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No Priors: Artificial Intelligence | Technology | Startups · 2026年11月5日

トークン化、エージェント型取引、Harmonic:Robinhood CEO Vlad Tenevが語る所有権拡大の使命

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • RobinhoodのCEO兼共同創業者であるVlad Tenev(ヴラド・テネフ)は、このポッドキャストで自社を「所有(ownership)の会社」と一言で定義する。株式...
  • この対話はSarah Guo(Conviction創業者)がホストを務め、テネフの生い立ちからHarmonicという数学的超知能スタートアップの構想、トークン化戦略、エー...
  • [0:46] 所有というミッションとテネフの原体験 テネフはRobinhoodを「所有の会社」と位置づけ、その意味を個人と集団の二層で説明する。個人レベルでは、資産を蓄積...
出典Podcast

No Priors: Artificial Intelligence | Technology | Startups / Conviction

この番組のほかの回

RobinhoodのCEO兼共同創業者であるVlad Tenev(ヴラド・テネフ)は、このポッドキャストで自社を「所有(ownership)の会社」と一言で定義する。株式をゼロ手数料で買えるシンプルなアプリから出発したRobinhoodは今や120カ国以上で事業を展開し、株式・暗号資産・予測市場・プライベート企業への投資・ブロックチェーン・AIエージェントによる取引までを包含する金融コングロマリットへと変貌した。テネフの主張の核心は、所有が個人の資産形成の王道であるだけでなく、広範な所有なき社会は本質的に不安定で脆弱だという社会哲学にある。人々が何かを所有すればするほど、そのシステムの結果に対して当事者意識を持ち、システムの擁護者になるからだ。特にAIによる破壊が進む現在、人々が企業をより早い段階で所有できるようにすることの重要性が増していると彼は語る。

この対話はSarah Guo(Conviction創業者)がホストを務め、テネフの生い立ちからHarmonicという数学的超知能スタートアップの構想、トークン化戦略、エージェント取引の実績、そしてAI革命における所有の民主化までを縦断する。テネフはブルガリア生まれで、共産主義崩壊後のハイパーインフレ(1991年に170%、1997年には年率2,000%とも語られる)を幼少期に経験し、祖父母が給料を銅製の調理器具に交換して資産を保全していたという逸話を披露する。この原体験が「壊れたシステム」への理解と、健全な資本市場の価値への確信を形成した。数学者としての経歴(Terrence Taoの下での研究)とHFT(高頻度取引)の経験を持つテネフが、なぜ「使命(missionary)」とも言える金融民主化の道を歩むのか、その来歴と現在の事業構想が有機的につながる濃密な議論となっている。

0:46所有というミッションとテネフの原体験

テネフはRobinhoodを「所有の会社」と位置づけ、その意味を個人と集団の二層で説明する。個人レベルでは、資産を蓄積することが経済的自由への最も確実な道であり、何を所有するかは自動車コレクションやトレーディングカード、株式ポートフォリオのように個人のアイデンティティの一部にさえなるという。集団レベルでは、広範な所有なき社会は本質的に不安定で脆弱であり、より多くの人が何かを所有すればするほど、その人々は結果に対してより強い利害を持ち、システムの擁護者・保護者になるという社会安定の論理を展開する。テネフはこれを「Trump accounts(年齢ゼロからの所有)」「Robinhood Ventures(上場前のプライベート企業の所有)」「トークン化(所有のグローバル化)」という三つの具体策に接続させる。

この使命の起源はブルガリアでの幼少期にある。1980年代末の東欧で生まれ、ソビエト連邦崩壊と鉄のカーテン撤廃の瀬戸際に育ったテネフは、父がUniversity of Delawareの修士課程に進む機会を得たことで米国へ移住する。しかし家族全員を送る資金がなく、彼は1年半父に、6カ月母に会えない時期を祖父母と過ごした。1991年のブルガリアのインフレ率は約170%で、停電の中で家族が電池式ラジオに集まり、窓から見える食料品店の牛乳と卵の行列を眺めていたという記憶を語る。牛乳は大きなビニール袋で売られ、年に一度だけ他の共産圏諸国からバナナが届き、キューバ産のバナナは素晴らしかったが、米国に来るとバナナはどこにでもある代わりに味は劣ったという描写は、物資の希少性と豊かさの対比を鮮やかに示す。

