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Cloudbase Mayhem Podcast · 2026年11月4日

#282 ティム・スウェイトと語るハンググライダー設計の未来

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この記事でわかること
  • ハンググライダー設計の世界で、1990年代後半の「第6世代」トップレス翼以来およそ四半世紀ぶりとなる大きな転換点を目指すイギリスの設計者ティム・スウェイトが、Avian...
  • [3:16] ティム・スウェイトの背景とAvian Hang Gliders ティム・スウェイトはイングランドのシェフィールド在住。シェフィールドはマンチェスターとほぼ同...
  • Avian Hang Glidersは1989年にスティーブ・エルキンスが創業し、スウェイトが2017年に事業を引き継いだ。彼が会社を買った動機は、ハンググライダー界の縮...
出典Podcast

Cloudbase Mayhem Podcast / Gavin McClurg

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ハンググライダー設計の世界で、1990年代後半の「第6世代」トップレス翼以来およそ四半世紀ぶりとなる大きな転換点を目指すイギリスの設計者ティム・スウェイトが、Avian Hang Glidersのオーナーとして進める「第7世代」構想を語る回。航空工学と複合材料の博士号を持つ彼は、鳥の翼に近い柔軟な構造、理想的な揚力分布、そして同調剛性と非対称運動という一見矛盾する要求を両立させる設計思想を、シミュレーションと実機テストの裏付けとともに説明する。ホストのギャビン・マクラーグはハンググライダー設計の専門家ではないため質問は基礎的だが、そのぶん用語の定義や歴史的経緯が丁寧に掘り下げられ、スポーツの縮小、製造コストの悪循環、初心者獲得の難しさといった構造的問題にも話が及ぶ。終盤は有料版への誘導で途切れるが、本編だけでも設計論の核心とスポーツの未来像は十分に掴める。

3:16ティム・スウェイトの背景とAvian Hang Gliders

ティム・スウェイトはイングランドのシェフィールド在住。シェフィールドはマンチェスターとほぼ同緯度で、英語圏の政治地理感覚では「北部」に分類されるが、実際には国土のほぼ中間に位置する。シェフィールドとマンチェスターの間にはピーク・ディストリクト国立公園が広がり、厳密な山ではないものの英国では最も山に近い丘陵地帯として、ヒルソアリング(斜面の上昇気流を利用する滑空)やクロスカントリーフライトの好適地になっている。Avianの工房はこのピーク・ディストリクトの中心部にある。

Avian Hang Glidersは1989年にスティーブ・エルキンスが創業し、スウェイトが2017年に事業を引き継いだ。彼が会社を買った動機は、ハンググライダー界の縮小に対して何かしたいという思いと、航空機を作ることへの長年の憧れだった。子供の頃はフリーフライトの模型飛行機から始め、ラジコン飛行機、さらに小型内燃エンジン付きのラジコングライダーまで作っていた。大学勤務時代には学生の実践的プロジェクトとして小企業の課題を探しており、その縁でエルキンスと知り合った。プロジェクトを進めるうちにエルキンスが引退を考えていることを聞き、事業承継に至ったという経緯である。

規模の面ではAvianは業界最小級だ。スウェイトによれば、近年ハンググライダーメーカーの廃業が相次いでおり、Airborneはごく最近、ドイツの小規模メーカーBTechも最近閉鎖した。フランスのEllipseも比較的小さい。Wills Wing、Icaro、Moyesといった大手と比べるとAvianはずっと小さい。この「小ささ」は後のコスト論にも直結する重要な前提になる。

スウェイトの航空歴はハンググライダーより前から始まっている。英国には軍がスポンサーするカデット部隊(陸・海・空軍版の青少年組織で、入隊義務はない)があり、彼は空軍版に所属してグライディング奨学金を得て16歳でセイルプレーン(グライダー)を単独飛行した。大学ではより本格的な大学航空飛行隊に入り、空軍パイロットを志して初期の飛行訓練も受けたが、結局RAF入隊は選ばなかった。その後約10年間飛行から離れ、再び飛びたいという衝動が湧いたときにハンググライダーに出会う。学歴は航空宇宙工学の学士、複合材料(炭素繊維など)の博士号で、現在も週2日はシェフィールド大学の複合材料製造グループに所属し、炭素繊維製品をより効率的に作る研究を続けている。この材料科学の専門性が、後の設計論の説得力を支えている。

9:34飛ぶことへの原初的な衝動とパラグライダー経由の入口

スウェイトが飛ぶことに惹かれた原点として彼が挙げたのは、2歳頃の映像だ。鳩の群れを追いかけながら跳ねている姿が映っており、父親がジャンプを教えようとしているのだが、足が地面から離れない。映像だけを見ると鳩の動きを真似しているように見えるといい、彼自身「なぜ鳩は飛べるのに自分は飛べないのか分からなかった」のが追いかけていた理由だったと振り返る。飛翔への欲求が言葉より先にあったことを示すエピソードである。

ハンググライダーに入る前、彼はパラグライダーを経験している。2001〜2002年頃、大学航空飛行隊の「アドベンチャートレーニング」と称したアルプスでの休暇を兼ねた5日間のパラグライダー講習を受けた。場所はシャモニー地方のプラン・プラズ(Les Praz)。そこで地元のパイロットたちが「先週ハンググライダーが2機ここに降りてきた」と話すのを聞いた。プラン・プラズには山からかなり離れたハンググライダー用の大きな着陸場があり、パラグライダー用の小さな着陸場は通常パラグライダーが使う場所だ。2002年当時のパラグライダーではサーマルなしでそこまで届くのは難しかったはずで、ハンググライダーがその小さい方の着陸場に降りたのは珍しいことだった。地元の人が「ジェット戦闘機のように飛び回って降りてきた」と表現したその光景が、彼の頭に種を蒔いた。

