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The a16z Show · 2026年6月11日

AIで物理世界をデザインする

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • AIがソフトウェアの領域から物理世界へと本格的に浸透し始めている。本エピソードでは、a16zのゼネラルパートナーであるErin Price-Wrightが、Unlim...
  • [0:00] 建設業界の完全自動化への道筋:10年後のビジョンと現実 Alex Modon氏は、10年以内にすべての建設プロジェクトが完全に自動化されるという大胆な予...
  • 最適化の指標は、単なる初期建設費(CAPEX)ではなく、施設の運用・保守を含む総保有コスト(TCO)である。現在の業界では、設計、調達、施工など各フェーズが分断され、...
こんな人向け

自分では見つけにくい海外Podcastの話題に、日本語で気軽に触れたい人。

出典Podcast

The a16z Show / Andreessen Horowitz

要点
  1. Alex Modon氏は、建設業界の設計から施工までの完全自動化が10年以内に実現可能と予測。その鍵は、分断されたワークフローをAIによるパラメトリック設計で統合し、総保有コスト(TCO)で最適化することにある。
  2. Davide Asnaghi氏は、電子回路設計をPythonコードのように記述できるコンパイラを開発。これにより、AIモデルがコード生成能力をそのままハードウェア設計に適用できるようにし、設計の完全自動化を2年以内に目指す。
  3. 両氏に共通する課題は、物理世界の設計データの圧倒的な不足。Asnaghi氏はコードという豊富なデータソースで代替し、Modon氏はモデル主導のフレームワークで構造化された知識表現を活用する。
  4. 建設業界の技術採用の遅れは、安定したIRRを求める投資家のインセンティブ構造に起因する。Modon氏は、この問題に対し、業界の一部を変えるのではなく、垂直統合によって顧客に最終成果物を提供する戦略をとる。
  5. Asnaghi氏は、設計ツールではなく「エンド・トゥ・エンドの製造サービス」を提供することで、顧客の購買パターンを変えずにAIを導入。コア技術はオープンソース化し、コミュニティからのデータ獲得とモデル精度向上の好循環を生み出す。
  6. 人型ロボットについて、Modon氏は大量生産によるコスト低減効果から汎用性の高いフォームファクターを支持する一方、Asnaghi氏は特定のフォームファクターに賭けず、既存のロボット技術で「残り20%」の自動化を進める現実的なアプローチを重視する。
  7. 米国製造業の復活には、設計と製造の分断によって失われた「製造文化(Design for Manufacturing)」の再構築が不可欠。Asnaghi氏は、AIに製造しやすさを考慮した設計を自動生成させることで、この文化的ギャップを埋めることを目指す。
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AIがソフトウェアの領域から物理世界へと本格的に浸透し始めている。本エピソードでは、a16zのゼネラルパートナーであるErin Price-Wrightが、Unlimited Industriesの共同創業者兼CEOであるAlex Modon氏と、Diode ComputersのCEOであるDavide Asnaghi氏を迎え、建設業界と電子回路設計・製造という、規模も性質も異なる二つの物理産業において、AIがどのように「原子を動かす」のかを深掘りした。両氏に共通するのは、従来の業界慣行を「コード」として再定義し、AIエージェントが扱いやすい形に抽象化するというアプローチである。建設業界では、数百年単位で続く分断されたワークフローと固定化されたインセンティブ構造が生産性向上の阻害要因となっているが、AIによる設計の自動化とロボティクスの導入で、10年以内に完全自動化が実現可能だとModon氏は主張する。一方、電子回路の分野では、設計プロセスそのものをPythonコードのように記述できるコンパイラを開発し、AIに回路設計を「書かせる」ことで、ソフトウェアエンジニアであってもハードウェア設計が可能になる未来をAsnaghi氏は描く。両氏の議論は、データ不足や物理法則のシミュレーション、熟練技能者の暗黙知の継承といった共通の課題に直面しながらも、それぞれの領域で「エンド・ツー・エンドの自動化」を目指す戦略の違いと共通点を浮き彫りにした。この対話の核心は、知能が限りなく安価になった世界において、物理世界の「遅さ」をどう克服するかという問いであり、その答えは単なる技術の進歩ではなく、業界全体のインセンティブ設計と文化の変革にかかっている。

