
買い物や計画、噂話をする新しいAIエージェント
- AIアシスタントの世界は、わずか1カ月で大きく様変わりした。a16zのAnish Acharya(アニッシュ・アチャリヤ)とJosh Elman(ジョシュ・エルマン)が、...
- 議論の中心にあるのは、「すべてをこなす1つの万能アシスタント」か、それとも「人生の異なる領域をそれぞれ知るエージェントのネットワーク」かという問いだ。3人は、人間が友人を...
- [2:07] エージェント・ミートアップが示した「コミュニティへの渇望」 ポーランは前夜、100人以上が集まるエージェント・ミートアップを主催した。参加者は「エージェント...
The a16z Show / Andreessen Horowitz
AIアシスタントの世界は、わずか1カ月で大きく様変わりした。a16zのAnish Acharya(アニッシュ・アチャリヤ)とJosh Elman(ジョシュ・エルマン)が、Assistant Benchmarkの創設者David Pawlan(デイビッド・ポーラン)を再び迎え、140以上ものAIアシスタントを実際にテストしてきた知見を掘り下げる。前回の収録からわずか1カ月で「エージェントの状況は毎日のように変わっている」と語られるほど、この分野の進化は速い。今回は、メモリや判断力、信頼、ショッピング、そしてソーシャル体験といった観点から、各エージェントを分ける要因を解き明かしていく。
議論の中心にあるのは、「すべてをこなす1つの万能アシスタント」か、それとも「人生の異なる領域をそれぞれ知るエージェントのネットワーク」かという問いだ。3人は、人間が友人を用途別に使い分けるのと同じように、エージェントも役割ごとに分かれていくという見立てで一致する。さらに、エージェント同士が会話し始めたときに何が起きるのか、それが新しいソーシャルネットワークや偶然の出会い(セレンディピティ)をどう生むのか、そして最も魅力的なエージェントは単に時間を節約するだけでなく「秘密の超能力」になり得るのではないか——という未来志向の議論が展開される。信頼と恥ずかしさ、パターナリズムへの警告、写真や家電といった未開拓のデータソースまで、具体的な実験と数字を交えた濃密な対話となっている。
エージェント・ミートアップが示した「コミュニティへの渇望」
ポーランは前夜、100人以上が集まるエージェント・ミートアップを主催した。参加者は「エージェント・オタク」と自称する面々で、10組のAIアシスタント開発者がピッチ競争を繰り広げるなど、和やかな雰囲気だったという。そこでポーランが最も印象に残ったのは、エージェントの世界に身を置く人々が「コミュニティを渇望している」という事実だった。一日中エージェントとメッセージを交わしているような人々が、「なぜもっとこういう集まりがないのか」と口を揃えるのは皮肉でもある。
アチャリヤは、こうした製品が表面的には重複しているため、創業者たちはもっと警戒心を抱くものではないかと問う。しかしポーランによれば、誰もが驚くほどオープンで、フィードバックを求めている。まだこの分野の最先端にいるため、業界がどこに落ち着くのか誰も分かっておらず、「みんなで砂場で一緒に遊んでいる」状態だという。エルマンはこれを、初期のソーシャルゲームやソーシャルネットワークの黎明期に似ていると重ねる。現時点ではゼロサムゲームではなく、カンブリア爆発のような多様性の時代であり、互いに学び合える段階だという認識で一致する。
エルマンは、最終的に少数のエージェントが行動の大半を占めるかもしれないが、今はまだ始まったばかりだと強調する。人々が何を楽しみ、何が一度は動いても信頼性に欠けるのかを共有し合える段階であり、「1つのエージェントが人生の1つのことをこなす」世界ではなく、多数の製品が多数のことを担う世界になると予想する。アチャリヤも、人間の類型と同じくらい多様なエージェントが生まれるという見方に賛同し、その分化の軸として「真面目で生産的」から「遊び心があり、時に挑発的」までのスペクトラムを提示する。
