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Dwarkesh Podcast · 2026年8月26日

Dylan Patel – AnthropicとOpenAIが2028年までに世界のコンピュートの大半を握る

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この記事でわかること
  • 概要 Dwarkesh Patel(ドゥワークシュ・パテル)が、Semi Analysis創業者で自身の「双子の兄弟」と称するDylan Patel(ディラン・パテル...
  • 本エピソードの核心は、AIラボが「推論(inference)」から「訓練(training)」へと計算資源の配分をシフトさせているという非コンセンサスな主張にある。従...
  • [0:00] AIラボの収益構造と計算資源の急拡大 Dylan Patelによれば、現在の世界経済の行方は、ますますAIラボの経済学に依存するようになっている。昨年末...
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Dwarkesh Podcast / Dwarkesh Patel

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概要

Dwarkesh Patel(ドゥワークシュ・パテル)が、Semi Analysis創業者で自身の「双子の兄弟」と称するDylan Patel(ディラン・パテル)を迎え、AIラボの経済学、計算資源の中央集権化、そしてAI投資が世界経済に与える影響について徹底討論したエピソード。二人は「家族の感謝祭ディナーの代わり」として毎年恒例のポッドキャスト対談を行っており、今回はAIインフラへの資本支出が爆発的に増加する中で、OpenAIとAnthropicが世界の計算資源を掌握していくプロセスを詳細なデータとともに描き出す。会話は、ラボの収益構造の変化から始まり、計算資源の価格高騰、中国の半導体事情、そして最終的にはAIによる国債危機と世界経済の再編成という壮大なシナリオへと発展していく。

本エピソードの核心は、AIラボが「推論(inference)」から「訓練(training)」へと計算資源の配分をシフトさせているという非コンセンサスな主張にある。従来の常識では、AIの普及に伴い推論が計算資源の大部分を占めると考えられてきたが、Dylanは逆に、ラボが内部研究開発にますます多くの計算資源を振り向けると予測する。さらに、2028年までにOpenAIとAnthropicが世界の実用可能なFLOPs(浮動小数点演算回数)の大半を掌握し、その過程で計算資源の価格が高騰し、金利上昇を通じて非AI関連の株式や新興国経済に壊滅的な影響を与えるというシナリオが提示される。二人は、AIがもたらす中央集権化の流れに抗う手段があるのかという問いを最後まで解決できないまま、対談を締めくくる。

0:00AIラボの収益構造と計算資源の急拡大

Dylan Patelによれば、現在の世界経済の行方は、ますますAIラボの経済学に依存するようになっている。昨年末時点でアメリカのGDP成長の大部分はAIインフラによるものであり、今年新たに稼働する計算資源の約3分の1はOpenAIとAnthropic向けだという。これらのラボは他社が建設したデータセンターをレンタルすることもあるが、最終的な需要元はこの2社である。今年のAI関連資本支出は1兆ドル強に達し、2028年には2兆ドルを超える見込みだ。ラボの資本支出も数十億ドルから数百億ドル、そして10年終盤には年間数兆ドル規模へと拡大すると予測される。

収益面では、Anthropicは第2四半期に黒字転換し、OpenAIも第3四半期には黒字化する可能性がある。わずか1年前まではベンチャーキャピタルからの資金注入で運営されていた両社だが、現在は自己収益で事業を拡大している。特に注目すべきは、計算資源1メガワットあたりの収益性だ。基本コストが1メガワットあたり1,000万〜1,500万ドルであるのに対し、Anthropicは1メガワットあたり5,000万ドルの収益を生み出している。つまり、推論能力に10ドル投資すれば50ドルの収益が得られ、その利益を訓練に再投資できる構造ができあがっている。

今年初め、OpenAIとAnthropicの計算資源はそれぞれ2ギガワット未満だったが、年末には両社とも5ギガワットを超える見込みだ。これは3〜4倍の成長であり、世界の新規計算資源の約30%を占める。来年にはそのシェアは40〜50%に達し、2028年末までには世界の実用可能なFLOPsの大半をこの2社が掌握する可能性があるという。この中央集権化の流れは加速する一方であり、SpaceXのような新規参入者も、最も高い価格を支払う能力のあるAnthropicとOpenAIに計算資源を貸し出す動きを見せている。