さらに1997年に移住した後も、ブルガリアは年率約2,000%という世界最悪のインフレ率を記録し、数カ月ごとに通貨にゼロが追加されていた。祖父母は資産を銅製の調理器具で保有し、祖父は造船・海軍産業の医師として港に人脈を持ち、給料を得るたびに銅鍋に交換していたという。テネフはこれを「自分が実際に出会った最初のリアルワールドアセット投資」と表現する。通貨よりはるかに価値が保たれる鍋やフライパンを closet に積み上げるという行為は、健全な資本市場なき世界で人々がどう資産を守るかという生々しい実例である。

学業面では、両親が複数の仕事を掛け持ちし父はフルタイムの大学院生だったため、テネフは極めて独立心が強く育った。幼稚園の5歳時には一人で下校し、隣人の家を訪ねて数時間預けられ、やがて鍵を渡されて自分で宿題をして外で遊ぶようになった。両親は「家族の経済状況は非常に不安定で、大学に行くには奨学金が必要、そのためには非常に良い成績が必要、しかもビザ保有者だから仕事を失えばブルガリアに送還される」と繰り返し伝えたという。この成功へのプレッシャーと、数学という「達成の梯子」を登る感覚——より難しい課題へどれだけ早く進めるかというゲーム的な魅力——が、彼を大学院での数学研究へと導いた。新しい数学理論を創れば数百年後も子供たちが自分の仕事を学ぶかもしれないという動機は、後にHarmonicの構想と共鳴する。

12:25Harmonicと数学的超知能、集中vs分散の発見

テネフは数年前に共同創業したHarmonicについて、数学的超知能の構築を目標とするスタートアップだと説明する。昨年同社はAristotleというモデルを開発し、International Math Olympiadで金メダルを獲得した3モデルの一つとなった。その後一般公開され、ユーザーが未解決の数学問題に取り組み、Erdos問題の解決や新しい結果の導出に使われたという。テネフはAIによる数学の変化を「非常にエキサイティングかつ予測可能」と評する。AIモデルの台頭と出力検証能力の組み合わせが数学パイプラインの自動化を可能にしたからだ。彼が大学院生だった頃、数学の研究は主にチョークと黒板を使った対面作業で、コンピュータすら使われていなかったが、今や数学はコーディングと融合し、バージョン管理やLeanによる検証といった同じツールを使い、分野全体が急速に加速している。

しかしテネフが最も強くこだわるのは、この波が「あまりに集中しすぎている」という点である。大規模データセンターを持つAI企業の従業員が秘密のモデルを使って作業する構図に対し、彼はより魅力的で最終的に勝つモデルは、ツールを人々の手に渡し、ユーザー自身が興味深い発見や発明をするようにすることだと主張する。これはRobinhoodにも通底する「個人をエンパワーする」という設計思想の延長にある。ホストのSarah Guoはここで意図的に反論を投げかける。大規模集中型AI企業の関係者なら「それは負け犬の遠吠え(cope)で、Centaur的なアプローチはより多くの計算資源とエージェントループに打ち負かされる」と言うだろうと。これに対しテネフは論点を二つに分ける。一つは個人数学者の役割、もう一つは製品を誰が作るかという問いだ。