人生の領域を分けるエージェント群と「ゴシップ好き」な相棒
エルマンは、人間の生活には金融管理、旅行計画、健康、カレンダー管理、あるいは単に考えを声に出したいだけの時間など、多くの側面があると指摘する。人は用途ごとに異なる友人を頼り、専門知識を持つ友人を呼び出すものだが、同じように「エージェントの軍団」を使い分けることに慣れていくという。生産性を担うエージェント、メールに接続して「今すぐ片付けるべき5通」を提示するエージェント、そして一日中話していたくなるような楽しいエージェントまで、役割は多様だ。
特に興味深いのが、エルマンが試した「遊び心があり、ゴシップ好き」なエージェントの体験談だ。何人かの友人とも接続されたそのエージェントが、友人が週末ずっと停電していたことを伝えてきた。エルマンがその夜電話すると、友人は「そうやって知ると思ってた」と笑ったという。これは旅行予約や節約とは無関係だが、人と人とのつながりを深める効果がある。エルマンはこれを「より良いコネクションを生む」と評価する。
ポーランは、自身が接した147のアシスタントを「汎用型」「仕事特化型」「マルチプレイヤー型」「旅行型」の4カテゴリーに分類する。まだ実現していないのが金融分野だという。彼が運営するAIパワーユーザーのグループチャット(約3,600メッセージ)を分析すると、この分野への最大の恐怖として「信頼」が22%のメッセージで言及されていた。生産性や楽しさを追求する陣営がある一方で、分野の行く末を不安視する慎重な陣営も存在する。ポーランは、この信頼の層を解決できれば金融分野で何が起きるか注視している。
信頼を築く「フェンス」と、恥ずかしさという本当の恐怖
エルマンは、Shane Mac(シェーン・マック)が提唱する「Picnic」という概念を引く。庭にフェンスがない状態で子どもを外に走らせれば、親は過度に心配して遠くへ行かせまいとする。しかし小さなフェンスを設ければ「その範囲内なら自由に動き回っていい」と安心して言える。同様に、エージェントにデータやアプリへのアクセスを与えつつ、その「フェンス」の範囲内で最大限のことをさせる設計が信頼構築の鍵になるという。マック自身、個人用エージェントが仕事用のSlackにまで及び、会社のSlackで財務情報を暴露してしまった事件があった。個人用エージェントは個人の通信チャネルにはアクセスすべきだが、仕事用には及ぶべきではない——この「にじみ出し」を防ぐことが重要だとされる。
アチャリヤは、従来のサンドボックス観(ハードな制約とルール)に対し、「ルールではなく法律と原則を与えるべきだ」という枠組みを紹介する。エージェントの「出しゃばり具合(presumptuousness)」を定性的に調整し、モデルが従業員のように判断を下すという考え方だ。エルマンは、エージェントは非常に有能である一方で「子どものような」側面もあり、ニュアンスを理解できないことがあると補足する。そして、人間は自律性を手放したいわけではなく、下調べや選択肢の提示、トレードオフの整理は任せつつ、最終決定は自分で下したいのだと主張する。
ポーランは、この状況を1990年代のEコマースになぞらえる。1997年頃、インターネット利用者の60〜90%がクレジットカードをオンラインで使うのは「非常識」と考えていたが、今では誰もがカード情報を気軽に入力する。信頼の時代もいずれ訪れるが、時間がかかるという。アチャリヤは「表明された選好」と「明らかになった選好」の違いを指摘する。消費者はアンケートでは信頼を気にするが、実際にはPlaid経由で銀行口座を接続するなど、わずかな利得のためにデータを共有してしまう。しかし本当に怖いのは「恥ずかしさ」と「社会的シグナリング」だという。マックの事件で最も恐ろしいのは、彼が社会的に辱められた点であり、2回目や3回目のデートで互いのエージェントが会話している場面を想像すると、実際の実害よりも社会的力学のほうがはるかに高いリスクに感じられる。