0:00建設業界の完全自動化への道筋:10年後のビジョンと現実

Alex Modon氏は、10年以内にすべての建設プロジェクトが完全に自動化されるという大胆な予測を提示する。この主張の根拠を理解するには、まず現代の建設プロジェクトがどのように進められるかを把握する必要がある。空き地に大規模施設(発電所や病院など)を建設する場合、設計段階だけで1年から1年半を要する。このプロセスには、機械、プロセス、電気、土木、構造など、数百人ものエンジニアと多数のプロジェクトマネージャーが関与し、最終的に「IFCパッケージ(Issued for Construction)」と呼ばれる、施工業者に引き渡すための膨大な設計図書を作成する。Modon氏のビジョンでは、この設計プロセス全体をAIが担う。具体的には、建設予定地と様々な要件をAIに入力すると、AIが数万もの設計の組み合わせを探索し、最適化されたIFCパッケージをワンクリックで出力するというものだ。

最適化の指標は、単なる初期建設費(CAPEX)ではなく、施設の運用・保守を含む総保有コスト(TCO)である。現在の業界では、設計、調達、施工など各フェーズが分断され、それぞれが異なる指標を最適化しているため、全体として非効率が生じている。Modon氏は、ソフトウェア開発で当たり前となっているパラメトリックで柔軟なアプローチを建設に持ち込むことで、この問題を解決できると主張する。設計の自動化に続く第二段階は、建設現場そのものの自動化である。これは、比較的実現が容易な自律走行型の土工機械から、将来的には人型ロボットやドローンが現場に溢れる世界までを含む。Modon氏は、この未来が10年以内に実現すると確信しており、その鍵は技術そのものよりも、業界のインセンティブ構造を適切に設計できるかどうかにあると指摘する。

0:11電子回路設計の民主化:ソフトウェアエンジニアを電気エンジニアに変える

Davide Asnaghi氏は、Diode Computersが開発したアプローチの核心を「コンパイラ」と表現する。従来の電子回路設計は、専用のCADソフトウェアを用いて図面を描く作業であり、電気エンジニアの「職人技」に依存してきた。しかし、Asnaghi氏はこのプロセスを根本的に再定義する。同社は、回路設計をPythonプログラムを書くのと同じ感覚で記述できるようにするコンパイラを構築した。これにより、AIモデルが最も得意とする「コードを書く」という能力を、そのままハードウェア設計に適用できるようになる。AIは回路図を描くのではなく、回路を定義するコードを生成する。このアプローチは、AIが物理的な制約を理解する上で最大の障壁となる「データ不足」を回避するための巧妙な戦略でもある。

Asnaghi氏は、回路設計の完全自動化について、かつては5年かかると考えていたが、現在は2年以内に実現可能と見方を改めている。ただし、これはすべての電子回路設計に当てはまるわけではなく、同社が注力する特定のサブセットに限定した見解である。重要なのは、設計の自動化だけでなく、製造との連携である。電子機器製造の現場では、表面実装技術(SMT)による自動化が進んでいるが、大型のトランスや特殊な形状の部品など、自動化が困難な「残り20%」の工程が存在する。この部分は、Foxconnのような企業が労働力でカバーしてきたが、米国内でデータセンター向けの生産能力を倍増させるには、労働力だけに頼ることはできない。Asnaghi氏の最終目標は、設計段階から製造しやすさ(Design for Manufacturing, DFM)を考慮した出力をAIが自動生成できるようにすることである。設計が製造工程に制約されれば、既存のロボット技術で100%の自動化が可能になる。つまり、ロボットの進化を待つ必要はなく、AIによる設計の「賢さ」が鍵を握る。

0:43データ不足と物理法則の壁:シミュレーションとコードによる回避策

物理世界のAIにとって最大の課題は、学習に必要なデータの圧倒的な不足である。ソフトウェアの世界には「Common Crawl」のような大規模なデータセットが存在するが、建設設計や回路設計のデータは、企業内にサイロ化されているか、そもそもデジタル化すらされていない。この問題に対して、両氏は異なるアプローチをとる。Asnaghi氏は、回路設計のデータ不足を「コード」という豊富なデータソースで代替する戦略をとる。同社のコンパイラは、AIが回路設計をコードとして扱えるようにすることで、コード生成で訓練されたモデルの能力を直接活用する。さらに、物理的な制約(基板上の部品配置や電気的特性など)については、シミュレーションを活用する。ただし、Asnaghi氏はシミュレーションの役割を、推論時(inference time)ではなく訓練時(training time)に限定すべきだと主張する。

