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The a16z Show · 2026年5月29日

ステーブルコイン、AIエージェント、そしてグローバルバンキングの未来

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • Jeevesは、ラテンアメリカを中心に25カ国で事業を展開する、ステーブルコインとAIを活用したグローバルな財務オペレーティングシステムである。創業者兼CEOのDilee...
  • 本エピソードの核心は、従来は困難とされてきた新興市場向けグローバル金融サービスの構築が、ステーブルコインとAIという二つの強力なテクノロジーによって現実のものとなりつつあ...
  • [0:00] グローバル金融インフラの再構築:断片化された市場への挑戦 Jeevesのビジネスは、国ごとに異なる銀行、決済網、通貨、コンプライアンス要件という、極めて断片...
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出典Podcast

The a16z Show / Andreessen Horowitz

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Jeevesは、ラテンアメリカを中心に25カ国で事業を展開する、ステーブルコインとAIを活用したグローバルな財務オペレーティングシステムである。創業者兼CEOのDileep Thazhmonは、a16zのAngela Strangeとの対談で、同社がどのようにして国ごとに断片化された金融インフラという課題を克服し、大企業向けにスケールしてきたかを詳述した。同社の核心は、自社で構築したレジャーと規制対応の深さにあり、これによりMasterCardのプリンシパルメンバーとして、銀行を介さずに現地発行のカードを提供できる。このインフラ基盤の上に、ステーブルコインによる国際送金の高速化と、AIによる与信審査、カスタマーサポート、経費照合の自動化を組み合わせることで、わずか140名の従業員で30億ドルを超える総処理高(TPV)を処理し、2年前と比較して従業員数を減らしながらも収益を10倍に成長させている。

本エピソードの核心は、従来は困難とされてきた新興市場向けグローバル金融サービスの構築が、ステーブルコインとAIという二つの強力なテクノロジーによって現実のものとなりつつあるという点にある。特にアルゼンチンのように自国通貨の価値が急落する国では、ステーブルコインは単なる理論ではなく、人口の60%が日常的に使用する「生きた体験」である。Jeevesはこの現実を捉え、ステーブルコインをエンドユーザーに直接販売するのではなく、「Jeeves Instant Pay」というブランドで、より高速で低コストな支払い手段として提供している。さらに、AIの活用は同社のビジネスモデルそのものを変革しており、CEO自らが「AIピルド(AIに憑りつかれた)」でなければ生き残れないと断言するほど、全社的な効率化とプロダクト革新の原動力となっている。

0:00グローバル金融インフラの再構築:断片化された市場への挑戦

Jeevesのビジネスは、国ごとに異なる銀行、決済網、通貨、コンプライアンス要件という、極めて断片化された金融インフラの現実から出発している。Thazhmonは、この困難こそが参入障壁(moat)になると語る。「困難であること自体が防御可能なのだ」というのが同社の社内標語である。同社のコアIPは、表層のプロダクトではなく、50から60もの異なるパートナーやベンダーを接続し、その情報を一元化する中間層にある。この中間層を「CMS」と呼び、25カ国にわたる自社レジャーを維持し、24時間以内に各国の明細書を発行する能力は、18ヶ月の開発期間を要した核となるスキルセットである。

カード発行において、Jeevesは「フルプリンシパルメンバー」としてMasterCardと直接契約している。これにより、発行されるカードには「Jeeves Mexico」「Jeeves Brazil」と記載され、間に銀行を挟まない。Thazhmonはカード発行を4つの構成要素に分解する。顧客獲得、プロセッサー、プログラムマネージャー(規制・コンプライアンス)、そしてVisaやMasterCardからの発行BINである。Jeevesは最初の3つを自社スタックで保有しており、メキシコからブラジルに進出する際にはBINだけを変更すればよい。さらにステーブルコインの登場により、単一のBINを国ごとに分割して使用することも可能になり、新規市場への参入コストと時間が劇的に削減された。

このインフラの深さは、顧客体験のシームレスさに直結する。Nubankのような大企業の従業員がブラジル、メキシコ、コロンビアでJeevesにログインしても、全く同じインターフェース、同じカードを目にすることができる。これは、自社で決済レールに直接接続していなければ実現できない。また、自社BINを持つことで、カード利用時の認証(スワイプ時の承認可否)や不正検知の一部を自社で処理できるため、より高度なカードコントロールを提供できる。このように、一見すると地味な「配管工事」とも言えるインフラ構築への投資が、後のプロダクト差別化とスケールを支える基盤となっている。