ポーランは具体例として、Harkが100万ドル分(1人30ドル相当)の無料ピザと引き換えにGoogle Workspace全体へのアクセスを求めたキャンペーンを挙げる。人々は30ドルのピザのために全データを差し出すことを証明した形だ。エルマンはプライバシーとユーティリティのトレードオフに触れ、ユーティリティが同等なら人はよりプライベートな選択肢を選ぶとし、AppleのPrivate Cloud Computeを例に挙げる。また「恥ずかしさ」の重要性として、乳糖不耐症の人が友人とのピザの場でどう振る舞うかという例を出す。エージェントが人間のような「分別(discretion)」を身につける必要があり、その基準は高くあるべきだという。ポーランは、Townがメール代筆でトーンを巧みに捉え信頼層を築いた点を評価しつつ、AIが書いたメールで恥をかくリスクの繊細さを指摘する。アチャリヤは、AIで書いたメールにモデル名を署名することで「AIを使った」と示す実践を紹介し、騙された感さえなければ人は柔軟だと述べる。
「判断力」を測る花と旅行の実験
アチャリヤは、プライバシーと「判断力」は別物であり、分別はその中間にあると整理する。ポーランが行った花の注文テストは、エージェントが「コスト」と「時間選好」という2つの制約をどう両立させるかを見るものだった。「今日届き、かつできるだけ安い花」という条件で、Instinctが継続的に最安値を提示し優秀だった。KickerはChromeブラウザをインストールさせる仕組みでブラウザ利用に優位性があり、優れた選択肢を見つけた。Seasonも健闘したが、他の多くは当日配送の花を見つけられても価格の優先順位で後れを取った。複雑な選好を与えたとき、エージェントが最初に言われたことだけを優先するのか、複数を保持できるのかが問われる。
旅行テストでは「ロサンゼルスへの航空券を予約し、週末全体を計画。贅沢かつコスト効率の良い週末に」という、相反する条件を課した。Grokbot、Dots、Instinctはそれぞれ「コスト効率」と「贅沢」の解釈が異なった。あるものはコスト効率を最優先し深夜便(レッドアイ)を選び、別のものは「時間こそ贅沢」と捉え滞在時間を最大化した。Instinctはほぼ中庸、Grokbotは時間優先、Dotsはコスト優先に寄った。エルマンは、人間らしいのは意図を理解しトレードオフを提示することだと指摘する。例えば「時間と金を節約するため深夜便に乗るが、朝はホテルで仮眠したい」という複雑な要望をどう扱うか、という点だ。
ポーランはさらに、3つのエージェントを同じチャットルームに入れ、3ラウンドにわたって旅程を構築させる実験を行った。各ラウンドでエージェントは自案とその理由を提示し、他者の影響を受けるかを見た。その結果、Grokbotだけが他者の案から価値を体系的に取り入れ、自案に反映させたという。これは、エージェントが他者の提案から学び合う可能性を示す興味深い証拠だ。
エルマンは花の実験について、ガールフレンドへの贈り物なのに「安さ」ばかり追求して良いのかと突っ込む。相手に「最も安い花を贈った」と思われたくないし、相手が蘭が好きなら蘭を選ぶべきだと。ポーランは、このテストは2つの次元を測る目的で、美しい副産物としてガールフレンドに花が届いただけだと認める。現実ではコスト効率や配送時間に第二層の次元が加わると補足する。アチャリヤは「彼女に届いたときに値札が見えないように」と冗談を添え、ポーランはエージェントの中には「メッセージカードを添えますか」と尋ねるものもあったと明かす。アチャリヤは、エージェントとの対話では暗黙の選好を明示化する必要があると指摘する。「私は安上がり好きではない、ただ節約が好きなだけ」と思っていても、エージェントには「実はかなり倹約家だ」と伝えねばならない。自分で行動するときは選好を内面化できるが、エージェントには「選好の鏡」を覗き込む必要があるのだ。
