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ハイパー起業ラジオ · 2026年5月14日

#11-15 囲うか?開くか?AIに注力するMetaが目指す次の一手

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • メタ(Meta)のAI戦略:オープンモデルで「データの巨人」が仕掛ける次の一手 本エピソードは、全15回にわたって追ってきたMeta(旧Facebook)の軌跡の集大成と...
  • [0:05] MetaがAIに本格参入したタイミングと「10年計画」の3本柱 MetaがAIに本格的に踏み出したのは2023年2月、わずか2年ちょっと前のことだ。これは、...
  • [1:59] 「オープン vs クローズ」の構図:スマホ戦争の教訓 尾原は、MetaのAI戦略を理解するための前提として、「プラットフォームの戦いにおけるオープン vs...
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出典Podcast

ハイパー起業ラジオ / 尾原和啓 / けんすう

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メタ(Meta)のAI戦略:オープンモデルで「データの巨人」が仕掛ける次の一手

本エピソードは、全15回にわたって追ってきたMeta(旧Facebook)の軌跡の集大成として、同社が現在最も注力するAI戦略を徹底解説する回である。ホストの尾原和啓(IT批評家)とけんすう(アル株式会社代表取締役)は、Metaがなぜ「オープンモデル」でAIに臨むのか、その戦略的意図を「囲うか、開くか」という古典的なプラットフォームのジレンマに位置づけながら解き明かしていく。結論は明快だ。MetaはAIの性能競争で「一強」を作らないことこそが最大の戦略であり、オープンにすることで開発者コミュニティを味方につけ、最終的には自社しか持ち得ない圧倒的なデータ量で勝負する——という、まさに「ルールメイキング」の視点が語られる。

0:05MetaがAIに本格参入したタイミングと「10年計画」の3本柱

MetaがAIに本格的に踏み出したのは2023年2月、わずか2年ちょっと前のことだ。これは、同社がVRに2014年から取り組んできたのと比べると、かなり最近の動きである。しかし、尾原によれば、Meta(当時はFacebook)は2016年の時点ですでに「10年後の3本柱」として、①コネクティビティ(まだネットにつながっていない30億〜35億人への接続提供)、②VR/メタバース空間、そして③AI——を掲げていたという。つまり、AIへの注力は突発的なものではなく、10年来の構想の一部だったのだ。ただし、具体的な動きは2023年2月に発表した大規模言語モデル「Llama(ラマ)」から始まった。このタイミングは、ちょうどOpenAIのChatGPTが世界的なブームを巻き起こし、Googleが「コードレッド(非常事態)」を宣言して創業者のセルゲイ・ブリンがAI開発に復帰するほど、業界が震撼していた時期と重なる。

1:59「オープン vs クローズ」の構図:スマホ戦争の教訓

尾原は、MetaのAI戦略を理解するための前提として、「プラットフォームの戦いにおけるオープン vs クローズ」の構図を整理する。スマートフォン市場では、OSのシェアで見るとGoogleのAndroid(オープン)が約7割、AppleのiOS(クローズ)が約3割と、台数ではオープンが圧勝している。しかし、時価総額で評価されると、台数が半分以下のAppleの方がGoogleより上だ。つまり、「勝ち方」には二種類ある。オープンは普及とエコシステムの拡大で勝ち、クローズは収益とブランド価値で勝つ。この構図は、PCの世界ではMicrosoftのWindows(オープン)がMac(クローズ)に勝った歴史とも符合する。では、AIの世界ではどうなるのか——ここがMetaの戦略の核心だ。