テネフがより興味深いとする後者について、彼はAIラボが専有的に全ての発見を行い、OpenAIやAnthropicのデータセンターがコードを走らせ、従業員が管理し、垂直統合して薬を製造・販売し、数学的・物理学的発見を全て行って論文を発表し、それら全てをAIラボ自身が所有する世界を「ややディストピア的な結果」と評する。そして技術的・市場的理由だけでなく、それが一定程度実現すれば人々はAIラボの「営業許可(license to operate)」を剥奪するだろうと予測する。同じNavier-Stokes方程式の証明やリーマン予想の部分的解決でも、無名の一般人がツールを使って成し遂げた方がはるかに受け入れられ、称賛されるというのが彼の見立てだ。さらにAIラボに入る多くの人が元研究者で、研究をしたくて入ったのに学界から批判されることに戸惑っていると指摘し、数学者と協働して「暗いデータセンターが全ての発見を独占する」という印象を避けるべきだったと、企業関係者にも直接伝えていると明かす。

18:49トークン化とRobinhood Chain——所有のグローバル化

テネフはトークン化をステーブルコインの仕組みに喩えて説明する。ステーブルコインはドルや国債をラッパーに入れて箱に収め、その箱に対してトークンを発行・償却する。伝統的資産は銀行などの伝統的機関にカストディされ、トークンはDeFi上で自由に取引され、世界中を移動でき、端数取引が可能で、様々なプロトコルやレンディングプールでスワップできる。この概念をあらゆるリアルワールドアセットに拡張できるという。株式を箱に入れてトークンを発行すればブロックチェーン上でインターネット全域を取引でき、プライベート企業なら株式の代わりにSPVを用い、償還などの細部に若干の違いはあれど同様に機能する。アート、コレクティブル、不動産にも応用可能だ。

Robinhoodは昨年南仏のイベントで米国株のトークン化版であるstock tokensを欧州で立ち上げたが、当初は完全なDeFi対応ではなく、欧州顧客が取引でき実株のように感じられても、Ethereum上に送ってプールに入れたり他のスマートコントラクトと組み合わせたりはできなかった。今年は完全なDeFi対応で再ローンチし、リアルワールドアセット向けに設計した新ブロックチェーンRobinhood Chainと同時に展開した。テネフによればRobinhood Chainは多くの指標で史上最速で成長するブロックチェーンの一つとなり、開発者活動で第1位とも発表したという。開発者はstock tokensを「レゴブロック」のように扱い、ミームコインとstock tokenを組み合わせたプール資産やNFTなど、様々なスマートコントラクトを構築し始めている。これはまだ1~2カ月目の活動に過ぎないと彼は強調する。

テネフがトークン化以上に興奮を語るのが、Robinhood Chainが「国のロングテール」を可能にする点だ。南米やアフリカなど、十分に機能する資本市場や金融システムを持たない国の人々でも、スマートフォンとノンカストディアルウォレットさえあれば、極めて低コストで米国市場へのエクスポージャーを得られる。ステーブルコインがこうした国の人々にとってドルへのアクセスの既定手段になったのと同じように、stock tokensが米国株への既定手段になるという。ホストの「銅の鍋だけでなく富の創造にもアクセスできる」という言葉にテネフは同意し、プライベート企業も含め、Robinhoodで機能する全てをオンチェーン化して各国の人々に届けるのがビジョンだと語る。

ここでテネフは「コーポレートチェーン(corpo chain)」という批判に自ら触れる。最高のブロックチェーンは組織やコンソーシアムが管理し全てが分散化されているべきだという声に対し、組織的分散化の純粋性を多少犠牲にしても、明確な方向性を持つ集中的リーダーシップが得られると反論する。加えて、Robinhoodが裏付けするstock tokensのようなプリミティブをチェーン上に置くことの価値を強調する。開発者に全てを委ねる「千の花を咲かせる」アプローチも評価しつつ、信頼できるブランドの裏付けあるプリミティブがあることで、2~3人のエンジニアが提供する場合よりはるかに開発者の自信を高め、構築意欲を刺激するという。組成の具体例としてテネフは、オプションのようなデリバティブをスマートコントラクトネイティブな形で作れないかと考えていると明かす。伝統的市場には多大なイノベーションがあるが、メインフレームから現代的な基盤への移行の難しさと、予測可能で低速なシステムに依存する取引相手の存在がそれを阻んでいる。ただしstock token連動NFTやstock tokenとミームコインのペアがこれほど急速に現実になるとは予見できなかったとして、開発者が何を生み出すか予断しない姿勢を示す。