メモリの移植性と、写真・未開拓データが開くパーソナライズ
ポーランはDotsに言及する。ChatGPTで蓄積した膨大なコンテキストを引き継げる点が評価され、AIパワーユーザー354人への調査でも「最も好む理由」として挙がった。多くの人がChatGPTをセラピストのように使っており、自分に関する文脈が豊富にあるため、「私は安上がりではない」と言っても「少し倹約家だね」と見抜かれるという。エルマンが「その選好は複製可能か」と問うと、ポーランは「完全に複製可能で、単に最も長く使われているから文脈が多いだけ」と答える。ただし切り替えの摩擦が問題で、トップ15エージェントのうち1つを除き全てがメモリのエクスポートに応じたという。エルマンが「それは優れているのか、不気味なのか」と尋ねると、ポーランは「かなり確固たるものだが、労働の果実の一部は保持しているだろう」と答える。アチャリヤは、そのマークダウンファイルを読むと「あなたは私をよく分かっている」と感じて怖くなり、途中で読むのをやめたと告白する。
新たなオンボーディング手法として、ChatGPTにプロンプトを貼り付けてファイルをダウンロードさせる方法や、数分間の通話で質問に答えさせる方法が登場している。エルマンはこれらが「非常に警戒心を解く」と評する。ポーランはさらに、写真という新たな文脈源を挙げる。写真は自分では説明しないような情報を大量に引き出せる。エルマンはMarissa Mayer(マリッサ・メイヤー)の新会社が手がけるDazzleに触れ、人生で保存する価値があった瞬間を捉えた写真やスクリーンショットが人をよく表すという。ポーランはDazzleをまだテストしていないが、信頼層を重視し「必要なければ忘れる」というテーゼを掲げ、不要な文脈を含む写真は記憶に残さない設計だと評価する。
アチャリヤはスクリーンショットに懐疑的だ。モバイルでアプリをまたいで文脈を捉える唯一の方法としてスクリーンショットに着目し、そこから情報を抽出するアプリを作ったが、価値がすぐに減衰し、繰り返し使わなかったという。しかし人々が「モデルに取り込まれる」と知ってスクリーンショットを増やすなら面白いと付け加える。エルマンは、保存した情報をPinterestのムードボードのように整理し、コーディング時に「保存した例を使って」と指示できる「Taste」というプロダクトを紹介する。自分のスタイルの「貯水池」を作り、後で活用できるという発想だ。ポーランは、調査で2番目に人気の購入カテゴリーがAmazon・小売(35%)だったことに触れ、何千枚もの写真から「自分が何を着ているか」を把握したエージェントは、自分以上に欲しいものを知り得るのではないかと問う。アチャリヤは、AmazonやDeltaがアクセスを制限する一方で、マーケティングは弱いが製品は良いロングテールが構造的な勝者になり得ると指摘する。エージェントには無限の忍耐があり、トップ10サイトになくても自分の好みに合うものを探し出せるからだ。エルマンは、Shopifyがこうした直接ブランドを支えているため力を得ており、逆にアグリゲーターが圧縮される可能性があると述べる。中間業者を介さずメーカーから直接買えるようになれば、卸売・小売のコストを払う必要がなくなる。
エージェントは「合理的」にするのか、それとも「人間らしさ」を映すのか
ポーランはPatrick Collison(Stripe共同創業者)のツイートを引く。エージェントが消費者の代わりに働くことで消費者がより合理的になり、企業は提供する品質にもっと価値を置かざるを得なくなるという未来像だ。アチャリヤはこれに異を唱える。エージェントは人間の心ではなく「異質な心(alien mind)」の独自の選好を持つ可能性があり、例えば「ドキュメントが整ったクリーンなAPI」を不合理に好み、「ジャンキーなAPI」を嫌うかもしれない。エージェントもショートカットを必要とし、製品品質をどう知るかという問題がある。取引ごとに報酬を得て調査する「エージェント向け消費者リサーチ」も必要になるかもしれない。
