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The a16z Show · 2026年5月26日

なぜAIはまだSaaSを殺していないのか

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • Rampの経済分析チームが50,000社の企業支出データ、総額1,000億ドル(約15兆円)の取引を基に描き出すAI導入の実態は、メディアや専門家が喧伝する「SaaS終焉...
  • Kharazianは、SaaS終焉を二つの側面に分解して分析する。第一に、企業が従来のSaaS製品からAIモデル企業が提供する競合製品へと乗り換えているかどうか。第二に、...
  • [0:00] SaaSpocalypseはデータに存在しない Kharazianは、SaaS終焉を主張する論者が実際のビジネス支出データに基づいていないことを繰り返し強調...
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出典Podcast

The a16z Show / Andreessen Horowitz

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Rampの経済分析チームが50,000社の企業支出データ、総額1,000億ドル(約15兆円)の取引を基に描き出すAI導入の実態は、メディアや専門家が喧伝する「SaaS終焉(SaaSpocalypse)」のシナリオを明確に否定するものだ。本エピソードは、a16zのポッドキャスト「Monetary Matters」として配信されたもので、ホストのJack FarleyとMax Wietheが、RampのリードエコノミストAra Kharazianを迎え、企業の実際の支出データから見えるAI市場の現実を徹底的に掘り下げている。議論の核心は、AIがSaaS企業を壊滅させ、シートベースの価格モデルを消滅させ、すべてのソフトウェア支出が少数のフロンティアモデルプロバイダーに集中するという「SaaSpocalypse」の物語が、実際のビジネス行動によって全く支持されていないという点にある。

Kharazianは、SaaS終焉を二つの側面に分解して分析する。第一に、企業が従来のSaaS製品からAIモデル企業が提供する競合製品へと乗り換えているかどうか。第二に、ソフトウェアの購入方法そのものが、シートやプラットフォーム料金からトークンベースのエージェント能力購入へと変化しているかどうかだ。驚くべきことに、現在のデータはどちらの側面も支持していない。シートベースの契約は依然として企業のSaaS支出の65~75%を占め、固定のプラットフォーム料金が20~30%を占める。トークンベースの価格設定を提供するHubSpotやAdobeのような企業でさえ、その支出はプラットフォーム全体の0.5%に過ぎない。Figmaのような企業は、AI競合の台頭が囁かれながらも、Rampのデータ上では最も急成長しているベンダーの一つであり、従来のSaaS企業の回復力は予想以上に強いことが示されている。

0:00SaaSpocalypseはデータに存在しない

Kharazianは、SaaS終焉を主張する論者が実際のビジネス支出データに基づいていないことを繰り返し強調する。彼はこの概念を二つの明確な仮説に分解する。第一に、企業が従来のSaaSプロバイダーから、モデル企業が提供する競合製品へと支出をシフトさせているか。第二に、ソフトウェアの購入方法そのものが、シートベースの料金から、トークンやエージェント能力の購入へと変化しているか。Rampのデータは、どちらの仮説も「意味のある形では」起こっていないことを示している。

具体的な数字がその現実を雄弁に物語る。シートベースの契約は依然としてSaaS支出全体の65~75%を占め、固定のプラットフォーム料金が20~30%を占める。トークンベースの価格設定は、HubSpotやAdobeといった先駆的な企業でさえ、プラットフォーム上の総支出のわずか0.5%に過ぎない。これは、トークンベースのモデルが理論的には魅力的に映る一方で、実際の企業調達においてはまだ実験段階に過ぎないことを示している。

さらに、Figmaの事例は象徴的だ。AIによるデザインツールの脅威が叫ばれる中、FigmaはRampのプラットフォーム上で最も急成長しているベンダーの一つであり、その業績は好調である。Kharazianは、Anthropicのようなモデル企業がデザイン製品を提供し始めているものの、Figmaは既に確立された製品とユーザーベースを持ち、同じモデルにアクセスできるため、簡単に取って代わられることはないと指摘する。SaaS終焉の物語は、製品の将来像に関する投影に過ぎず、実際のビジネス支出の変化を反映していないというのが彼の主張だ。

6:53動的市場における勝者と敗者:AnthropicがOpenAIを追い抜く

SaaS終焉の全体的な物語がデータに反する一方で、Kharazianは現在のソフトウェア購入市場が「これまで見た中で最もダイナミックな市場の一つ」であることも認める。RampのAI Indexが示す最も顕著な変化は、AnthropicがOpenAIを追い抜き、企業が最も利用するモデルとなったことだ。これは、CursorがGitHub Copilotを追い抜いたことと並ぶ、月次ベースで大規模な既存企業が新興企業に取って代わられる現象の一例である。