現在の電気エンジニアは、設計の最終確認としてシミュレーションを用いるが、Asnaghi氏の理想は、シミュレーションをモデルの訓練ツールとして使い、モデル自身に「味覚(taste)」や「直感(intuition)」を獲得させることである。推論時にはシミュレーションは遅すぎるため、訓練時に十分なデータとシミュレーションで鍛えられたモデルが、95%のケースで高速かつ正確な設計を生成できるようになることを目指す。一方、Modon氏の建設業界はデータがさらに希少であり、シミュレーションも流体や構造解析など既存のツールをAIが「使いこなす」形で活用する。同氏のアプローチは、すべての設計要素をパラメトリックな関係性で結びつける「モデル主導(model-led)」のフレームワークである。このフレームワーク内でAIエージェントがコードを生成し、決定論的なツールを駆使して設計を最適化する。一度変更があれば、従来のように設計を最初からやり直す必要はなく、変数を更新するだけで全体が再計算される。このアプローチは、データ不足を構造化された知識表現とコード生成で補う点で、Asnaghi氏の戦略と共通する。

1:11業界の変革:垂直統合とインセンティブ設計の重要性

建設業界と電子回路業界は、どちらも長年にわたって確立されたワークフローとツールに依存しており、新しい技術の導入に対して極めて保守的である。特に建設業界は、ソフトウェアエンジニアが数年ごとに新しいフレームワークを採用するのとは対照的に、技術革新の採用が著しく遅れている。Modon氏は、その根本原因を「インセンティブ構造」に求める。建設プロジェクトの資金は、安定したIRR(内部収益率)を求める投資家から提供され、彼らはリスクを取ることに消極的であり、新しい技術を採用しても大きなリターンを得られない。この構造が、新しい技術の導入を阻害する。その結果、業界のIT環境は1990年代後半に取り残されたままである。

このような状況に対し、Modon氏は「垂直統合」戦略を採用する。スタートアップが業界の一部だけを切り取って新しい技術を導入しようとしても、既存のプレイヤーを変えることは難しい。そこで、Unlimited Industriesは設計から調達、建設までを自社で一貫して行うことで、業界に対して「クリーンなインターフェース」を提供する。つまり、業界の慣行を変えようとするのではなく、顧客が求める最終成果物(建設プロジェクト)を、従来とは全く異なる方法で、より速く、より安く提供する。同社のチーム構成も特徴的で、ソフトウェアエンジニアよりも、機械、電気、土木など多分野のエンジニアが中心である。Modon氏は、最新のAIツールを教えるのは、ドメイン知識を持つ多分野エンジニアの方が、その逆よりもはるかに容易だと語る。

Asnaghi氏のDiode Computersも、同様の課題に直面しながらも、異なる戦略をとる。同社は、設計のためのCADソフトウェアを販売するのではなく、設計から製造までの「エンド・トゥ・エンド」のサービスを提供する。顧客(Fortune 100企業など)に対しては、「仕様を渡せば、より速く、より安く物理的な製品を納品する」という、彼らが既に慣れ親しんだ購買パターンを提示する。内部の設計プロセスがAIによって自動化されていることは、あくまで「実装の詳細」として扱われる。さらに、同社はコアとなるコンパイラツールチェーンをオープンソース化している。これは、設計の基本プリミティブ(回路ブロック)は共有財産とし、自社はその設計を製造に結びつける「インフラ」を所有するという戦略である。これにより、コミュニティからのフィードバックとデータを獲得し、モデルの精度向上に還元する好循環を生み出す。

1:35人型ロボットと専門ロボット:物理世界自動化の二つのシナリオ

AIによる物理世界の自動化が進む中で、人型ロボット(ヒューマノイド)の役割は大きな議論の的となっている。Modon氏は、人型ロボットに強い期待を寄せる。建設現場では、資材の運搬から複雑な作業まで、多様なタスクが発生する。特定の作業に特化したロボットも有効だが、一つの設計に標準化し、大量生産することで学習曲線によるコスト低減効果を最大化できる人型ロボットは、長期的には圧倒的な効率を発揮すると考える。もちろん、巨大なタンクのような特注品には専用ロボットが適している場合もあるが、全体として人型フォームファクターは非常に重要な役割を果たすと予測する。

