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ハイパー起業ラジオ · 2026年5月14日

#11-13 テック企業が通貨をつくる?Libra構想に立ちはだかる“世界の壁”

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • 概要 2019年6月、Facebookは「Libra」という世界共通のデジタル通貨を発表した。当時、世界で17億人以上のユーザーを抱え、もはや一国の人口を超える規模に達し...
  • [0:06] Facebookの規模とLibra構想の背景 尾原はまず、前回取り上げたケンブリッジ・アナリティカ事件(2016年)の文脈を引きながら、Facebookが持...
  • さらに、2019年の時点で、世界の金融システム(クレジットカードや銀行口座)にアクセスできる人口は約17億人にとどまっていた。つまり、世界人口の大半は依然として「ノンバン...
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出典Podcast

ハイパー起業ラジオ / 尾原和啓 / けんすう

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概要

2019年6月、Facebookは「Libra」という世界共通のデジタル通貨を発表した。当時、世界で17億人以上のユーザーを抱え、もはや一国の人口を超える規模に達していたFacebookは、銀行口座やクレジットカードを持てない約17億人の「ノンバンク」層に向けて、国境を越えて使える共通通貨を提供しようとした。しかし、この構想は発表から数時間後にはEUが猛反発し、その後も各国政府から次々と規制の圧力を受け、最終的にはプロジェクトの中止に追い込まれる。IT批評家の尾原和啓と連続起業家のけんすうが、なぜ世界中の政府がここまで警戒したのか、その背景にある「通貨発行権」と「国家の主権」をめぐる本質的な対立を、具体的な事例を交えながら掘り下げていく。

0:06Facebookの規模とLibra構想の背景

尾原はまず、前回取り上げたケンブリッジ・アナリティカ事件(2016年)の文脈を引きながら、Facebookが持つ圧倒的なプラットフォーム力について語る。2016年、Facebookのユーザー数は世界で17億人を超え、これは中国とインドの人口をそれぞれ上回る数字だった。尾原自身、この数字を「世界最大の国はもはや中国でもインドでもなく、Facebookこそが世界最大の国になった」と捉え、それを理由に日本を離れてシンガポールやバリ島に居住地を移す決断をしたという。つまり、Facebookというデジタル空間にいれば、物理的な居住地はもはや重要ではないという認識に至ったのだ。

さらに、2019年の時点で、世界の金融システム(クレジットカードや銀行口座)にアクセスできる人口は約17億人にとどまっていた。つまり、世界人口の大半は依然として「ノンバンク」であり、銀行コードすら持たない人々が多数存在していた。特にアフリカでは、WhatsApp上でお金をプールしやり取りする「WhatsAppPay」が事実上の通貨プラットフォームとして機能している国も少なくない。こうした背景から、デジタル共通通貨の必要性は確かに存在していた。

6:14Libraの具体的な設計と参加企業

Libraは単なるFacebookの独走プロジェクトではなかった。尾原は、Facebookが周到な準備をしていた点を強調する。まず、Libraは一社で運営されるのではなく、28社の「初期創設メンバー」による連合体としてスタートした。各社は1000万ドル(当時約10億円)を出資し、以下のような企業が名を連ねていた。

  • Visa、Mastercard(クレジットカード)
  • PayPal、Stripe(オンライン決済)
  • eBay(オンラインマーケットプレイス)
  • Spotify(音楽配信)
  • Uber(モビリティ)
  • Vodafone(通信)

また、通貨の設計においても、独自の仮想通貨として暴走するリスクを避けるため、「バスケット方式」を採用した。これは、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、シンガポールドルなど、主要な国の通貨を一定の比率で組み合わせ、その価値に連動させる仕組みである。つまり、Facebookが勝手に価値を決めるのではなく、既存の主要通貨の強さに応じて価値が決まるように設計されていた。

9:19世界中からの猛反発と参加企業の離脱

しかし、この周到な準備にもかかわらず、Libraは発表から数時間後にEUから「こんなものは認められない」と一蹴される。尾原は、この反応の速さに驚きを隠せない。Facebook側は「このまま放置すれば、中国がデジタル人民元を実装して世界を席巻する」と警告したが、各国政府の警戒心はそれ以上だった。

結果として、参加企業は次々と離脱していく。最初にPayPalが抜け、続いてeBay、Mastercard、Stripe、Visaと、主要な決済企業が連鎖的に離脱した。尾原は、この現象の本質を「国家の直感的な拒否反応」と表現する。けんすうも「ユーザーベースを持つ企業が通貨のようなものを作ることの圧倒的なヤバさ」を指摘し、その影響力の大きさが各国政府の恐怖を招いたと分析する。

11:13シニョレッジと主軸通貨の重要性

ここから、尾原は「シニョレッジ(通貨発行益)」という概念を導入する。かつては金本位制のもと、通貨そのものに物質的な価値があった(金の小判を溶かせばその金額で売れる)。しかし現代の紙幣は、原価が額面よりもはるかに低い。例えば、1万円札の原価が仮に500円だとすれば、国は1万円を発行するたびに9500円の差益を得ることになる。これがシニョレッジであり、通貨発行権は国家にとって極めて重要な収入源である。