26:06予測市場とKPIコントラクト——知識の直接的なマネタイズ

予測市場は所有とは別物に見えるが、テネフはこれも所有に結びつくと主張する。多くの人が独自の知識やホットテイクを持っており、例えばAIモデル開発の専門家なら今週・今月・今年どのAIモデルが最良かを投機・ヘッジできる契約があるという。予測市場以前、こうした知識をマネタイズする方法は極めて間接的で、Google株やNvidia株のデリバティブを取引するくらいしかなかった。自分の知識をより直接的にマネタイズできることには重要な意味があり、それがKPIコントラクト発表の理由の一つだ。企業を研究してEPSや売上が予想を上回ると確信しても、株やオプションを買うと、業績は上回ったのにガイダンスなど無関係な理由で株価が下がることがある。KPIコントラクトならEPSの発表値や売上高、その他の重要KPIそのものを取引でき、信念をマネタイズしより精密にヘッジできる。テネフは「カリフォルニア億万長者税が可決されるか」という契約を例に挙げ、自分は個人的にヘッジしていないが一部の人には有用なヘッジ手段だと述べる。

テネフは予測市場を情報の新たな源泉とも位置づける。純粋な形での予測市場は「ニュースの進化形」であり、未来のニュースはNew York Timesではないにせよ、それに似た形——一面、ビジネス、ライフスタイル、文化、スポーツのセクションがあり、スポーツが大きな部分を占め、オッズを通じて何が起きているか、何が起きそうかを見られるもの——になるという。多くの人は取引すらせず、アプリを開いて「何が起きるか」をチェックするだけだという利用像を描く。ここには、予測市場を単なる投機ではなく情報インフラとして捉えるテネフの視点が表れている。

28:48エージェント取引の実績と民主化のインパクト

テネフは今年ローンチしたRobinhood MCP、通称Agentic Tradingの実績を具体的な数字で示す。エージェントが取引を執行し戦略を実行する製品で、ローンチから数カ月で15万以上の顧客がエージェント取引口座を開設した。ツールコールは滑らかな指数関数的成長を続け、直近の発表値は1日約3,000万回に達する。テネフはこれを「明らかにプロダクトマーケットフィット(PMF)がある」と断言する。さらに数週間前のHood SummitイベントでRobinhood Agentsを発表し、ハーネスとUI全体をRobinhood口座内に取り込んだ。Claude CodeやCodexのユーザーならイメージしやすい、取引に最適化されたツールのようなもので、毎日戦略を実行しポートフォリオをリバランスし機会を探すループを回せる。スキル機能でポートフォリオのリバランスなどができ、エージェントアプリのストアでは衛星データ源に接続し、小売店の駐車場の車を数えるような戦略を組むことも可能だ。今後の進化として、コーディングハーネスの全機能を見渡し、トレーダー向けのクリーンでネイティブなバージョンを提供してアクティブトレーダーになりやすくしていくと語る。

