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The a16z Show · 2026年5月29日

なぜ10億ドルのエグジットは死んだのか

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • a16zのゼネラルパートナーであるDavid Georgeと、ベンチャーキャピタルへの投資機関VenCapのCIOであるDavid Clarkが、AIがベンチャーキャピタ...
  • この急速な成長の裏では、コンピューティングパワー、データセンター、優秀な人材といったインフラが深刻な供給制約に直面しており、投資家は規模、持続可能性、価値獲得のメカニズム...
  • [0:00] 前例なきスケール:1%の出口が示すもの David Georgeは、AI企業の成長スケールが過去のテクノロジーサイクルと比較して桁違いに大きくなっていると指...
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出典Podcast

The a16z Show / Andreessen Horowitz

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a16zのゼネラルパートナーであるDavid Georgeと、ベンチャーキャピタルへの投資機関VenCapのCIOであるDavid Clarkが、AIがベンチャーキャピタルとテクノロジー業界そのものをどのように再形成しているかについて、深く掘り下げた対談を行った。両氏の議論の核心は、現在のAI企業がこれまでのどの世代のスタートアップよりも急速に規模を拡大しており、その結果として生まれる企業価値は、ほとんどの投資家が現在想定しているよりもはるかに大きくなる可能性があるという点にある。特に、AnthropicやOpenAIといったフロンティアラボは、エンタープライズ分野での本格的な採用がまだ初期段階であるにもかかわらず、MetaやGoogle、Microsoftといったハイパースケーラーを凌ぐペースで収益を拡大しているという事実が、この議論の出発点となっている。

この急速な成長の裏では、コンピューティングパワー、データセンター、優秀な人材といったインフラが深刻な供給制約に直面しており、投資家は規模、持続可能性、価値獲得のメカニズム、そしてベンチャーキャピタルそのもののあり方について、これまでの前提を根本から見直すことを余儀なくされている。本エピソードでは、AIバブルの真偽、勝者の条件、オープンソースの役割、データセンターの制約、そしてこの変化がVC業界の未来に与える影響など、多岐にわたるテーマが、具体的なデータと実体験に基づいて議論されている。両氏は、この不確実性の高い時代において、投資家としての「前提(priors)」を絶えずアップデートすることの重要性を強調し、そのプロセスが時に謙虚にさせられるものでありながらも、前例のない機会に満ちていると語る。

0:00前例なきスケール:1%の出口が示すもの

David Georgeは、AI企業の成長スケールが過去のテクノロジーサイクルと比較して桁違いに大きくなっていると指摘する。彼が提示したデータは衝撃的だ。2020年から2024年にかけて、VCが支援する企業の上位1%の出口(Exit、IPOや買収)の基準額は100億ドルだった。ところが、2025年2月にはその基準が200億ドルに跳ね上がり、直近のデータでは320億ドルに達している。このわずか24ヶ月間での10倍という変化は、AIというトレンドの巨大さを如実に示している。この基準を満たす企業として、具体的にWiz(クラウドセキュリティ企業)の名前が挙げられている。

さらに、OpenAIやAnthropicが今後公開市場に登場すれば、この上位1%の基準は2025年9月までに1,000億ドルを超える可能性もあるとGeorgeは予測する。彼は、過去6年間にVC支援を受けてIPOを果たした全企業の時価総額を合計しても1兆ドル強であるのに対し、今後予想される大型IPO(OpenAI、Anthropicなど)のうち、たった3社の価値がそれを上回る可能性があると述べ、規模の次元が完全に変わったことを強調した。この規模の拡大は、Cursorのような企業が4〜5年でゼロから300億ドル、さらには600億ドルの評価額に達するという、価値創造のペースの加速も伴っている。

David Clarkは、この規模の拡大がVC業界の構造そのものに影響を与えていると指摘する。企業がより大きく、より長く非公開の状態を保つようになった結果、VCファンドも大型化せざるを得ず、a16zのような大規模プラットフォームが競争優位性を持つようになった。しかし同時に、このような巨大な出口が実現するかどうかは、AIが実際にどれだけの経済的価値を生み出すかにかかっている。Georgeは、Fortune 500企業の総利益が約2兆ドルであることに言及し、AnthropicとOpenAIの2社だけで年末までに2,000億ドルの収益ラン率(年間換算収益)に達しても不思議ではないと述べ、これはFortune 500の利益の10%に相当する計算になると指摘する。この規模の価値創造が可能であれば、現在の評価額も決してバブルではないというのが彼の主張である。