しかし、Kharazianはこのリーダーシップの変化を「勝者が全てを獲得する」ゲームとして解釈することに慎重だ。彼のデータが示す重要な傾向は、企業が複数のモデルを同時に利用する割合が増加していることだ。特に、AIネイティブな製品を開発する早期導入企業ほど、複数のモデルを使い分け、時間の経過とともにより多くのAIベンダーを追加する傾向がある。これは、市場が単一の支配的なモデルに収束するのではなく、複数の大規模プレイヤーが共存する方向に向かっていることを示唆する。

さらに、企業はコスト意識を急速に高めている。APIやエージェントのトークンコストに多額を費やす企業では、その支出が過去1年間で13倍に増加している。しかし、これは高強度ユーザーでも総支出(給与を除く)の約2%に過ぎず、この成長率が続けば持続不可能であることは明らかだ。その結果、最も支出の多い企業は、OpenRouterのようなプラットフォームを利用して、タスクに応じて最も安価なモデル(オープンソースモデルを含む)にルーティングするようになってきている。この傾向は、フロンティアモデルプロバイダーにとって、コスト競争とモデル間の競争激化という二重の逆風となる。

14:46DeepSeekとGoogle Geminiの現実:採用データが語る真実

RampのAI Indexのグラフで最も顕著なのは、DeepSeekの存在感の薄さだ。かつて「ベンチャーキャピタル支援のテックスタートアップの80%がDeepSeekを使用している」という噂が流れたが、Rampのデータはこれを完全に否定する。DeepSeekが登場した直後に採用のスパイクは見られたものの、Rampプラットフォーム上の企業の1%にも達したことはない。Kharazianは、その理由として、セキュリティに対する懸念と、特に企業向け製品や消費者向け製品を構築する際の「認識の問題」を挙げる。たとえローカルでホストしたとしても、ビジネスユーザーはDeepSeekの利用に消極的であり、他の安価なオープンソースモデルが多数存在する現在、DeepSeekが急速に普及する可能性は低いと彼は見ている。

一方、GoogleのGeminiは、RampのAI Indexでは低い位置にあるが、KharazianはGoogleを「過小評価されている」と評価する。その理由は、Rampの指標が「有料での採用」のみを追跡しているからだ。多くの企業は、Google Workspaceに無料で統合されたGeminiを利用しており、これはRampのデータには現れない。しかし、経済学者の間では、チャットサブスクリプションだけでは経済全体に期待されるような生産性向上をもたらさないという見方が一般的であり、真の生産性向上には、より包括的なAI導入が必要であるとKharazianは指摘する。Googleの強みは、Google Workspaceを通じて事実上すべての企業にリーチできるという「流通上の優位性」にある。

18:11AI導入の生産性と雇用への影響:データが示す複雑な現実

Kharazianは、AI導入の次の研究段階として、単なる「採用」ではなく「導入の強度」を測定し、AIを効果的に導入している企業の特徴を特定する必要性を強調する。支出額は生産性向上に直結しないため、より洗練された指標が必要だ。具体的には、雇用への影響(どの職種が増え、どの職種が減るか)、ソフトウェアエンジニアリングにおけるプルリクエストの量と質の変化などが考えられる。

現時点での彼の初期の分析では、二つの相反する傾向が見られる。第一に、特にソフトウェア企業において、収益成長と従業員数成長の「デカップリング(分離)」が起きている。つまり、収益が増えても従業員数をそれほど増やさずに済むようになってきている。第二に、AIを採用している企業は一般的に急成長しており、多くの成長機会を抱えているため、結果として雇用を増やす可能性もある。Kharazianは、AIが雇用を「破壊する」という悲観論には与せず、むしろモデル企業がなぜ「AIが全ての仕事を破壊する」と繰り返し主張するのか、その研究を求めている。彼はこれを「TAM(Total Addressable Market)ポスティング」、つまり労働市場全体を自社の市場機会としてアピールするためのレトリックであると分析する。

22:52SaaSの新たな成長領域:AEOとAIネイティブCRM

SaaS終焉の物語が見過ごしている最も重要な点は、モデル企業自身ではなく、その周辺に形成される新たなエコシステムの成長である。Kharazianが特に注目するのは、「AEO(Answer Engine Optimization)」という全く新しいカテゴリーだ。これは、SEOがGoogle検索での表示を最適化するのと同様に、企業がAIモデル内での自社のパフォーマンスや推奨状況を追跡するためのソフトウェアである。この分野は存在しなかったが、Profoundのような新興企業が急成長しており、モデル企業自身は提供できないサービスであるとKharazianは指摘する。なぜなら、Anthropicは自社のモデルに対する最適化しか提供できないが、AEOは複数のモデルにまたがって機能する必要があるからだ。