8:17規制の壁を乗り越える:ライセンスを核とした戦略

金融サービス、特に法人向けでは、規制対応は避けて通れない。Jeevesはミッドマーケットからエンタープライズ企業を直接顧客としているため、彼らの信頼を得るには適切なライセンスが不可欠である。Thazhmonはライセンスを「核となる防御可能な資産」と位置づけ、目指すプロダクトを実現するために必要不可欠なものと定義する。同社はメキシコで規制対象事業者として登録され、送金ライセンスも申請中である。ブラジルでは、預金受け入れが可能な完全な銀行免許を申請しており、これは非常に高いハードルだが、口座を自社で保有するためには必須のステップである。

ライセンス取得には時間がかかるため、Thazhmonは「まずは迅速に市場に参入し、市場シェアを獲得し、その後、ライセンスを積み重ねていく」という戦略をとる。これにより、顧客から見たプロダクト体験はシームレスに保ちつつ、バックエンドでは徐々に自社ライセンスに移行し、プロダクトの質とマージンを向上させることができる。実際、Jeevesのマージンは2年前の40%から現在80%以上に拡大している。これは、インフラと規制のカバレッジを自社で保有することで、仲介業者に支払うコストを削減し、利益の大部分を自社に取り込めるようになったためである。

しかし、このプロセスは決して容易ではない。Thazhmonは「国ごとに、一つずつ進めるしかない」と述べ、現在の事業地域においても、目標とするステージに到達するにはさらに4〜5のライセンスが必要だと認める。この規制への深いコミットメントは、単なるコンプライアンス対応を超え、同社のビジネスモデルそのものを支える戦略的な柱となっている。

10:09エンタープライズへのフォーカス:逆張りの戦略とプロダクトの進化

多くのフィンテック企業が小規模企業から始めて徐々に大企業へと顧客層を拡大するのに対し、Jeevesは逆のアプローチをとった。2023年、同社は「強制的な集中」の年に、小規模事業者からの収益性の低さに直面し、思い切った決断を下す。従業員数を減らしながら収益を10倍に成長させるという目標の下、ミッドマーケットとエンタープライズ企業へのフォーカスを明確にし、一部の小規模顧客との取引を解消(debank)した。この決断がなければ、現在の成長はなかったとThazhmonは振り返る。

エンタープライズ企業にフォーカスした結果、プロダクト戦略も変化した。2023年以前はカードと与信商品が中心だったが、エンタープライズにとっては支払い(ペイメント)のボリュームがカードのそれをはるかに上回ることに気づく。買掛金(AP)は法人カード支出よりもはるかに大きなウォレットシェアを占める。そこでJeevesは口座とペイメント機能を中核に据え、カードはあくまで最初の入り口(ランディングプロダクト)として位置づけ直した。現在、同社は顧客の年間収益に応じて1,000万レアルから1億レアルのセグメントをターゲットとしており、それ以下の企業は原則としてオンボーディングしない。

この戦略の成功例として、Nubankとの取引が挙げられる。JeevesはまずカードでNubankにリーチし、その後、国ごとに異なるセカンドプロダクトをクロスセルする。メキシコやコロンビアではペイメント商品「JeevesPay」へと進むが、ブラジルでは旅行関連プロダクトが強い。ブラジルは世界でも有数の不正率の高さを誇るため、自動的に利用を停止できるシングルユースカードへの需要が高く、JeevesはカードAPIを提供している。このように、グローバルでありながら完全にローカライズされたプロダクトスイートを持つことが、大企業の多様なニーズに応える鍵となっている。

15:07ステーブルコインの現実:ラテンアメリカにおける「生きた体験」

ステーブルコインは、Jeevesにとって単なる技術的トレンドではなく、ラテンアメリカ市場における「生きた体験」である。Thazhmonは、アルゼンチンでは人口の60%がステーブルコインを使用していると指摘し、これは人々に使い方を教える必要がないことを意味する。米国のように安定した自国通貨を持つ国とは異なり、ラテンアメリカの多くの国では、ドル建てのステーブルコインは通貨暴落からの保護手段として、極めて実用的な価値を持つ。

Jeevesは、この現実を捉え、自社のインフラをステーブルコインに適応させた。同社は自社レジャーを維持しているため、USDCと米ドルで別々のレジャーを持つ必要がなく、同一のシステムで処理できる。GENIUS Act(米国のステーブルコイン法案)の可決を契機に、Thazhmonは創業者主導で全社をステーブルコインへとシフトさせる決断を下した。現在、同社の国際送金の50〜60%以上がステーブルコインで決済されており、これがTPVを2年前の4億ドルから現在30億ドル以上へと押し上げる原動力となっている。