12:03価値獲得の難しさ:モデル企業か、アプリケーションか

AIエコシステムにおいて、誰が最終的に価値を獲得するのかという問いは、両氏の間で最も議論が交わされたテーマの一つである。David Georgeは、この点に関する自身の「前提」が短期間で何度も変わったことを認める。ChatGPT以前にOpenAIに投資した当初は「モデル企業がすべてになる」と考えた時期があった。その後、モデル企業は単なるAPI提供者になり、アプリケーション企業が隆盛を極めるという見方に変わった。そして現在は、モデル企業が自らアプリケーション層に進出し、ユーザーを囲い込もうとしている。

この混乱の原因は、技術の変化があまりに速いため、持続可能な競争優位性(moat)を築くのが極めて困難になっていることにある。David Clarkは、毎年発表されるForbesの「AI 50」スタートアップリストに注目する。昨年のリストに載っていた企業の40%が、今年のリストからは姿を消していたという事実は、AIスタートアップの「半減期」が驚くほど短いことを示している。勝者を予測することが以前にも増して難しくなっているのだ。

現在、価値獲得の鍵を握るのは「トークンパス(token path)」の中にいるかどうかだとGeorgeは言う。つまり、AIモデルのトークン(処理単位)の消費フローの中に自社のプロダクトが位置づけられているかどうかが重要だ。しかし、最大の不確定要素は、フロンティアモデルを提供する企業間の「市場構造」である。もし競合が2〜3社しかなければトークン価格は高止まりし、モデル企業が大きな利益を享受する。逆に5社以上の競争があればトークン価格は低下し、アプリケーション層やエンドユーザーに利益が還元される。現在はフロンティア層の競争が限定的であり、トークン需要の価格弾力性は非常に低い。この市場構造が今後どう変化するかが、エコシステム全体の価値配分を決定づけると両氏は見ている。

14:35オープンソースと中国の台頭:コスト競争の力学

トークン価格の低下圧力として、オープンソースモデルと中国のAI企業の存在が重要な要素として議論された。David Clarkは、中国に滞在している同僚からの報告として、中国の主要なLLM(大規模言語モデル)は性能面で米国に約6ヶ月遅れているものの、そのコストは10分の1であると紹介する。これは、クレイトン・クリステンセンが提唱した「イノベーターのジレンマ」の典型的な構図だ。フロンティアモデルの80%の性能を10%のコストで実現する製品が登場すれば、市場の大部分を獲得する可能性がある。

David Georgeは、この点についてさらに深掘りする。オープンソースの将来は、大規模モデルの「蒸留(distillation)」がどれだけ容易かにかかっていると指摘する。蒸留とは、巨大な教師モデルの知識を、より小型で効率的な生徒モデルに転移する技術であり、そのコストは事前学習(pre-training)コストのわずか2%程度だという。もしこの蒸留が今後も容易に可能であれば、オープンソースコミュニティは常に最先端に近いモデルを低コストで提供できる。しかし、モデル企業が蒸留を困難にする技術的対策を講じれば、オープンソースの優位性は失われる。

現在のところ、ユーザーは圧倒的にフロンティアモデルを求めており、その需要は供給を上回っている。トークンあたりのコストは年率10倍以上で低下しているが、それ以上に総トークン消費量が増加しているため、フロンティアモデルへの支出総額は増え続けている。しかしGeorgeは、いずれ「最適化フェーズ」が訪れ、企業はコストと性能のバランスを重視するようになると予測する。その時、中国の低コストモデルやオープンソースモデルが大きなシェアを獲得する可能性がある。この不確実性こそが、現在のAI投資を難しくしている要因の一つである。

