motpod
My First Million · 2026年11月5日

AIが決して時代遅れにできない2つのビジネス

AI generated article / ja / study
この記事でわかること
  • 自動車ディーラーが集まって損益計算書を突き合わせる「NADA 20グループ」、時計や金を売買するディーラーが年間1万ドルを払うFacebookコミュニティ群、そしてカード...
  • 番組は「AIの専門家でなくても、AIとともに成長するビジネスは作れる」というSamの問題提起から始まる。彼が示すのは、数十年間ほとんどマーケティングを変えていない業界団体...
  • [0:00] AI時代に「AIではないビジネス」で勝つという逆張り Samは冒頭で「自分はAIの人間ではない」と明言したうえで、AIの発展とともに成長するが中身はAIでは...
出典Podcast

My First Million / Hubspot Media

この番組のほかの回

自動車ディーラーが集まって損益計算書を突き合わせる「NADA 20グループ」、時計や金を売買するディーラーが年間1万ドルを払うFacebookコミュニティ群、そしてカードの「買い戻し」で一気に売上を伸ばしたリッピングアプリ。My First MillionのこのエピソードでSam Parr(サム・パー)とShaan Puri(シャーン・プリ)が持ち出したのは、いずれもAIとは無関係に見える「地味で古臭い」ビジネスばかりである。しかし二人の主張は一貫している。AIが技術そのものをコモディティ化するほど、コミュニティ、ネットワーク、マーケットプレイスという参入障壁の価値はむしろ上がる、というのだ。

番組は「AIの専門家でなくても、AIとともに成長するビジネスは作れる」というSamの問題提起から始まる。彼が示すのは、数十年間ほとんどマーケティングを変えていない業界団体、Facebookグループだけで従業員十数人と60万人の会員を抱えるコミュニティ企業、そして「宝探し」の心理を突いて年間10億ドル規模に達したとされるカード開封アプリだ。Shaanはそこにゲーム業界の「whale(クジラ)」経済学、ガチャの歴史、暗号資産のハッキング事件までを重ね、単なるアイデア紹介を経済構造の議論へと広げていく。軽快な雑談の裏側で、どのビジネスがAI時代に生き残るのかという真面目な問いが通底している。

0:00AI時代に「AIではないビジネス」で勝つという逆張り

Samは冒頭で「自分はAIの人間ではない」と明言したうえで、AIの発展とともに成長するが中身はAIではないビジネス、つまりコミュニティに大きな金脈があると主張する。技術が急速に進歩するほど、人間同士の信頼やネットワークという資産は代替されにくくなるというのが彼の見立てである。この日彼が用意したのは、自動車ディーラー向けのピアグループ、時計や貴金属の売買コミュニティ、カード開封アプリという、一見なんの共通点もない三つの事例だった。

Shaanはこの枠組みに「AIで技術はもうmoat(参入障壁)にならない」というPeter Levels(ピーター・レベルズ、独立開発者として知られる起業家)の議論を重ねる。かつては優れたソフトウェアそのものが防御壁になったが、AIによって誰でも似たようなプロダクトを作れるようになった。その結果、コミュニティ、ネットワーク、マーケットプレイスという「人間の集まりから生まれる資産」の相対的価値が上がるという整理である。二人はこの日、その仮説を具体的な企業の数字で裏付けようとしていく。

0:31NADA 20グループ——損益計算書を晒し合うだけの地味な高収益ビジネス

最初の事例はNADA 20グループ。全米自動車ディーラー協会(National Automobile Dealer Association)が運営するピアグループで、1970年代に始まったとされる。自動車ディーラーが年6,000〜8,000ドルを払って加入し、地域が重ならない非競合の24人前後のグループに割り振られる。年に3回同じ都市に集まり、各自が自店の損益計算書を持ち寄って一行ずつ説明する。他の参加者は「そこは儲かっているから真似しよう」「それはまずい、こうしたらどうか」と率直に指摘し合う。それだけの仕組みだが、Samの試算では年間1,300万〜1,500万ドルの収益を上げているという。

Samが強調するのは、このビジネスの「ひどいマーケティング」ぶりである。ウェブサイトは古臭く、広告も打たない。それでも100年続く協会の信用があるから存続できる。彼が面白がるのは、最近ではHVAC業者やマリーナ、ボート修理店のオーナーまで受け入れるようになった点だ。つまり「退屈だが平均的なオーナーが年100万ドルを稼ぐ業種」であれば、この仕組みは横展開できる。Samは「サウスダコタに住む普通のミリオネア・ネクスト・ドアのような人々」向けに同種のグループを作れば、数十年続くビジネスになると語る。