7:01ファブ資本支出と収益の驚異的なレバレッジ

Dylanは、1ギガワットの計算資源を生産するために必要なファブ資本支出が約60億ドルであると説明する。この60億ドルの投資は毎年1ギガワットを生産し、その1ギガワットは現在1,000億ドルの収益を生み出す。つまり、ファブレベルの60億ドルの資本支出が、5年間で1兆ドル以上の最終的なAI収益を生み出すことになる。途中にオペックスやデータセンター、電力などのコストはあるものの、中間業者に半分取られたとしても、ファブ資本支出と最終収益の間には100倍以上の格差が存在する。

この驚異的なレバレッジは、資本主義の原理からすれば、誰もがこの機会に飛びつくはずだ。しかし、供給網の制約が拡大の妨げとなっている。ASMLのEUVリソグラフィ装置に使われる鏡を製造するCarl Zeissは、2030年までに年間100台のEUVツールを生産する必要があると認識しているが、実際にはそれ以上の需要が見込まれる。Dylanは、4億ドルあればASMLからEUVツールを購入し、10億ドル以上で転売できると冗談交じりに語る。タービンなどの設備も投機の対象となっており、データセンター建設のボトルネックとなっている。

しかし、この供給制約は時間とともに解消される可能性がある。もしAIラボが年間1兆ドルの収益を生み出すようになれば、そのキャッシュフローから供給網全体の拡張を賄うことができるからだ。Dylanは、Carl Zeissに100億ドルを渡して生産拡大を依頼すれば状況は変わるが、世界は資本制約に直面しており、少なくとも今後2〜3年はこの状況が続くと予測する。ラボの収益が数百億ドル規模になっても、来年の資本支出は2兆ドル規模であり、まだキャッシュフローだけで全てを賄う段階にはない。

13:08計算資源の価格高騰と価値獲得のシフト

現在、1メガワットあたり1,000万〜1,500万ドルのコストで計算資源を運用すれば、誰でも利益を出せる状況にある。GB300ラックを購入し、KimiのウェイトやVLM、SGLangをダウンロードしてOpenRouterに載せれば、コスト以上の収益を生み出すことができる。しかし、2028年にAnthropicとOpenAIが合計100ギガワットの計算資源を掌握しようとすれば、計算資源の価格は1メガワットあたり2,500万〜5,000万ドルに高騰する必要がある。

この価格高騰の背景には、ラボが他の誰よりも高い収益を計算資源から生み出せるという事実がある。もし再帰的自己改善(RSI)が起こり、AIラボが外部に公開していない内部モデルで次のモデルを改善できれば、その差はさらに拡大する。Dylanは、SpaceXやMetaのような企業が、内部での活用よりも高い価格でラボに売却する方が合理的だと判断し、計算資源を最高入札者に売却する動きが加速すると予測する。Elon Musk(イーロン・マスク)はすでにこの戦略を実行しており、AnthropicとGoogleに1メガワットあたり2,500万〜4,000万ドルで計算資源を販売している。

しかし、Dylanは来年末時点でもほとんどの計算資源は1メガワットあたり2,000万ドル未満で取引されると予測する。なぜなら、MetaやMicrosoft、Amazon、SpaceXのような企業は、顧客を見つける前に自社のバランスシートで計算資源を建設できるからだ。彼らは内部での活用と外部への販売の選択肢を持っており、このオプショナリティが価格交渉力を生み出している。一方、価値獲得の面では、アプリ層はほとんど価値を生み出しておらず、モデル層がようやく大きな粗利益を生み出すようになった。昨年まではハードウェア供給網だけが利益を得て、他の全てのプレイヤーが損失を被っていた状況が、現在はモデル層に価値がシフトしつつある。