ホストが、機関投資家には可能でも高コストで高度なこうした能力が民主化されると参加者構成や金融インフラに何が起きるかを問うと、テネフはこれこそ製品の北極星だと応じる。ヘッジファンドや高度なアルゴリズム取引企業の能力を普通の個人のポケットに入れられるかという問いだ。かつてコンピュータサイエンスの大学院生が取引戦略を書いても、展開するにはデータセンターのラックスペースを確保し取引所に接続する手間が必要だった。その全側面を効率化し、誰でもソフトウェアエンジニアになりやすくなったのと同じように、より多くの人がクオンツトレーダーになりやすくする。結果として取引活動は増え、当初は少数の高度な人々に集中して彼らの活動が大幅に増え、やがて人口のより広い層へ浸透するという。テネフはコーディングとの類推を重ねる。コーディングエージェントを最初に採用したコーダーの生産性が倍増し、その後VS CodeやCursorを触らなかった人でもClaudeやCodexを教わって簡単にウェブサイトを作れるようになったように、全体的な水準を引き上げるという。ホストは「ソフトウェアを作り自動化したいという欲求よりも、信念から儲けたいという欲求の方がはるかに普遍的だ」と指摘し、テネフも、アイデアを戦略に変える摩擦を単一株を買う程度まで下げられれば、より多くの人がやるだろうと同意する。

33:48金融インフラの安全性とHFTの負荷

ホストが金融インフラやリスク管理の変更必要性を問うと、テネフは明確な大規模見直しは不要との見方を示す。初日のセーフガードとして、エージェント取引には本体のRobinhood残高から分離された別口座の開設を必須とし、資金を移してから使う仕組みを説明する。取引承認をデフォルトで有効にする顧客は承認が必要だが、オフにもできる。ただし他の口座に入り込めないため「危険というほど危険ではない」サンドボックス化された設計で、サンドボックスとハーネスのインフラの多くはRobinhood社内で作り込んだという。高頻度取引は20年前に市場が完全電子化されて以来存在し、取引所からブローカーまでアルゴリズム取引という現実に適応してきたため、規制の根本的変更は不明瞭だとする。ただし規模が拡大すれば規制の明確化が必要な特殊ケースに遭遇するかもしれないと留保する。

ホストはコーディングを代理指標に挙げ、コード生成が桁違いに増えた際にCI/CDが完全に破綻したことが自明ではなかったと指摘し、全員が高頻度トレーダーになるなら新たな負荷ではないかと問う。テネフはスタックの層を分けて答える。オンチェーン側はMCPを持ち、Robinhood ChainはリアルワールドアセットだけでなくAIエージェントにも最適なチェーンだと述べる。CEFI(中央集権型)側ではデータベースから戦略が走るサンドボックスのコードまでエンドツーエンドで制御し最適化できる。システムを抜けた先のマーケットメーカー——Citadel、Jane Street、Jump Tradingといった低遅延・高頻度の高度なソフトウェア企業——は需要拡大への対応を心配していない。取引所もHFTとアルゴ取引からの圧力でAPIを大量処理向けに最適化済みだ。ただしエージェント取引はまだ総取引の低い割合で、二桁台に達するのは当面先だろうから警告はあると見る。

38:30AI革命におけるプライベート企業の所有とTrump accounts

テネフはAI革命が広く所有されていないという問題を明確に認識する。主要な革新的AI企業は非上場で、NvidiaやGoogleを除けば、OpenAIやAnthropicへのエクスポージャーを個人投資家が得るのはほぼ不可能だ。理由の一つはプライベート市場が大規模化し、高成長企業が非公開で容易に巨額調達できるようになったことにある。1980年代のMicrosoftや1990年代のAmazonは数億ドル規模の評価額で上場し、公開時に参加した個人投資家が1,000倍のリターンを得られた。しかしAIラボが1兆~2兆ドルで上場すれば、個人が同種のリターンを得るには数京ドル規模が必要で非現実的だ。結果として利益は少数のVCや機関投資家に集中し続け、人々がデータセンターに不満を持つ理由にもなる。個人が経済的に恩恵を受けず、むしろ雇用や生活を脅かし近隣を騒音で汚染していると感じるからだ。