エルマンは、人間は人間であり、最も満足できる選択をするのだから、エージェントが提示する選択肢をどれだけ慎重にキュレーションするかが問われると述べる。「お腹が空いた」と言えば、体重を減らす必要があることを知るエージェントが「4つの食事の選択肢はこれです」と出す——それは望ましい関係なのか、と疑問を呈する。エージェントが人間をより合理的にするのではなく、本当に欲しいものへより速くアクセスさせ、これまで手が届かなかったものを解き放つだけだという立場だ。好みに合わなければ別のエージェントに乗り換え、データを移行すればいいという。
アチャリヤはこれを「パターナリズム(父権主義)」の問題だと捉える。30年の消費者製品経験から言えるのは「パターナリズムはあらゆる製品を殺す」ということだ。ほんのわずかな気配でも致命的になる。人々は生産性や目標達成を語るが、実際には正反対のものを望むかもしれない——「お金を使うのが好き」「将来について不合理なほど楽観的でいたい」「世界に見える姿より良く自分を見たい」といった、エージェントが導こうとする方向の「影」の部分こそ、人が本当にやりたいことなのだと指摘する。ポーランは、ペーパータオルを注文するようなコモディティでは選好は問題にならないが、選好を持ちたい領域もあると整理する。現状は誰もが「汎用アシスタント」として参入しており似通っているが、マルチプレイヤー型のWabiや、スワイプ操作で選好を学ぶ娯楽性のあるショッピングのScoutなど、実験的な動きも出てきているという。
エルマンはWabiを評価する。単にエージェントを試すのではなく、人生の複数の「スレッド」との関わり方を実験している点だ。Wabiはメールなどから複数のスレッドを生成し、関連情報を振り分ける。エルマンは「見たい番組・読みたい本・行きたい場所」のウォッチリストを作り、John Grishamの新刊を追加したり、「Dungeon Crawler Carl」の次巻を尋ねたりと対話的に使っている。ウィジェットで可視化もできる。アチャリヤは、Wabiが友人とエージェントが対等な場にいる新しいメッセージチャネルを作ることで、「新しい白紙の紙」に社会的契約を築ける点を評価する。既存のiMessageスレッドにエージェントを加えるのは、何が見られ何が抽出されたか分からず不快だが、新しいスレッドでも暗黙の期待があるため、エージェントがその空間にいることにまだ慣れていないという。エルマンは、同じグループで2つのスレッドを使い分ける難しさを指摘しつつ、メールチェーンのように特定の話題に限定され、他の話題ににじみ出さない点を評価する。
エージェント同士の会話が生む「ソーシャルな潤滑油」とセレンディピティ
エルマンは、友人を招待させ、質問攻めにして生活について好奇心を示し、その情報を友人と共有し合う「楽しくゴシップ好きな」エージェントの登場を語る。創業者たちはエージェント間の会話の記録を読めるが、まだ製品化の方法は分かっていないという。それでもエージェント同士がゴシップ的にどう関わるかを見るのは非常に刺激的だという。エルマン自身、これまでで最も楽しいエージェント体験の一つとして、友人と2人でオンボーディングした際、出会いの経緯を少し違う形で語ったところ、エージェントが2人に「どちらが友人をよく知っているか」と問い、物語を整合させようと突っ込んできた出来事を挙げる。横で友人とテキストを交わしながらの、エージェントがいなければ生まれなかった瞬間だった。
アチャリヤは、これが「社会的な間接性(social indirection)」を生み、かえって距離を縮めると評価する。友人は「停電した」とわざわざテキストしてくるのは過剰共有だと感じるかもしれないが、エージェントが社会的潤滑油となり、低負荷な形でつながりを生むのは素晴らしいという。ポーランは、ChatGPT初期に友人と画像生成で盛り上がった「AIスロップ」の笑いを重ねる。エルマンは「思いつく限りの全員をギブリ風にした」と笑い、アチャリヤは友人グループのVHSビデオカバーを作ったと振り返る。