25:40推論から研究開発へのシフトと規制の影響

Dylanの最も非コンセンサスな主張は、AIラボが推論から訓練へと計算資源の配分をシフトさせているという点だ。現在、ラボの計算資源の配分は約60%が訓練、40%が推論だが、訓練の中身をさらに分解すると、50%が研究、10%が開発、40%が推論となる。研究とは新しいアーキテクチャやデータミックス、ハイパーパラメータのテストであり、実際のモデル訓練(プリトレーニング)は200メガワット未満で行われる。AnthropicがMythosを訓練する際も、同時に使用する計算資源は最大200メガワット程度であり、複数ギガワットの計算資源の大部分は研究に使われている。

しかし、AIが自動化コーディングや自動化リサーチの能力を獲得するにつれ、研究と訓練の境界は曖昧になり、訓練に割り当てられる割合が増加するとDylanは予測する。継続学習(continual learning)のような技術も、より多くの計算資源をモデル訓練に振り向ける要因となる。さらに重要なのは、ラボが公開企業になった場合、投資家が「1ギガワットあたり1,000億ドルの収益を生み出せるのに、なぜ訓練に回すのか」と疑問を呈する可能性がある点だ。しかしDylanは、AnthropicとOpenAIの経営陣も取締役会も、推論による短期的な利益よりもAGI構築を選択すると断言する。なぜなら、AGIの将来の収益可能性の方がはるかに大きいからだ。

実際、過去3ヶ月間でラボはすでに新規計算資源のより高い割合を研究開発に振り向けている。毎月の収益増加が鈍化する一方で計算資源の追加は続いており、限界的なメガワットが推論ではなく研究開発に向かっていることは事実として確認できる。しかし、規制がこの流れを阻害する可能性もある。OpenAIがAstraをリリースせず、2週間訓練を停止したこと、Anthropicが安全評価で「Model 2」と判断されたモデルのリリースを差し控えていることなど、ラボが最高のモデルを公開できない状況が続けば、収益成長は鈍化し、計算資源を買い占める能力も低下する。

33:27中国の計算資源と半導体の地政学

2022年時点では、アメリカが世界の新規計算資源の45〜50%、中国が30〜35%を占めていた。しかし、輸出規制とアメリカ国内でのAI投資の急増により、現在はアメリカが70%を占め、中国は10%未満にまで低下している。中国の国内生産は依然として小さく、Nvidiaからの購入も限定的で、その多くはマレーシアなど他国に流れている。2028年までに中国のAI計算資源は30ギガワット以下にとどまるとDylanは予測する。

しかし、2026年には密輸チップに依存していた中国も、2027年にはファブが稼働し始め、2028年にはSMICやCXMTなどの国内生産が年間数百万ユニットに達する見込みだ。2028年だけで国内生産チップによる5〜10ギガワットの追加が見込まれるが、これらのチップはNvidiaやGoogle、OpenAIが2028年に使用するチップよりも性能が劣る。つまり、ギガワット数で比較しても、実際の計算能力ではさらに大きな差が存在する。

Dylanは、2029年には中国が年間50ギガワットの追加が可能になると予測するが、その多くが国内生産チップであれば、実質的にはアメリカのチップ20ギガワット相当に過ぎない。つまり、2028年の主要ラボ1社が、2029年や2030年の中国全体よりも多くの計算資源を持つ可能性がある。Dwarkeshは、輸出規制が実際に効果を上げていると評価し、自動化コーダーや自動化リサーチャーが登場する頃には中国が計算資源の面で大きく遅れをとっていると指摘する。ただし、中国の金融システムは一度重点産業を決めれば他国よりもはるかに手厚く補助金を投入するため、テイクオフが遅れれば中国が半導体分野で急速に追いつく可能性もある。

48:48AIによる国債危機と金利上昇のシナリオ

二人の最大の関心事は、AI投資の急拡大が引き起こす金利上昇と、それに伴う国債危機の可能性だ。データセンターを建設してAnthropicやOpenAIに貸し出すだけで、減価償却ベースの建設コストの10倍の収益が得られる。この異常な収益率は金利を押し上げ、政府や他の企業、消費者、住宅ローンの借り手にとっての借入コストを上昇させる。