ここでShaanがWhite Coat Investor(ホワイトコート・インベスター)を持ち出す。医師や歯科医が投資や不動産購入について議論するコミュニティで、ブログから始まりメディアやFacebookグループへ展開した成功例である。Shaanは「ブログだった時代のメディア環境と今のツールはまったく違う。同じことを2.0版としてやる余地がある」と指摘し、医師・歯科医向けコミュニティの再構築を有望視する。Samはこれに対し、自分たちが将来的に複数のコミュニティを買収して運営ノウハウを横展開する構想を持っていると明かす。

その構想の規模感をめぐるやり取りが笑いを誘う。Samが「数十億ドル企業を目指す」と言いかけて「数億ドル」と言い直すと、Shaanは「今の『5ポンド痩せたい』が『50ポンド』になったようなFreudian slip(フロイト的失言)だ」とからかう。Samは「数億ドルは利益、数十億ドルは売上」と訂正し、自分たちの業界では年9桁ドルのフリーキャッシュフローを出すことが「成功」の閾値だと説明する。Steve Jobsが「ポケットに1,000曲」と言った例を持ち出し、目標は大きく掲げるべきだという軽妙な応酬が続く。

5:13BNI——異業種の地元事業者がリードを交換する巨大ネットワーク

Shaanが「同じ職種向けではなく、都市ごとのローカルチャプター版がある」と振ると、SamがBNI(Business Network International)を挙げる。会計士、HVAC業者、弁護士、造園業者など、競合しない異業種の地元事業者が集まり、互いに見込み客を紹介し合う仕組みである。SamはYMCAでBNIのミーティングを見かけたことがあり、30人ほどが部屋に集まって一人ずつリード(紹介案件)を共有していたと回想する。会員数は80万人、会費は年数千ドル台。Samはテキサス出身の女性CEOと会ったことがあり、その会社が最近買収されたと語る。買収額は「10億ドル超では」という噂を聞いたという。

Shaanはこのモデルを「Hamptonをあらゆる業種向けに展開するようなもの」と位置づける。HamptonはSamが運営する創業者コミュニティで、平均会員の年商は2,500万ドル規模とされる。重要なのは、参加者に十分な可処分所得があり、かつ互いに競合しないよう設計すること。同業種なら地域をずらし、異業種なら同じ地域で組ませる。この設計次第でピアグループはほとんどの職種に成立するというのが二人の一致した見方である。

8:34Moda Communities——Facebookグループだけで年商500万〜1,000万ドル

二つ目の事例はModa Communities。サウスダコタ州スーフォールズを拠点とする男性が2018年、時計の売買に適した場所がないことからFacebookグループを作ったのが始まりだ。現在は時計、クラシックカー、金・ジュエリーなど20〜25のコミュニティを運営し、会員は合計60万人、フルタイム従業員は十数人に達する。時計コミュニティは1万ドル未満と1万ドル以上に分かれ、さらに10万ドル超の「スーパーファン」向けグループもあるという。Samの推計では年商500万〜1,000万ドル規模である。

収益源はディーラー課金だ。ディーラーはまず本人との面談、次に既存コミュニティメンバーによる審査という二段階のvetting(身元確認)を受け、年1万〜5万ドル(場合によっては1万ドル程度)を払って出品権を得る。買い手側の熱狂的なコレクター層に直接リーチできるため、ディーラーは喜んで払う。Samは「Facebookグループがこれほど大きなビジネスになる」こと自体が驚きだと語り、ネット上のあらゆる売買に応用できるモデルだと評価する。

Shaanはこのビジネスの弱点も指摘する。Facebookグループ上に構築するのは常に危険で、プラットフォームはリーチの制限や新規メンバー追加のルールを頻繁に変えてきた。「与えるのも奪うのもFacebook次第」というわけだ。それでも巨大ネットワークに接続できる利点は大きく、集約する対象を「whale(クジラ)」に絞った点がこの事例の妙だとShaanは見る。

11:12クジラが経済を動かす——ゲーム業界からTwitchまでの教訓

Shaanは「クジラが経済に占める割合は驚くほど大きい」と力説する。Candy Crushは月間アクティブ8,200万人だが、売上の大半はプレイヤーのわずか4%が担い、残り96%はクジラを見つけるためのコストにすぎないという。Twitch時代の経験も披露する。Twitchが導入した「gifting subs(サブスクのギフト)」機能は、チャットから200件のサブスクを他人に配れる仕組みで、1件5ドルなら1,000ドル相当。クラブでボトルを買うのと同じ心理で、配った人は配信者に名前を呼ばれ、周囲から一目置かれる。地味な機能だが、クジラに新たな消費口を与えることでチャンネル収益を大きく押し上げた。