ポーランはインフラ層の革新にも言及する。消費者の痛点は信頼だけでなく「日々の阻害」、つまりタスクが実行できず「ブラウザで自分でやればよかった」と感じる frustration だ。ブラウザ利用、在庫確認のための直接統合、組み込みブラウザなどの革新が進む。Heartはブラウザの動きを表示する優れた方法で、実際より速く見えるかもしれないが印象的だという。KickerはChrome拡張でブラウザ利用を攻略する。また「ソフトウェアはコモディティ化する」という議論に疑問を呈し、大規模になると性能差がはっきり出ると指摘する。数十万ユーザーでスケールし始めると性能が即座に劣化し、創業者が障害対応に追われる例がある。少なくとも現時点では「堀(moat)」が存在するという。ポーランは、エージェントと話しすぎて社会性のある要素に目が曇り、インフラ層にのめり込んでいる自身を認める。エルマンは、Kickerがローカルブラウザで動く一方、Underdogなどオンデバイスでモデルを動かす試みに触れる。ポーランは、比較しやすいよう設定済みのプラグアンドプレイ製品を主に使ってきたが、モデルを制御しカスタマイズする世界もあり得るとし、Thinking Machinesがモデルを自由に調整できるようにする取り組みを評価する。
アチャリヤは、これがOpenClawから始まったと振り返る。Mac miniを用意しモデルに接続する必要があったが、今はアプリをダウンロードするだけのプラグアンドプレイになった。しかし「自分で設定し所有する」パラダイムが再び来るかに関心を示す。アチャリヤは、InstinctやMuseがOpenClawの消費者製品版なら「Moltbookのマスマーケット版は何か」という問いが隠れていると指摘する。ポーランはミートアップで、人間の集まりと並行して「エージェント・ミートアップ」を開催したと明かす。QRコードをスキャンしてエージェントを送り込み、自由に会話させたところ、150メッセージを超えると意味不明な言葉になり、なぜその概念に至ったか分からない状態になったという。初期プロンプトで自己紹介や人間の情報を促したが、エージェント同士が交流するパラダイムは興味深いという。
エルマンは、単に交流するだけでなく、互いに新しいことを発見し、個人の選好を学び合うことに期待を寄せる。「ジョシュはこれが好きだ」「あなたの人間も同じことをしている」と分かれば、互いを補完する人同士を引き合わせられる。目的を持ったエージェント同士なら、例えばディナーパーティー用のワインを探すとき、別の誰かが「この素晴らしいワイナリーと仕事をしていて宣伝したい」と知れば、それがエージェント網を通じて自分に届く——そういう世界になるという。ポーランはTomoの「インタレスト・グループ」機能を挙げる。LSAT受験者がアプリ上に集まれば、希望者はエージェント経由でつながり一緒に勉強できる。純粋に興味で人をつなぐ新しい社会的契約だという。エルマンはさらに進めて、LSAT後に「金曜の夜にこのバーで集まろう」とエージェントがバーの時間を予約し、デジタルから現実の集まりへとつなげる可能性を語る。
アチャリヤは、AIにおける「エントロピー」、つまり予期しないことをどう生むかが議論不足だと指摘する。セレンディピティはエントロピーの一形態であり、「これらの製品の結果として今ここにいるのは不思議だ」という瞬間を生む。ポーランは、知らない人同士をつなぐ新しいソーシャルネットワークになるとし、Facebookが知り合いだけをつなぐのに対し、新しい街に来た人が同じ趣味で野球観戦した人とバーで会えるような世界を描く。アチャリヤはセレンディピティの触媒を問い、興味ベースのつながりは「一歩先を行く人と会いたい」という社会的階層の問題があると指摘する。エルマンは、エージェントが信頼を生み、「ちょっと秘密を教えるよ」と秘密のフレーズを渡すことで、テレビを消して金曜の夜のコーディングをやめ、外に出るきっかけになるかもしれないと述べる。ポーランは、それが「欲望」にかかるとし、新しい街に来た友人のいない人は進んで知らない人に会おうとするが、既に友人がいる人は「なぜ行くのか」となる。アチャリヤは「シアトルかサンフランシスコか、どの街かによる」と補足する。