テネフはこれを暗号資産と対比する。暗号資産も全員が儲かるわけではなく、2022~23年は業界にとって厳しく多くの人が損失を被ったが、2024年には大挙して政治を動かした。規制の過剰介入の兆しがあれば、何百万人もの人がSNSで発信し議員にメッセージを送り、あらゆる局面で戦う。その大きな理由は、暗号資産が最初から個人による広範な分散所有だったことにある。AIは逆だという。そこでRobinhoodは二つの施策を打ち出した。一つは誰もがプライベート企業に投資できるべきだという考えで、企業を早期に上場させるよう説得することはできないが、個人投資家がプライベート企業の大きな株主になるべきだとする。Robinhood Ventures Fund 1は「公開取引されるベンチャーキャピタル企業」とも言える革新的構造で、IPOの最大のリテールチャネルを使ってRobinhood顧客から資金を調達しスタートアップに投資、ファンド自体がNYSEで株式のように取引される。OpenAIなどレイトステージのプライベート企業を含み、11 LabsやCruiseも最近発表した。Fund 2ではYCと提携し、リスクは最大だが機会も最大のシード・シリーズA段階へのエクスポージャーを提供する。Rich Abermanが運用する。

さらにプライベート企業のトークン化は別の方法でこの問題を解く。北極星は、プライベート企業を株式や暗号資産のように24時間365日、端数でリアルタイム取引できるようにすることだ。Anthropicを低額で24時間365日取引でき、SPVのLP持分を持つに匹敵する高品質な所有が誰にでも可能になるべきだという。これには米国の accredited investor 規則の見直しが必要になる。ホストが、VCが儲かると考えるポートフォリオのLPを機関投資家や友人から選べる中で、リテール関与のQP・アクレディテーション規則の更新が必要という見方に触れると、テネフはSECが先週、FINRAに資産基準とは別の知識ベースのアクレディテーション試験(テスト施設で2時間の試験)の創設を指示したイニシアチブを紹介し、前向きな一歩と評価しつつ、試験を受けに行く人がどれだけいるかという摩擦の低さが課題だと述べる。詐欺防止やパターナリズムの議論については、顧客は「自分の金は自分が管理すべきで、誰にも投資の使い方を指図されるべきでない」に圧倒的に同意しており、リスク商品の内容を明確に伝えることは前提としつつ、ミームコインはSECが証券ではなくコレクティブルと手紙で明言し完全な規制の明確性があるのに、プライベート企業だけ制限するのは純粋なリスク志向から見ても不合理だと主張する。アクレディテーション規則はインターネット以前、情報が得られなかった時代のもので、今はAIモデルが情報を精査・統合できるため条件は変わったという。

Trump accountsについてテネフは、Robinhoodが唯一の初期トラスティ兼ブローカーに選ばれ、米国最古の銀行BNY、財務省、IRSと協働していると説明する。全ての子どもが生まれた時から低コストの分散型ETFを通じてS&P 500で米国経済の一部を所有できるようにする構想で、2025年1月以降の新生児に財務省が1,000ドルを拠出し、Michael and Susan Dell財団が低所得地域の子どもに60億ドル以上を追加、Gwynne ShotwellがSpaceX株を寄付し、プログラムの設計者Brad Gerstnerもインディアナ州の子どもに大口寄付を行った。テネフはこれを家計の株式保有率を65%から95%へ引き上げる最良の手段と評し、政府が打ち出した最高の製品かつトランプ大統領の遺産の最も永続的な肯定的側面にしたいと語る。