Shaanの元共同創業者でBeboのCTOを務めたFerkon(ファーコン)は、かつてAppLovin(モバイルゲーム最大の広告ネットワーク)のCTOだった。その経験から、ゲーム各社がプレイヤー獲得にいくら払い、そのプレイヤーからいくら稼ぐかを把握しており、「Candy Crushで課金する人はBlock Blastでも課金する」という相関を突き止めていた。つまり広告主が欲しいのはクジラそのものであり、ターゲティングの精度が収益を左右する。ShaanはFarmvilleの創業者たちからゲーム内経済の設計——ハードカレンシーとソフトカレンシー、source(供給)とsink(消費)——を聞いた経験を引き合いに、これは「スロットマシンの運営者と話しているようなもの」だと表現する。

ただし決定的な違いがある。ラスベガスのスロットは還元率が規制で定められているが、モバイルゲームにはその制約がない。還元率は設計者が自由に決められ、churn(解約)と成長、プレイヤーのフラストレーションのバランスを最適化する。Shaanは、Tinderのマッチングアルゴリズムを解析して解説する人物の例を挙げ、コードが公開されていないはずなのにどうやって入手しているのか疑問だと付け加える。そして「かつて課金したが30日間課金していないプレイヤーには、連勝させてから壁にぶつけ、課金ボタンを押させるよう最適化する」といった設計が行われていると説明する。世界最高の頭脳がスロットにコインを入れさせるために働いているという皮肉めいた指摘も飛び出す。

SamはModaの創業者にDMで確認した内容として「ほぼすべてを無料で提供しており、上位1%、あるいは上位0.001%が支払って全体を支えている」という言葉を紹介する。クジラ経済はゲームに限らず、あらゆるコレクター市場に共通する構造だという認識が二人の間で共有される。

16:19リッピングアプリ——「買い戻し」が生んだ年間10億ドル

Shaanが持ち出した次のトレンドは「ripping(リッピング)」と呼ばれるカード開封アプリだ。店でポケモンカードのパックを買って開ける行為をアプリ化したもので、画面のパックをタップして開け、50ドル払って何も出なくても「43ドルで買い戻す」オプションが表示される。43ドルはストアクレジットとして戻り、「あと7ドル足せばもう一回引ける」と再挑戦を促す仕組みである。Shaanによれば、このアプリは1年で10億ドル規模の売上に達したという。創業者はCitadelやBridgewaterでクオンツとして働いていた人物だというから、驚きは少ない。

この「buyback(買い戻し)」の巧妙さをShaanは丁寧に解きほぐす。顧客は宝探しの興奮を求めており、何も出なければ50ドルを丸損した気になるが、43ドル戻れば「7ドルで再挑戦できる」と感じる。企業側は50ドルの売上のうち43ドルを戻すだけで、カードを実際に売却する必要がない。外れたカードはそのままデッキに戻され、別の誰かに売られる。つまり在庫を回転させながら、実質7ドルの手数料で繰り返し遊ばせている構造だ。ShaanはこれをGMV(流通取引総額)と純収益の混合だと整理する。

この分野ではLogan Paul(ローガン・ポール、YouTuber兼プロレスラー)が「Rip It」を立ち上げるなど、今まさに一大ブームになっている。Collector Crypt(コレクター・クリプト)は月5万ドルだった売上が月2,500万ドルに急増し、直後にShaanがデータを確認すると月1億ドルに達していたという。ブロックチェーン上で運営されているため、手数料の流れが外部から見える点も特徴である。

Shaanはこの心理の源流として日本の「ガチャ」を挙げる。カプセル玩具のガチャは日本で人気が過熱し、法律で規制されるに至った。アメリカのゲーム業界はこれを「loot box(ルートボックス)」として取り込み、OverwatchやFIFAが採用した。コレクター市場がこれを応用した点が決定的に違うのは、当たったものが「見た目だけのスキン」ではなく、現金価値を持つ実物カードだということだ。最高値のPikachuカードは1,500万ドルで取引されるとも言われ、ギャンブルの射幸心とガチャの中毒性が直結する。Shaanの友人の玩具業者の例では、ウォルマートやターゲットで顧客が選べる状態で売っていた商品を同じ中身のままミステリーボックスに入れ替えただけで、売上が7倍になった。IPホルダーとの交渉中にその友人が「顧客は選択肢が好きだと言うが、データはカテゴリーを問わずミステリーボックスの方が勝つと示している」と画面を見せて論破する場面まで披露される。