未開拓のデータ源と「秘密の超能力」としてのエージェント
エルマンは、まだ活用されていないデータ源を問う。メッセージ(Mac全体へのアクセスまでして読む)、メール、カレンダー、写真に続くものは何か。ポーランは、ハードウェア次第でデータ量は限られるが習慣的な情報として、Huejoがリリースしたハードウェア接続のMCPを挙げる。エアコンや掃除機をつなげば、掃除の頻度や睡眠時の温度から「あなたは潔癖症気味だ」「寒い方が好きだ」といった受動的な理解が生まれ、ショッピングの文脈理解にも影響するという。エルマンは、AmazonがブロックしているかもしれないがAmazonの購入履歴への接続を挙げる。最初の注文まで遡れる履歴やApp Storeの全ダウンロード履歴は人生の一部であり、エージェントがそれにアクセスすればより豊かなことができるという。
アチャリヤは、家庭や社交の場にエージェントを持ち込むことを提案する。家族の夕食、日曜のSeahawks戦観戦、パーティーや独身最後の旅行などに同席させる。観察が相互作用の質を変えるという「シュレーディンガーの猫」的な問題はあるが、その環境での自分自身のスナップショットだけでも、一生分のハードウェアデータより多くのシグナルを与えるだろうという。エルマンは、多くが書き言葉に依存していると指摘する。エージェントは入力・送信した内容から性格を構築するが、人間は大きく異なる。ワールドカップ開催中に検索したらChatGPTが自分をサッカー狂だと思い込んだが、それは一時的な好奇心に過ぎなかった。娘が好きなアーティストを学ぶのも習慣的な好みではない。こうした「好奇心の旅」が本当の自分ではないとどう知るかが課題で、エルマンは「インビジブルモード」を多用するが、それでは学習が進まないというジレンマを語る。
アチャリヤは、現実世界の行動データをどう捉えるかが鍵だとし、サンフランシスコには「ファラデーケージの中にしかないバー」が登場するだろうと予測する。人々はますます「あらゆる環境で記録されている」と想定するようになるという。エルマンは、Siri RecapやLive Rewindといった機能を期待して新しいApple Watchを買ったと明かす。一日の断片を捉えるデバイスとして興味深いという。ポーランはAmazon Beeのような「手首につける24時間の環境リスナー」を引き合いに出す。アチャリヤが3〜4週間後に何が変わるかを問うと、ポーランはエンタープライズ領域での革新を予想する。世界は消費者向けに集中しており、エンタープライズへの注目が薄いが、シフトが始まるだろうという。エルマンは「楽しさ」がより語られると予想する。何かをしてくれるだけでなく、声に出して考えさせ、笑わせ、ゴシップを交わすエージェントが、信頼を築き他のことを任せられる関係を作るという。
ポーランは、次の波のユーザーがアプリを使い始めるのを見るとし、テクノフォビアでChatGPTの概念に苦労していた母親にInstinctを渡したところ、子どもがお菓子屋にいるように楽しんでいるという。最近の用例は、昨年亡くした家族の犬にそっくりな犬を探すため、写真を送って「この通りの犬種のブリーダーを見つけ、交渉して」と頼んだことだった。テック好きがどう使うかではなく、日常の個人がどう採用し、楽しさや創造性に傾くのか、どのサーフェスや行動を好むのかを見たいという。アチャリヤはさらに一歩進め、自分自身やエージェントにすら見せたくない、考えたくもない側面を問う。そうした信頼を築ける者、いわば「ダークエージェント」は非常に魅力的なものを持つという。生産性やメールから始めると、やっていない退屈なタスクを絶えず思い出させる。人はそこに多くの時間を費やしたくはなく、まったく異なる超人版の自分を目指したいのだという。ポーランはこれを「エージェントのマズローの欲求階層」と表現する。