一方、Asnaghi氏は、特定のフォームファクターに賭けるのではなく、すべてのロボットを「PCB(プリント基板)を搭載した顧客」として平等に愛すると語る。電子機器製造の現場は既に高度に自動化されており、残る課題は「あと20%」の手作業工程の自動化である。この部分には、既存のロボットアームに高度なコンピュータビジョンと部品識別能力を組み合わせることで対応可能だと考えている。例えば、大型部品のはんだ付けには「ウェーブリフロー炉」という専用機械があるが、エネルギーコストが高く、生産量が少ないと稼働させない工場もある。こうした工程は、ロボットによる自動化の格好のターゲットである。しかし、Asnaghi氏がより大きなインパクトとして注目するのは、鉱山での採掘や危険な作業など、人間を危険にさらす仕事をロボットに置き換えることの社会的価値である。同氏は、アクチュエーターやモーター制御などのIPを持ち、ロボット産業のエコシステムの一部となることを目指している。

2:10暗黙知の継承と製造文化の再構築:米国製造業の未来

物理世界の自動化を語る上で避けて通れないのが、熟練技能者が持つ「暗黙知(tacit knowledge)」あるいは「プロセス知識」の扱いである。米国では、建設現場の電気工や製造現場のエンジニアといった熟練労働者の高齢化が進み、その知識が失われつつある。Modon氏は、テキサス州の電気工の平均給与がシリコンバレーのソフトウェアエンジニアを上回る例を挙げ、その需要の高さを指摘する。さらに、Microsoftがジョージア州で大規模データセンターを建設した際、州内の電気工の3分の1を雇用したという逸話は、熟練労働者不足の深刻さを物語る。この不足を補うため、企業はモジュール式の工場建設にシフトし、労働力を一箇所に集中させる戦略をとりつつある。

Asnaghi氏は、この問題をより深い「文化の断絶」として捉える。米国では、設計と製造が地理的にも組織的にも分断されている。設計者は米国で設計図を描き、それをアジアの工場に送って製造する。このプロセスでは、設計者が製造現場の苦労を実感することがなく、「設計のための製造(Design for Manufacturing)」の感覚が衰えてしまう。対照的に、中国の電気エンジニアは、製造ラインの担当者と顔の見える関係にあり、製造しやすさを常に考慮した設計を行う。例えば、基板を両面実装にすると製造ラインを2回通す必要が生じ、コストと時間が増加することを理解しているため、あえて設計を複雑にしてでも片面で済ませる。このような「製造文化」は、単に人を雇ったり、引退した技術者を呼び戻したりするだけでは再現できない。

Asnaghi氏は、この問題の解決策をAIに求める。AI(Claudeのようなモデル)は、製造しやすさに関する150ものチェック項目を逐一確認し、設計を修正することを厭わない。つまり、人間の設計者に文化を植え付けるのではなく、AIに「製造しやすい設計」を自動生成させることで、このギャップを埋めることができる。米国のPCB受託製造企業(CEM)は、主に軍事向けの高い製造能力を持つが、量産能力は経済性の問題で失われている。Diode Computersは、AIによる設計の最適化と、米国内での競争力のある製造を組み合わせることで、この失われた量産能力を再構築しようとしている。

結びに

本エピソードが聴き手に残す最も強い印象は、AIが物理世界を変革する際の「スケールの非対称性」である。建設業界はマクロスケールで、電子回路はミクロスケールでありながら、両者に共通する課題と解決策が浮かび上がった。それは、物理的な制約を「コード」として抽象化し、AIが最も得意とする領域に引き寄せるという戦略である。また、技術的なハードル以上に、業界のインセンティブ構造や文化といった「人間側の要因」が変革の速度を左右するという洞察は、単なるテクノロジー楽観論に留まらない深みを与えている。Modon氏が「建設の生産性は過去50年で悪化している」と指摘し、Asnaghi氏が「米国の10代が気軽にキューブサットを設計・製造できる未来」を夢見るように、両氏の原動力は、物理世界における「作る能力」の衰退に対する危機感と、それをAIで再び活性化させたいという強い意志である。このエピソードは、AIが単なるソフトウェアの効率化ツールではなく、産業の基盤そのものを再定義する可能性を秘めていることを、具体的な事例と共に示した点で極めて示唆に富む。

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