興味深いのは、Jeevesがエンタープライズ顧客に対してステーブルコインを直接販売していない点である。代わりに「Jeeves Instant Pay」というブランドで、より高速な支払い手段として提供する。CFOにとって重要なのは、技術の詳細ではなく、資金が確実に届くかどうか、そしてコストが既存の手段より優れているかどうかである。Jeevesは、既存のプロダクトで築いた信頼を基に、この新しい決済手段を販売している。従来の国際送金(Swift)と比較すると、ステーブルコインを利用した場合、メキシコから米国への送金は、現地での資金回収後、即座にUSDCが発行され、米国側でのACH支払いが最も時間のかかる工程となるが、それでも従来の1〜2日から1時間へと大幅に短縮される。

19:35ステーブルコインカードと新市場開拓のブループリント

Jeevesは、アルゼンチンでステーブルコインカードをローンチする計画を発表した。これは、同社の長年の目標である「複数の国で機能するグローバルなビジネスバンク」の実現に向けた重要な一歩である。従来、新たな国に進出するには、現地法人の設立、現地発行ライセンスの取得、資金回収手段の確保などに8ヶ月と50〜70万ドルのコストがかかった。しかし、ステーブルコインを活用することで、このプロセスは大幅に高速化・低コスト化される。

アルゼンチンでは、アルゼンチンペソでの支払いを受け付けると同時に、即座にUSDCに変換される。これにより、顧客は瞬時に為替変動リスクから保護される。さらに、このUSDCを基に法人カードを発行し、予算管理、承認フロー、チーム管理、カードコントロール、不正対策といったJeevesのオペレーティングシステム全体を提供する。このカードの最大の特徴は、アルゼンチン国内で利用しても為替手数料(FX fee)がかからない点である。50名の従業員を持つミッドマーケット企業にとって、2%の手数料が従業員一人ひとりのコーラ購入に発生するのは現実的ではない。

Thazhmonは、このアルゼンチンモデルを「ブループリント」と位置づける。例えばペルーのように、市場規模が小さく、これまで誰も経費管理スイートをローンチしようとしなかった国でも、このモデルを適用すれば、わずか2〜3人の営業担当者を配置するだけで、10社の顧客を獲得すれば採算が取れる市場となる。つまり、ステーブルコインは、従来は経済的に成立しなかった小規模市場への進出を可能にし、Jeevesのアドレス可能な市場を劇的に拡大するのである。

22:21AIによる業務効率化とスケールの実現

AIは、Jeevesのビジネスに不可欠な要素となっている。同社の従業員数は2年前の200人から現在140人に減少しているが、収益は10倍、取扱高は8倍に成長した。Thazhmonは「これはAIなしでは不可能だった」と断言する。AIが最も顕著な効果を発揮しているのは、書類処理に関連する機能である。与信審査チームは現在わずか4名で、23億ドルのTPVを処理している。2年前であれば、これを始動させるだけでも15名が必要だった。AIモデルが自己学習し、データに追いつくようになったことで、少人数の優秀なチームで複数の地域をカバーできるようになった。

カスタマーサポートも同様である。Jeevesは自社開発のチャットボット「Lenora」を導入し、複数の言語での問い合わせに対応している。しかし、ここでもローカライゼーションの重要性が浮き彫りになる。例えばブラジルでは、数字のカンマとピリオドの使い方が日本や米国とは逆であり、OCR(光学文字認識)の訓練にはこのような文化的なニュアンスを組み込む必要があった。このような特殊な訓練こそが、Jeeves独自の価値であり、競合との差別化要因となる。

さらに、JeevesはAIエージェントの販売も開始している。最も顧客の反応が良いのは、経費照合(reconciliation)エージェントと、GLコード(総勘定元帳コード)を自動付与するエージェントである。エンタープライズ企業では、全ての取引にコードを付与してERPシステムで読み取れるようにする専任の担当者がいるが、JeevesのAIエージェントはこれを99%以上の精度で自動化する。Thazhmonは、自社が12カ国、60以上の銀行口座を持つ複雑な財務体制を運用していることから、自社の財務チームが価値を認めたプロダクトは、同じような課題を持つ他社にも販売できると確信している。

27:45創業者の進化と組織文化:リレントレスネスとAIへのコミットメント

Thazhmonは、グローバルビジネスを構築する創業者にとって、6〜8ヶ月ごとに自身の「スーパーパワー」を再発明する必要があると語る。創業当初は、とにかくラテンアメリカでカードを使ってもらうこと(spend)だけに集中した。次に収益、そしてマージンへと焦点を移し、現在はプロダクトとエンジニアリングに多くの時間を割いている。CEOの役割は、会社が次のステージに進むために必要な機能を自ら担い、その後、自分より優れた人材を採用することである。AIの登場により、この「70%の習熟度」を様々な機能で達成することが容易になったとThazhmonは指摘する。