Dwarkeshは、アメリカは最終的には大丈夫だと主張する。データセンターが国内に建設されれば、それに課税できるからだ。しかし、現在の税制では法人税は連邦収入の10%未満であり、80%以上は給与税と所得税が占めている。自動化が進めばこれらの税収は縮小する。一方、支出面では現在税収の20%が債務利子の支払いに充てられており、金利が1%上昇すれば25%、5%上昇すれば40%以上に達する。さらに政府が毎年2兆ドルを借り入れていることを考慮すれば、60%以上が利子支払いに消えることになる。

Dylanは、パキスタンやナイジェリアのような高債務・低税収・短期債務の国々が、この新しい金利環境で「完全に詰む」と予測する。Basil Halperin(バジル・ハルペリン)の指摘を引用し、1980年代にPaul Volcker(ポール・ボルカー)がインフレ対策で金利を8%以上に引き上げた際、主にラテンアメリカの約40カ国がデフォルトした「第二のボルカーショック」が起こる可能性を指摘する。また、金利上昇は割引率の上昇を通じて全株式の理論価値を引き下げるため、S&P 500全体は大丈夫でも、個別銘柄は軒並み暴落する可能性がある。バークシャー・ハサウェイのような安定したキャッシュフローを生む銘柄でさえ、割引率が3%から8%に上昇すれば、その価値は大きく毀損される。

1:07:52世界の労働力の集中と中央集権化の不可避性

フロンティアの計算資源がFLOPs換算で年間4〜5倍に成長し、さらに同じ能力を達成するために必要な計算資源が年間3分の1に減少するなら、フロンティアラボの「実効AI人口」は年間10倍に成長することになる。現在はAIが人間の仕事を完全に代替できるほど能力が高くないため、この影響は限定的だが、現在の傾向が続けば、OpenAIは今年1,000万人のAI労働者を持ち、来年は1億人、その翌年は10億人を擁することになる。計算資源のスケーリングが鈍化しても、数年以内に単一のラボが地球上の人間の数よりも多くの労働力換算を保有することになる。

この中央集権化は、AIのアライメント(整合性)の問題とも関連する。もしAIが誤った方向に調整されていれば、世界の「頭脳」の大半がそこに集中しているため、世界の大部分が誤った方向に進むことになる。Dylanは、Gavin Baker(ギャビン・ベイカー)がDario Amodei(ダリオ・アモデイ)が「世界には一つの会社しかない」と信じていると発言した件に言及し、DarioとSholto(ショルト)が否定したものの、RSIを信じるならラボが計算資源の最も効果的な利用者であり、中央集権化は必然であると指摘する。

Dwarkeshは、この中央集権化に抗うビジョンを考えることが重要な知的プロジェクトだと述べる。訓練には大きな規模の経済が働き、わずかに先行したラボは希少な計算資源をより高価格で販売できる。さらに、展開から学習するモデルや継続学習、RSIなど、すべての力が中央集権化に向かっている。政府による規制が唯一の対抗手段かもしれないが、Dwarkeshは「政府もDarioも信頼しない」と述べる。資本主義が機能したのは分散的な意思決定と権力の分散があったからだが、AIはこの前提を覆す。最終的に二人は、80,000の世界のうちAnthropicが全世界を所有しないのは1つだけかもしれないという暗い見通しで対談を締めくくる。

結びに

本エピソードの最大の価値は、AI産業の内部から見た「ラボ経済学」の詳細な分析にある。Dylan Patelのデータに基づく予測は、単なる楽観論でも悲観論でもなく、資本主義の力学がAI産業の中でどのように作用するかを冷静に描き出している。特に、推論から訓練へのシフトという非コンセンサスな主張は、AI産業の将来を考える上で重要な視点を提供する。ラボが短期的な収益よりもAGI構築を優先するという判断は、投資家や政策立案者にとって深刻な含意を持つ。

また、AI投資が世界経済全体に与える影響についての議論は、しばしば見落とされがちな視点だ。計算資源の価格高騰が金利上昇を引き起こし、新興国をデフォルトに追い込み、非AI関連の株式を暴落させるというシナリオは、AIの恩恵が一部のプレイヤーに集中する一方で、そのコストが世界中に分散するという構造的な問題を浮き彫りにする。二人が最後に認めたように、中央集権化の流れに抗う手段は明確ではなく、この問いは今後の重要な知的課題として残されている。

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