さらに、尾原は「主軸通貨」の概念を説明する。国際貿易において、どの国の通貨が最も広く使われるかは、その国の経済的影響力を直接的に左右する。現在、世界の主軸通貨は米ドルであり、アメリカはこの地位を活用して自国に有利な経済政策をとることができる。例えば、日本が巨額の国債を抱えている状況で、円安が進めば実質的な債務負担が軽減される。こうした「通貨の過剰供給による為替操作」は、主軸通貨を持つ国ほど有利に働く。

ここで、もしFacebookのLibraが普及し、世界の取引の半分がLibraで行われるようになれば、各国はシニョレッジを失い、自国の経済をコントロールする力を大きく損なうことになる。これが、各国政府がLibraに強く反発した本質的な理由だと尾原は指摘する。

17:42Facebookの妥協とプロジェクトの中止

猛烈な反発を受けたFacebookは、いくつもの妥協を重ねた。まず、当初は主要通貨のバスケット方式としていたLibraを、米ドルにペッグ(連動)させる方針に変更した。次に、管理拠点をスイスからアメリカに移した。さらに、名称も「Libra」から「Diem」に変更した。しかし、すでに参加企業の多くが離脱しており、プロジェクトへの信頼は大きく損なわれていた。結局、誰も賛同してくれる企業は現れず、プロジェクトは正式に中止されるに至った。

けんすうは「やろうとしていることは、数十年前の未来を考えれば絶対にありそうなこと」と評価しつつ、国家とのコンフリクトが避けられなかった点を認める。尾原も「国家とコンフリクトするからダメという話では終わらせられない」と述べ、この問題の本質はより深いところにあると示唆する。

19:54デジタル経済の必然的な流れと現状

尾原は、コロナ禍を契機としたリモートワークの普及や、AIによるリアルタイム音声翻訳の進化を挙げ、国際的な経済活動のデジタル化は不可避の流れだと主張する。すでに、日本人が作成したNFT(非代替性トークン)をアメリカの購入者がイーサリアムで即時決済するといった事例は現実に起きている。一方で、従来の国際送金は2〜3日かかり、2〜3%の手数料がかかるのが一般的だ。また、為替変動(例えば、1ドル100円から160円への変動)は、国境を越えてビジネスを行う人々にとって大きなリスクとなる。

こうした状況の中で、現実にはすでにさまざまな代替手段が動き始めている。東南アジアでは、配車・フードデリバリーサービスの「Grab」が、ユーザーが運転手に現金をプールし、そのポイントを経済圏内で流通させる仕組みが定着している。アフリカではWhatsAppPayが同様の機能を果たしている。そして、これらの動きは「自社で独自通貨を作る」のではなく、既存のステーブルコイン(USDCなど)を活用する方向にシフトしつつある。

24:24Libraの遺産と分散型への移行

尾原は、Libraが「完全な失敗」で終わったわけではないと強調する。Libraプロジェクトで開発された共通の開発ライブラリは、オープンソースとして公開され、現在も多くのWeb3プロジェクトで活用されている。つまり、Facebookが目指した「国境を越えた共通通貨」というビジョンは、一社独占の形ではなく、分散型の形で少しずつ実現しつつあるのだ。

また、Telegramの「TON」やLINEの「LINK」など、メッセンジャーアプリ上での仮想通貨プロジェクトも進行中だ。ただし、けんすうは「ゲームを作る才能がない」と冗談交じりに語り、こうした分野での事業化には慎重な姿勢を見せる。尾原は、今回の教訓として「急ぎすぎるとアレルギー反応が起きる」「一社独占ではなく、他社も参加できる流動性を担保しながら進めるべき」という2点を挙げる。

まとめ

このエピソードは、テクノロジー企業が国家の根幹である「通貨発行権」に挑戦した歴史的な事例を、単なる「失敗談」としてではなく、未来への教訓として描き出している。FacebookのLibraは、確かに各国政府の猛反発によって頓挫した。しかし、その背景には「お金とは何か」「国家とは何か」という本質的な問いが横たわっている。そして、Libraが残したオープンソースの遺産は、現在も分散型の形で生き続けている。尾原とけんすうは、インターネットが個人に力を与えるという理想と、それが既得権益と衝突する現実の間で、どのように「しなやかな仕組み」を作っていくべきかという問いを、リスナーに投げかけている。

要点

  • FacebookのLibraは2019年6月に発表され、28社の連合体による世界共通デジタル通貨を目指したが、各国政府の猛反発で中止に追い込まれた
  • 当時、世界の金融システムにアクセスできる人口は約17億人で、Facebookのユーザー数(17億人超)とほぼ同数だった
  • 各国政府が反発した本質的な理由は「シニョレッジ(通貨発行益)」と「主軸通貨のコントロール権」を失うことへの恐怖だった
  • Libraは主要通貨のバスケット方式を採用し、一社独占を避ける設計だったが、発表後数時間でEUが拒否、参加企業も連鎖的に離脱した
  • Facebookは米ドルペッグへの変更、管理拠点のアメリカ移転、名称変更(Diem)など妥協したが、プロジェクトは中止された
  • Libraの開発ライブラリはオープンソースとして公開され、現在も多くのWeb3プロジェクトで活用されている
  • 国際送金の非効率性(2〜3日、2〜3%の手数料)や為替リスクは現実の課題であり、デジタル共通通貨のニーズは依然として存在する
  • 現在はGrabやWhatsAppPayなど、既存のステーブルコインを活用した分散型の決済手段が各地で普及しつつある
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