4:52OpenAIは「クローズAI」だった:一強リスクとMetaの逆転の発想

2023年初頭、AI業界はOpenAIの一強状態にあった。しかし、尾原はここで重要な事実を指摘する。「OpenAI」という名前には「オープン」と付いているが、実際には極めてクローズドな運営がなされていた。ChatGPT 3.5以降、技術論文やモデルの内部構造はほとんど開示されず、APIすら停止の噂が流れるほどだった。業界では「OpenAIはクローズAIではないか」と揶揄される状況だったのだ。この「一強のリスク」に対して、Metaは逆張りの戦略を取る。「AIにおいてオープンモデルが勝つ世界線」を作り出そうとしたのである。2023年2月に公開された初代Llamaは、まず研究専用モデルとしてリリースされた。その特徴は、GPU1台で動作する軽量さ(約67億パラメータ)にあった。つまり、一般のパソコンでも動くレベルのAIを、研究者が自由に使えるようにしたのだ。そして同年7月にはLlama 2を発表。今度は商用利用も許可し、さらに重要なことに「Llamaを使って他のAIをトレーニングしてもよい」という条件を付けた。この結果、AIモデルのプラットフォーム「Hugging Face」には50万以上のAIモデルが投稿され、独立系AIモデルの約8割がLlamaベースでトレーニングされていると言われるまでになった。尾原はこれを「クローズの一強に対する最強戦略の一つ」と評する。

10:07メタAI、10億ユーザー到達:パーソナルAIというポジショニング

オープンモデル戦略と並行して、Metaは一般ユーザー向けのAIサービス「Meta AI」も展開している。2025年第1四半期の発表によれば、Meta AIの月間アクティブユーザーは10億人に達した。これはChatGPTが10億人に達したと発表した時期とほぼ同時期である。ただし、両者のポジショニングは大きく異なる。Meta AIは「パーソナルAI」を標榜している。つまり、超高度な推論や専門的なタスクではなく、日常生活の中での「ふとした質問」や「人間関係に関わる情報」——例えば「明日会う友達が最近何に夢中になっていたか」「フォローしているインフルエンサーが最近どんなイベントを紹介しているか」——に答えることに特化している。特に、ブラジルやインドなど、フィーチャーフォンしか使えない地域のユーザーにとって、WhatsAppのメッセージを送るだけでAIの答えが返ってくる体験は非常に受け入れられている。けんすうは「Facebook、Messenger、WhatsApp、Instagramの情報を使って『あなたにぴったりのAI』になるのは、Metaにしかできない」と指摘する。尾原も「UXの統合戦略」と表現し、各アプリの検索窓にMeta AIを統合することで、日常のコミュニケーションに自然に溶け込ませていると説明する。

16:18データこそが差別化要因:Metaが持つ「10倍」のデータ量

AIモデルの性能競争が「群雄割拠」の様相を呈してくると、差別化の軸は技術力そのものから「自社にしか扱えないデータ」へと移る。尾原は、ニューヨーク大学のスコット・ギャラウェイがまとめたデータを引用しながら、各社のデータ量を「トークンサイズ」で比較する。Googleの検索データを1とした場合、X(旧Twitter)の投稿データは1.5倍。そして、Metaが持つFacebook、Instagram、WhatsApp上のメッセージや投稿のデータ量は、Googleの10倍にのぼるという。さらに重要なのは、このデータの「質」だ。Googleの検索データは、MetaやXのAIも(APIなどを通じて)利用できる可能性がある。しかし、Metaが自社サービス内で持つ「誰が誰とつながっているか」「何に興味を持っているか」「どんなイベントに参加しているか」といったソーシャルグラフや行動データは、他社には決してアクセスできないクローズドなものだ。尾原は「ストックデータよりもフローデータ、フローデータよりもライブデータ(行動起点のデータ)」がAIの差別化において重要になると指摘する。この観点で言えば、OpenAIはほとんど自前のデータを持っていない。だからこそ、サム・アルトマンはユーザーが「人生のデータを預ける場所」になることを目指し、iPhoneのデザイナーであるジョナサン・アイブのデザイン会社を約1兆円で買収するなど、プロダクト戦略に必死になっているのだ。