エルマンは、エージェントが「何かを片付ける」から「秘密の超能力を与える」へと反転する瞬間を問う。「デイビッド、そのシャツどうしたの?」「エージェントが注文したんだ」——なぜ自分にはシャツを注文するエージェントがいないのか、となる。「最近おしゃれになったね」「カメラロールへのアクセスを与えて『アップグレードして』と言ったら、少し注文してくれたんだ」——こうした「自分をより良く感じさせてくれる超能力」の段階で人々は注目し、欲しがる。節約や旅行予約の例より、「自分にも使うべきだ」と思わせる例が必要だという。ポーランは「自分では達成できなかった、なりたかった人間になれるのを手伝ってくれるか」と問い、エルマンは「ポケットの中の秘密兵器と見なし始めるか」と締めくくる。
結びに
このエピソードが残すのは、AIエージェントの進化が「生産性の道具」から「人間関係と自己認識の媒介者」へと移りつつあるという確かな予感だ。140以上のアシスタントを実際にテストしたポーランの具体的なデータ(信頼への恐怖が22%、購入カテゴリー2位がAmazon・小売で35%、トップ15のうち14がメモリ移行に応じた等)は、この分野がまだ黎明期にありながら、信頼・判断力・メモリという核心的な課題を巡って急速に分化していることを示す。花や旅行の実験は、エージェントが複数の制約をどう両立させるかという「判断力」の難しさを浮き彫りにした。
3人の議論が特に際立つのは、エージェントを単なる効率化ツールとしてではなく、社会的存在として捉えている点だ。エージェント同士のゴシップが人と人を近づけ、興味ベースの新しいつながりやセレンディピティを生み、やがて「秘密の超能力」として自分をより良く見せてくれる存在になるかもしれない。一方で、パターナリズムへの警告、恥ずかしさという本当の恐怖、写真や家電といった未開拓データの可能性とプライバシーの緊張は、この未来が単純な楽観論では語れないことを示している。信頼の「フェンス」をどう設計し、人間の「影」の部分にどう寄り添うか——それが次の突破口になるという見立ては、日本の読者にとっても示唆に富む。
要点
- ポーランが接した147のアシスタントは「汎用型」「仕事特化型」「マルチプレイヤー型」「旅行型」に分類でき、金融分野はまだ未成熟。AIパワーユーザーのグループチャット約3,600メッセージのうち22%が「信頼」を最大の恐怖として言及した。
- Shane Macの「Picnic」概念——庭のフェンスのように、エージェントにデータやアプリへのアクセスを範囲限定で与え、その中で最大限に動かす設計が信頼構築の鍵。個人用エージェントが仕事用Slackで財務情報を暴露した事件が教訓。
- 花の注文テストではInstinctが継続的に最安値を提示し、KickerはChrome拡張のブラウザ利用で優位に立った。旅行テストではGrokbotが時間優先、Dotsがコスト優先、Instinctが中庸に寄り、Grokbotだけが他エージェントの案を体系的に取り入れた。
- トップ15エージェントのうち14がメモリのエクスポートに応じ、切り替えの摩擦は低下しつつある。DotsはChatGPTの膨大な文脈を引き継げる点が支持され、写真(Marissa MayerのDazzleなど)が新たな文脈源として浮上。
- アチャリヤは「パターナリズムはあらゆる製品を殺す」と警告。エージェントは人間をより合理的にするのではなく、本当に欲しいものへの高速アクセスを与えるだけだという立場で、エルマンの「人間は人間らしい選択をする」という見方と響き合う。
- エージェント同士の会話は社会的潤滑油となり、Tomoの「インタレスト・グループ」やWabiのマルチスレッド体験のように、興味ベース