人材採用において、Jeevesは「リレントレスネス(執拗さ、 relentless)」を最も重視する。同社のビジネスには確立されたプレイブックが存在せず、25カ国で複数のプロダクトスタックを立ち上げるという前例のない挑戦をしている。この環境に適応できるかどうかは、入社後1週間で明らかになるという。同時に、第2サイクルのリーダーシップとして、BrexからCROを、Capital Oneからリスク責任者を、Payoneerを上場に導いたCFOを迎え入れるなど、経験豊富な人材の獲得にも成功している。

そして何より、ThazhmonはCEO自身がAIに深くコミットすることの重要性を強調する。「もしあなたがAIピルドでなければ、生き残れない」と断言し、AIへの取り組みは外部に委託したり、Chief AI Officerを雇うだけでは不十分で、そのエネルギーとペースはCEO自身が作り出さなければならないと主張する。彼自身、OpenAIのo1がリリースされるとすぐにJeeves用の最初のo1を自ら構築し、社内のWhatsAppチャンネルで共有した。この行動が、社内の他のメンバーにも「自分たちにもできる」という感覚を与え、AI導入の文化を醸成している。

25:04未来予測:プログラム可能なマネーとエージェントの融合

Thazhmonは、今後2〜5年の間に、Jeevesのインフラ全体がステーブルコイン上に移行すると予測する。現在、同社は各国の通貨(ペソ、レアルなど)で資本プールを維持しているが、将来的には単一のUSDCまたはUSDTのプールを保持し、必要な時に現地通貨をミント(発行)する方式に移行することで、資本コストを大幅に削減できると考えている。また、同社が処理する数十億ドル規模のTPVを基にした売掛金をオンチェーンで担保化し、USDCで資金調達する可能性も模索している。

さらに、AIエージェントとステーブルコインの融合が、マネーを「プログラム可能」にする未来を描く。エージェントがMCP(Model Context Protocol)やCLI(Command Line Interface)を通じて自律的に購買を行う世界では、マネー自体がプログラム可能である必要がある。Jeevesはすでに、経費照合エージェントとGLコード付与エージェントという二つのエージェントを提供しており、これらはエンタープライズのバックオフィス業務を根本から変える可能性を秘めている。Thazhmonは、ステーブルコインとエージェントの収束点にJeevesが位置し、プログラム可能なマネーの未来を切り拓く存在でありたいと語る。

結びに

本エピソードが最も強く印象づけるのは、ステーブルコインとAIという二つのテクノロジーが、従来は「難しすぎる」「コストがかかりすぎる」とされてきた新興市場向けグローバル金融サービスの構築を、現実的かつ収益性の高いビジネスへと変えたという事実である。Dileep Thazhmonの語る「困難であること自体が防御可能なのだ」という言葉は、単なる標語ではなく、規制、インフラ、ローカライゼーションという一つ一つの困難に正面から取り組んできたからこそ築かれた、深い参入障壁の本質を言い当てている。そして、CEO自らが「AIピルド」となり、全社的なAI導入を推進する姿勢は、既存企業がAIネイティブ企業にどのように対抗すべきかについて、一つの明確な答えを示している。このエピソードは、フィンテックの未来が、グローバルな視野と、テクノロジーへの深い理解、そして何よりも「執拗さ」を持った起業家によって切り拓かれることを、力強く示している。

要点

  • Jeevesは25カ国で自社レジャーを維持し、MasterCardのプリンシパルメンバーとして銀行を介さないカード発行を実現しており、このインフラの深さが競争優位性(moat)となっている。
  • 同社のマージンは2年前の40%から80%以上に拡大。これは自社でインフラと規制ライセンスを保有することで仲介コストを削減した結果である。
  • アルゼンチンでは人口の60%がステーブルコインを使用しており、Jeevesはこれを「Jeeves Instant Pay」としてブランド化し、エンドユーザーに技術の詳細を意識させずに高速な国際送金を提供している。
  • ステーブルコインを活用した新市場参入コストは、従来の8ヶ月・50〜70万ドルから大幅に削減され、ペルーのような小規模市場でも採算が合うビジネスモデルが可能になった。
  • AIの導入により、与信審査チームは4名で23億ドルのTPVを処理。従業員数は200人から140人に減少したが、収益は10倍、取扱高は8倍に成長した。
  • JeevesはAIエージェント(経費照合、GLコード付与)をプロダクトとして販売しており、自社の複雑な財務運用経験を活かしてエンタープライズ顧客の課題を解決している。
  • CEOのDileep Thazhmonは、創業者は6〜8ヶ月ごとに自身のスーパーパワーを再発明し、AIへのコミットメントはCEO自身が示さなければならないと主張する。
  • 将来、Jeevesは全インフラをステーブルコイン上に移行し、売掛金のオンチェーン担保化や、AIエージェントによるプログラム可能なマネーの実現を目指している。