21:44「一強を作らない」ことが最上の戦略:年間1兆円の投資とルールメイキング

Metaの戦略を一言で言えば、「AIの性能で一強が生まれないようにすること」だ。もしOpenAIだけが圧倒的に性能が良い状態が続けば、どれだけデータを持っていても性能で負けてしまう。しかし、各社のAIモデルの性能が拮抗して「どこも性能があまり変わらない」状態になれば、勝負はデータ量に移る。そこでは、10倍のデータを持つMetaが圧倒的に有利になる。この戦略を実現するために、Metaは年間1兆円規模の投資を行い、さらに20兆円規模のAIインフラ構築計画を発表している。尾原はこれを「ルールメイキングこそが最上の戦略」と総括する。つまり、既存のゲーム(AI性能競争)の中で戦うのではなく、ゲームのルールそのものを「データ量で勝負するゲーム」に変えてしまえば、結果的に自分が選ばれ続ける——という発想だ。けんすうも「OpenAIは圧倒的に不利な立場に立たされている」と同意する。

23:55シリーズ総括:経営と執行の分離、そして次なる市場

エピソードの後半では、全15回にわたるMeta編を振り返り、けんすうが「今までで一番面白かった」と総評する。特に印象的だったのは、ザッカーバーグ(経営/ビジョン)とシェリル・サンドバーグ(執行/収益化)の「経営と執行の分離」という役割分担の実例だ。日本企業ではこれほど明確に説明できるケースが少ないという。また、Metaの戦略を「メタ認知」することで、次に伸びる市場が見えてくるという視点も提示される。例えば、Metaが世界共通通貨「Libra(リブラ)」に挑戦した話からは、アフリカのナイジェリアなど、自国通貨が不安定で暗号通貨ウォレットの普及率が高い新興国こそが、次世代の金融プラットフォームの有望な市場であることが見えてくる。尾原は「巨人がどのくらいの視野で経営を見ているかをシミュレーションすると、自分のフィールドでどう戦うべきかがメタ認知できる」と語る。

まとめ

このエピソードが最も鮮やかに描き出したのは、Metaが「AIの性能競争」という目前の戦いに没入するのではなく、ゲームのルールそのものを書き換えようとしている点だ。オープンモデルで開発者コミュニティを味方につけ、自社の圧倒的なデータ資産を活かせるフィールドに引きずり込む——その戦略の明快さと、年間1兆円を投じる実行力には圧倒される。同時に、この回は「経営とは資源をどこに最優先で配分し、新しいゲームを作っていくことだ」という、シリーズ全体のテーマを改めて浮き彫りにした。AIの世界で「一強」が生まれないようにするという逆説的な戦略は、プラットフォームビジネスを志す起業家にとって、ルールメイキングの重要性を痛感させるものだった。

要点

  • MetaがAIに本格参入したのは2023年2月の「Llama」発表からで、2016年に掲げた10年計画の3本柱(コネクティビティ、VR/メタバース、AI)の一つがようやく具体化した。
  • Metaの戦略は「オープンモデルでAIの一強を作らないこと」。性能競争が拮抗すれば、自社しか持てないデータ量(Googleの10倍)で勝負できる。
  • OpenAIは名前に反して極めてクローズドな運営であり、Metaはその「一強リスク」に対して逆張りのオープン戦略を取った。
  • Llamaをベースにした独立系AIモデルは全体の約8割に達し、開発者コミュニティのデファクトスタンダードになりつつある。
  • 一般ユーザー向け「Meta AI」は月間10億ユーザーを達成。超高度な性能ではなく、日常のコミュニケーションに溶け込む「パーソナルAI」を標榜する。
  • AIの差別化要因は技術力から「自社にしか扱えないデータ」へ移行。Metaはソーシャルグラフや行動データで圧倒的優位に立つ。
  • サム・アルトマン率いるOpenAIは自前のデータをほとんど持たず、ユーザーがデータを預けるプロダクト作りに必死である。
  • 「経営と執行の分離」というザッカーバーグとシェリル・サンドバーグの役割分担は、日本企業にはない明確な実例として印象的だった。