23:04Private Photo Vaultと暗号資産ハッキングの余談

終盤、Samが3年前に話題にした「Private Photo Vault」の近況を報告する。写真を隠すためのアプリで、電卓の裏に隠すタイプの定番だ。App Storeのレビューは100万件に達し、SamはHamptonのイベントで創業者本人に会ったという。創業者はラスベガス在住の「ナード」な美国人で、詳細な数字と従業員数は明かせないとしつつ「巨大なビジネスだ」とだけ語った。Shaanは「こういうアプリは普通チェコあたりの人が作るものだ」と驚き、Samは「受信した写真を保存してフォトロールから消すだけのストレージだ」と仕組みを説明する。Shaanが「自分はヌードを受け取ったことがない」とぼやき、Samが「ラッシュでも出ない限り無理だろう」と返す下りは、この番組らしい脱線である。

そこから話は暗号資産へ飛ぶ。Binanceが50億ドル相当をハッキングされ、同社は2018年のハッキング後に取引手数料の10%を積み立てた「SAFU基金」で約20億ドルを保有していたが、今回は不足するという。犯人は北朝鮮とされ、エンジニアと恋愛関係にあった女性が物理的にノートPCを入手した手口だという。Shaanはハッカーが盗んだ資金をDeFiプロトコルに入れ、担保にステーブルコインを借りて引き出す「洗浄」の手口を解説する。DeFiは銀行のように窓口がなく、担保の50%まで借りられ、価格が下落すれば自動的に清算される仕組みで、資金が凍結されても借りたステーブルコインは手元に残る。Shaanは予測市場が2015〜17年にAugurなどで試されて全滅し、8年後にPolymarketやKalshiが成功した例を引き、DeFiも同じように復活すると予言する。最後は「北朝鮮のハッカーをインタビューして、割に合ったのか聞くべきだ」という冗談で締めくくられる。

結びに

このエピソードの核心は、AI時代の投資判断を「技術」ではなく「人間の集まり」に置き直した点にある。NADA 20グループの損益計算書を晒し合う閉鎖的な信頼関係、BNIの異業種リード交換、Modaの審査付きディーラーコミュニティ、そしてクジラの射幸心を突くリッピングアプリ。いずれもAIが代替できないのは、参加者同士の信頼、非競合の設計、そして人間の宝探し心理という、コードに書き起こせない資産を持っているからだ。SamとShaanは、技術のコモディティ化が進むほど、こうした「地味で古い」ビジネスの相対価値が上がるという逆説を、具体的な数字と事例で裏付けていく。

同時に、この回は危うさも隠さない。Facebookグループ依存のプラットフォームリスク、クジラ経済が依存する中毒性、ガチャ規制の歴史、暗号資産のセキュリティ崩壊。Shaanが「世界最高の頭脳がスロットにコインを入れさせるために働いている」と語るとき、賞賛と皮肉が同居している。ビジネスアイデアとしての面白さと、その倫理的な重さを同時に提示するのがこの番組の持ち味だ。聴き終えた後に残るのは、「AIで何かを作る」ではなく「AIが変えられない人間の集まりをどう設計するか」という問いである。

要点

  • Sam Parrの主張は「AIの専門家でなくても、AIとともに成長する非AIビジネスは作れる」であり、その主戦場はコミュニティ、ネットワーク、マーケットプレイスである。
  • NADA 20グループは自動車ディーラーが年6,000〜8,000ドルを払い、非競合の24人前後で損益計算書を晒し合うだけの仕組みで、年1,300万〜1,500万ドル規模と推計される。
  • BNIは異業種の地元事業者がリードを交換するネットワークで会員80万人、会費は年数千ドル台、買収額は10億ドル超との噂がある。
  • Moda Communitiesはスーフォールズの男性が2018年に始めたFacebookグループ群で、会員60万人、従業員十数人、ディーラーは二段階審査と年1万〜5万ドルを経て出品できる。
  • Shaan PuriいわくCandy Crushは月間8,200万人のうち4%が売上の大半を担い、Twitchの「gifting subs」はクジラに新たな消費口を与えて収益を押し上げた。
  • リッピングアプリは50ドルのパックに43ドルの買い戻しを組み合わせ、外れカードを再販することで実質7ドルの手数料で回転させ、1年で10億ドル規模に達した。
  • 日本のガチャは規制されるほど過熱し、アメリカのゲーム業界がloot boxとして輸入、コレクター市場が現金価値のある実物カードと結びつけて中毒性を増幅させた。
  • Binanceの50億ドルハッキングは北朝鮮関与とされ、DeFiで担保にステーブルコインを借りる洗浄手口が解説された。ShaanはDeFiが予測市場のように復活すると予測する。
AIが決して時代遅れにできない2つのビジネス | My First Million | motpod | motpod