17:06バブルか、それとも構造的変化か:VCの視点

「AIバブル」という問いに対して、David Georgeは「現在はバブルではない」と明確に断言する。その根拠は、典型的なバブルが過剰な供給によって経済性が破壊される現象であるのに対し、現在のAI業界は深刻な供給制約に直面しているからだ。コンピュート、メモリ、データセンター、電力、あらゆるものが不足している。データセンターの大規模なキャパシティを確保しようとすると、早くても2028年後半から2029年まで待たなければならないという事実が、この供給不足を物語っている。

しかし、Georgeは3年後にバブルが発生する可能性を完全には否定しない。その引き金となり得るのは、アルゴリズムの画期的な進歩だ。もし人間の脳のように、はるかに少ないトークンで同等の知能を実現できるモデルが登場すれば、現在の供給制約は一気に解消され、過剰供給とバブルに転じる可能性がある。とはいえ、短期的にはその可能性は低いと見ている。

一方、David Clarkは、現在のAI企業の評価額に対する市場の見方を紹介する。英国VC協会の調査では、回答者の80%がAIの評価額は「高すぎる」と答え、わずか6%が「低すぎる」と答えた。Clarkはこの結果を「おそらく正しい」と評価する。歴史的に見れば、VCが投資する企業の60%は元本を回収できない(損失率60%)からだ。しかし、現在のAI分野における損失率は一桁台であり、これは明らかに持続不可能な状態である。つまり、大多数の企業は過大評価されているが、ごく一部の勝者は現在の評価額からさらに何倍にも成長する可能性を秘めており、それらは過小評価されている。この二極化こそが、現在のAI投資の本質だとClarkは指摘する。

20:52変貌するVC:大規模プラットフォームと早期の企業課題

AI企業の急速な成長は、VCファームのあり方そのものを変えつつある。David Georgeは、a16zが大規模なプラットフォームを構築してきた理由を、起業家のニーズに応えるためだと説明する。AIスタートアップは、従来のSaaS企業とは異なり、創業からわずか数年で数十億ドルの収益を達成し、大企業と同様の複雑な課題に直面する。Cursorの例を挙げ、彼らはまだ非常に小さなチームでありながら、数十億ドルの収益を上げ、大規模なサプライヤー契約や国際展開といった、かつてはIPO直前になって初めて直面したような課題を、会社のごく初期の段階で処理しなければならない。

このような状況下では、単に資金を提供するだけでなく、価格設定、セールスフォームの構築、チャネル戦略、国際展開など、専門的な知見を提供できるVCプラットフォームが重宝される。これが、a16zのような大規模ファームがディールの獲得率(win rate)で優位に立てる理由である。Georgeは、この変化を「起業家による選好の表明」と表現する。起業家たちは、単なる資金以上の価値を提供できるパートナーを求めているのだ。

David Clarkは、この文脈でLP(Limited Partner、ファンドに出資する機関投資家)の立場の難しさを指摘する。個別の勝者を選び抜くことは極めて困難であり、LPとしてはAI分野全体に広く分散投資することで、一部の企業が失敗しても、全体としてリターンを得る戦略が有効だと述べる。これに対しGeorgeは、a16zの戦略はあくまでアーリーステージへの集中であると応じる。勝ち馬を早期に見極め、その後の成長ステージでも追加投資(フォローオン)を行うことで、大きなリターンを追求する。この「打率(batting average)」よりも「長打率(slugging percentage)」を重視する姿勢が、現在のような不確実性の高い時代には不可欠だと彼は強調する。

27:10公開市場への影響とVC業界の未来

AIの巨人たちが公開市場に登場した場合、その影響は計り知れない。David Georgeは、これらの企業がハイパーグロース(超成長)の段階で公開市場に参入することは、投資家コミュニティにとって極めて有益だと主張する。特に、インデックスファンドに組み入れられれば、一般投資家もその成長の恩恵を受けられるようになる。彼は、過去20年間で公開企業の数が半減している現状を憂慮しており、AI企業のIPOは市場に待望の成長株を供給する「強心剤」になると期待する。

現在のマグニフィセント・セブン(Apple、Microsoft、Google、Amazon、NVIDIA、Meta、Tesla)は、いずれも成長率が30%を下回っている。Palantirを除けば、高い成長率を誇る大型株はほとんど存在しない。そこに、今後も長期間にわたってハイパーグロースが続くと予想されるAI企業が加わることで、市場のダイナミクスは大きく変わる可能性がある。