50:47リーダーとしての冷静さと結びに

ホストがAndrew Reedの「無限のIQと、金融市場・PR・大規模ユーザー基盤の気まぐれに対処する際の最も安定した手の奇妙な組み合わせ」という評を引いて冷静さの秘訣を問うと、テネフは幼少期の多くの困難を経験したことが困難への耐性を作ったと答える。支援的で素晴らしい家族だったが、皆で一緒に移民し、子どもとして与えられるのではなく家族の一員として自律的に扱われ、それぞれの役割を担ったという。ビジネスの課題に直面しても、送還の脅威や、5%のインフレで大騒ぎする状況を、子ども時代に経験した2,000%のインフレと比べれば相対化できると語る。自分の子どもには安全や家庭教師、博物館といった恵まれた環境があるため、苦労と忍耐の環境を意図的に作ろうとしているがまだ解決策は見つかっていないと正直に認め、性質か育ちかで言えば自分は生まれつきそうだったのかもしれないとも述べる。ホストが「どんな困難も将来より冷静にするという楽観的な助言」としてまとめると、テネフはBezosの言葉を引き、あらゆる困難への最良のアプローチは分厚い皮膚(thick skin)を育てること、外の世界は制御できなくても自分自身は制御できるとし、それが誰もが持てるわけではない大きなスーパーパワーだと締めくくる。

このエピソードが残すのは、所有という一見地味な概念を、個人の資産形成・社会の安定・AI革命の恩恵の分配という三層に貫く一貫した思想だ。テネフはブルガリアのハイパーインフレと銅鍋の逸話から、数学的超知能の分散化、トークン化によるグローバルな所有、エージェント取引の実績、そしてTrump accountsまでを一つの論理で結ぶ。特に印象的なのは、AIラボによる発見の独占を「ディストピア」と断じ、同じ成果でも無名の個人が成し遂げた方が社会に受け入れられると主張する点、そして暗号資産が広範な個人所有ゆえに政治的影響力を持つのに対しAIは持たないという対比だ。投資家の視点では、Robinhood Chainの開発者活動、エージェント取引の1日3,000万ツールコール、15万口座という具体数字が、単なるビジョンではなく実装済みの traction を示す。同時に、アクレディテーション規則の緩和やプライベート企業の24時間取引といった構想は規制と市場構造への働きかけを伴い、その成否が「所有の会社」の次の成長を左右する。困難を相対化するリーダー論も含め、金融民主化とAIの分散化を同一の哲学で語る稀有な対話として記憶に残る。

要点

  • Robinhoodは自らを「所有の会社」と定義し、120カ国以上で株式・暗号資産・予測市場・プライベート企業投資・ブロックチェーン・エージェント取引を展開する金融コングロマリットへ進化した。
  • テネフの原体験はブルガリアのハイパーインフレ(1991年約170%、1997年約2,000%)で、祖父母が給料を銅製調理器具に交換して資産保全していた事実が、健全な資本市場と所有の価値への確信を形成した。
  • HarmonicのAristotleはInternational Math Olympiadで金メダルを獲得した3モデルの一つで、Erdos問題の解決などに使われたが、テネフはAIによる数学の発見が一部ラボに集中する現状を「ディストピア」と批判し、個人への分散を主張する。
  • Robinhood Chainはリアルワールドアセット向けのブロックチェーンで、完全DeFi対応のstock tokensを展開し、開発者活動で第1位を記録。南米・アフリカなど資本市場が脆弱な国の人々に低コストで米国株へのアクセスを提供する。
  • Agentic Tradingはローンチ数カ月で15万口座超、1日約3,000万ツールコールに達しPMFを実証。ヘッジファンド級の能力を個人に民主化することを北極星とする。
  • Robinhood Ventures Fund 1はNYSEで取引される公開VC構造でOpenAIなどを含み、Fund 2はYCと提携してシード・シリーズAへのエクスポージャーを提供。プライベート企業の24時間365日端数取引にはアクレディテーション規則の緩和が必要だとする。
  • Trump accountsでRobinhoodは唯一の初期トラスティ兼ブローカーに選ばれ、2025年1月以降の新生児に財務省が1,000ドルを拠出、Dell財団が低所得地域に60億ドル以上を追加。家計の株式保有率を65%から95%へ引き上げる狙い。
  • テネフは幼少期の困難が冷静さの源だとし、Bezosの「分厚い皮膚を育てる」という言葉を引き、外の世界は制御できなくても自分自身は制御できることがリーダーのスーパーパワーだと語る。