者による監視」が品質保証の仕組みとなる。
- テキサス州やフロリダ州など、州レベルでは既に幹細胞やペプチドへのアクセスを認める法律が整備されつつあり、連邦政府の動きを先取りする形で医療ツーリズムの拠点化が進んでいる。