最後に、David Clarkは「もしAIに対する楽観的なシナリオが正しかった場合、5年後のVC業界はどうなっているか」と問いかける。Georgeは、この問いに対する答えは、繰り返しになるが「モデル企業の市場構造」と「トークンコスト」に依存すると述べる。もしトークンコストが低下し、プラットフォームとしてのAIが成熟すれば、その上に構築されるアプリケーション企業の価値は、プラットフォーム自体の価値を上回るというビル・ゲイツの法則が働く。その結果、VC業界には新たな巨大企業を生み出す波が訪れるだろう。さらにGeorgeは、コンシューマー分野にも大きな可能性を見出している。過去10年間は既存のテック大手に消費者の時間を奪われ続けてきたが、AIによるパラダイムシフトは、消費者の注意と時間の配分を根本から変え、新たな巨大企業を生み出す契機になると予測する。

結びに

本エピソードは、単なるAIトレンドの解説に留まらず、ベンチャーキャピタルという業界そのものが、投資対象であるAIによって根本から変革されつつある現場のリアルを伝えている。David Georgeが繰り返し口にした「前提(priors)をアップデートする」という言葉は、不確実性が高く、変化の速度が常識を超える時代において、投資家に求められる最も重要な姿勢を象徴している。過去の成功体験や固定観念に固執するのではなく、新しいデータと現実に基づいて柔軟に考えを変えることの重要性が、具体的な数字と事例を通じて語られた。

この対談が特に印象的なのは、楽観論と懐疑論のバランスが絶妙である点だ。AIが生み出す前例のない規模の価値創造への期待と、誰がその価値を獲得するのかという根本的な不確実性、そしてバブルのリスクが同時に議論されている。David Clarkが「34年間VCに投資してきたが、これほどエキサイティングで恐ろしい時期はなかった」と語るように、この時代は計り知れない機会と、それに伴うリスクが表裏一体となっている。このエピソードは、AI時代の投資とビジネスを考える上で、不可欠な視点とフレームワークを提供している。

要点

  • David Georgeによれば、VC支援企業の上位1%の出口基準額は、2024年の100億ドルから2025年には320億ドルへと、わずか24ヶ月で3倍以上に拡大した。この傾向は、AI企業の規模が過去のテクノロジーサイクルと比較して桁違いに大きいことを示している。
  • AnthropicとOpenAIの2社は、Meta、Google、Microsoftを凌ぐペースで月間収益を増加させており、年末までに2,000億ドルの年間収益ラン率に達する可能性がある。これはFortune 500企業の総利益の約10%に相当する。
  • AIエコシステムにおける「価値獲得」の行方は極めて不確実であり、モデル企業、アプリケーション企業、オープンソースコミュニティの間で競争が激化している。現在は「トークンパス」の中にいることが成功の鍵だが、市場構造の変化次第で状況は一変する。
  • 現在のAI業界は、コンピュート、データセンター、電力など、あらゆる面で深刻な供給制約に直面しており、この点がバブル発生の可能性を低くしている。しかし、アルゴリズムの画期的な進歩により、この状況は一変するリスクも存在する。
  • 中国のAI企業は、米国に6ヶ月遅れの性能でありながら、10分の1のコストでモデルを提供している。これは「イノベーターのジレンマ」の構図であり、将来的に市場構造を大きく変える可能性がある。
  • 現在のAI分野におけるVC投資の損失率は一桁台と異常に低く、歴史的な平均(60%)から見れば持続不可能である。大多数の企業は過大評価されている一方、ごく一部の勝者は過小評価されているという二極化が進行している。
  • AIスタートアップは従来のSaaS企業よりもはるかに速く成長するため、価格設定や国際展開といった大企業向けの課題に、会社のごく初期段階で直面する。このため、単なる資金提供以上の専門的支援を提供できる大規模VCプラットフォームの重要性が増している。
  • David Georgeは、AIが消費者の時間と注意の配分を根本から変え、コンシューマー分野で新たな巨大企業が生まれる可能性に期待を寄せている。過去10年間は既存テック大手に支配されてきたこの分野に、AIが変革をもたらすと見ている。