もう一つの注目すべき成長例は、ロンドン拠点のCRM企業「ADEO」だ。これは「AIネイティブなCRM」と位置づけられ、市場シェアは一桁台ながら急速に成長している。Salesforceが依然として市場の80%を占める中で、ADEOのような新興企業がAI機能を武器に市場を切り開いている。Kharazianは、これらの成長を単に「モデル企業の業績に連動したもの」と見なすのは誤りであり、これらはモデル企業がまだ競争していない、あるいは競争できない独自の製品であると強調する。AIは確かにこれらの発展に触媒として作用しているが、成長の主役はあくまでSaaS企業自身である。

26:01レガシー企業の戦略的対応:Deloitteの慎重姿勢とメディアの実験

AIの波に対する既存大手企業の対応は一様ではない。Kharazianは、ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されたDeloitteがスポンサーとなった記事を例に挙げ、ビッグ4会計事務所間の戦略の違いを浮き彫りにする。KPMG、PwC、EYがAIエージェントの導入や従業員へのAIアクセス提供を積極的に進める一方で、Deloitteは「よりヘッジされたアプローチ」を取っている。DeloitteはAIを労働者の強化手段と見なし、置き換え手段とは見なしておらず、その姿勢は他社とは明確に一線を画す。Kharazianは、このDeloitteの事例は、すべてのレガシー企業がAIの変革に同じように迅速に対応しているわけではないことを示す好例だと述べる。

一方、意外なAI導入のリーダーとして、Kharazianはレガシーメディア企業、特にニューヨーク・タイムズを挙げる。これらの企業はモデル企業と直接ライセンス契約を結び、コンテンツの利用料を得ている。これは、従来は購読料を払わずにコンテンツを消費していたユーザー層から収益を獲得する新たな手段となる。さらに、AIがジャーナリズムの質に与える影響について、KharazianはAIによる「読み手」としての役割に注目する。AIは長文の記事を瞬時に要約し、その内容を均一に伝達するため、従来のように記事の内容がソーシャルメディアを通じて歪められるリスクを低減する可能性がある。これにより、深く質の高いジャーナリズムへのインセンティブが高まる可能性があると彼は示唆する。

結びに

本エピソードがもたらす最大の洞察は、AI時代におけるソフトウェア市場の未来を論じる際に、具体的なデータに基づく議論の重要性を痛感させる点にある。メディアや専門家の間で流布する「SaaS終焉」や「AIによる雇用破壊」といったセンセーショナルな物語は、Rampの大規模な企業支出データによって明確に否定された。実際の企業行動ははるかに複雑で、従来のSaaSモデルは依然として堅固であり、AI導入は既存のエコシステムを補完し、新たなカテゴリー(AEOなど)を創出している。このエピソードは、テクノロジー業界における「物語」と「現実」のギャップを埋めるための、データドリブンなアプローチの模範を示している。

要点

  • Rampの50,000社、1,000億ドルの支出データは、SaaS企業がAIによって壊滅するという「SaaSpocalypse」のシナリオを否定しており、シートベースの契約は依然としてSaaS支出の65~75%を占める。
  • AnthropicはRampのAI IndexでOpenAIを追い抜き企業向けモデルとして首位に立ったが、市場は単一モデルに収束せず、企業は複数のモデルを併用する傾向が強まっている。
  • トークンベースの価格設定は、HubSpotやAdobeのような先駆者でも総支出の0.5%に過ぎず、主流の購買モデルにはなっていない。
  • DeepSeekの企業採用はRampデータ上で1%未満と極めて低く、セキュリティ懸念と認識の問題が普及の障壁となっている。
  • AI導入の高強度ユーザーにおけるトークンコストは過去1年で13倍に増加しており、企業はOpenRouterのようなプラットフォームを利用したコスト最適化を模索し始めている。
  • AI関連の急成長分野はモデル企業自身ではなく、AEO(Answer Engine Optimization)やAIネイティブCRM(ADEO)など、モデル企業が提供できない周辺サービスで生まれている。
  • Deloitteのようなレガシー企業はAI導入に慎重な姿勢を取る一方、ニューヨーク・タイムズのようなメディア企業はモデル企業とのライセンス契約を通じて新たな収益源を開拓している。
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