もう一つの触媒は、レッドブル・エアレースのビデオだった。スキー滑走路上を高度15センチほどで煙を吐きながら低空飛行する映像を見て「かっこいい」と感じたという。パラグライダーもセイルプレーンも楽しかったが、パラグライダーには「戦闘機に乗っている感じ」が乏しい。2013年、天候の安定したアルプスでハンググライダーを学ぼうと、サン・ティレール(Saint-Hilaire)の講習を予約して渡航した。興味深いのは、彼が実際にハンググライダーを生で見る前に講習に申し込んでいた可能性が高いという点で、前回出演したジェレミー・ソーパーも「実際にハンググライダーを見たのは自分をクリップで吊るしたときが初めてだった」と語っており、スウェイトも同じかもしれないと認めている。

ハンググライダーは彼を即座に掴んだ。もしハンググライダーが存在しなければ、セイルプレーンかパラグライダーを選んでいただろうが、速度を出し、ピッチコントロールを直接感じ、空間を移動できる感覚が決定的だった。セイルプレーンにも最近再搭乗し、その性能(遠くの目標へほとんど高度を失わずに向かえること)には感嘆したものの、「機械の中にいて隔離されている」感覚があったという。ハンググライダーでは翼が身体の一部のように感じられ、「自分が飛んでいる」のであって「自分を吊るした機械が飛んでいる」のではない、と彼は表現する。ギャビンはこれを、ウィングスーツが最も鳥に近く、次にハンググライダー、セイルプレーン、パラグライダーの順だという序列で整理し、ユタの砂漠で高度1万7000フィート、酸素吸入しながら荒れた空を飛んでいた友人のパラグライダーパイロットの横をセイルプレーンが音楽でも聴くように通過していった逸話を添える。隔離性と一体感のトレードオフが、この後の設計思想(翼を身体の延長にする)の伏線になっている。

17:01競技への参入とスポーツの現状

スウェイトがハンググライダーを始めたのは2013年で、そこから約10年のブランクがあった。競技会への参加は2016年頃、最初はブリティッシュ・オープンだった。競技は「別の種類の挑戦」として楽しんでいる。彼が競技を始めた理由は競技そのものへの憧れではなく、回収(リトリーブ)の問題だった。クロスカントリー飛行では着陸後にどう帰るかが常に障害で、ジェレミー・ソーパーのように回収を気にせず飛ぶ人もいるが、組織化された回収がある競技会は初心者にも寛容で、必ず回収してもらえる。これが参入の実利的な動機だった。

スポーツ全体の課題について、スウェイトは最大の問題は「初心者の獲得」だと明言する。英国の競技シーンは新規参入者に対して友好的で、競技に来た人を確実に受け入れる体制がある。しかしそもそも入ってくる人がいない。ハンググライダーのスクールが英国にはほとんど残っておらず、教える人材が不足している。彼自身は海外の講習で学んだ。スノーボードの冬休みと同じ発想で、夏に「アクティビティ休暇」として山あいの美しい土地で1週間ハンググライダーを学び、楽しめなければそれでいいという気軽な動機だった。この方法は彼には有効だったが、誰にでも通用するわけではない。ギャビンが「見なければ知ることもできない、障害の問題でもある」と指摘すると、スウェイトは同意し、見て興味を持っても教えてくれる人を探すのが難しい現実を重ねる。パイロット人口の減少は、パイプラインの入口そのものが細っていることに起因するという診断である。

コストについてギャビンは、高性能化の競争が高価な素材を要求し、上位を狙うには最新最高の機体(1万5000ドル級)が必要になることが参加者離れを招いたのではないかと問う。スウェイトの答えはやや意外だった。ハンググライダーの「入門コスト」は歴史的に見ても今が最も低いくらいだという。中古機が出回っており、ハンググライダーはパラグライダーより高価だが寿命が長いため、安全に飛べる中古機が安く手に入る。講習費は高いが、機材だけ見れば最も安価な航空スポーツの一つだ。一方で新品のトップレス競技機は約1万ポンドで、確かに高価である。

ただしスウェイトは、コストの主因は規模の経済が働かないことだと説明する。Avianほどの小規模メーカーは何を作っても量産効果を得られず、効率化の投資が節約額を上回ってしまう。「安くするために金をかける」という逆説に陥り、値下げもできない(そもそも儲かっていない)、効率化もできない(十分な台数を作っていない)という悪循環に閉じ込められている。さらに設計の進歩が緩やかになったため、新品機を買うことで得られる性能上の利得も以前より小さく、競技における新機材の優位も相対的に縮んでいるという。この「進歩の停滞が新車購入の動機も削いでいる」という指摘は、第7世代の必要性をコスト面からも裏付ける。

28:39第7世代の設計思想——揚力分布と鳥のような翼

スウェイトが提唱する「第7世代」の核心は、現在のプラットフォームから絞り出せる性能はほぼ限界に達しており、発想を変える必要があるという認識だ。ハンググライダーの世代区分は、第1世代が竹竿とポリエチレンシートで作られた古典的なロガロ翼、第5世代が1990年前後の浮動クロスチューブとダブルサーフェス(二重膜面)を備えたキングポスト付き機体とされる。1990年代後半に、翼内部の構造が十分頑丈になりキングポスト(王柱)とラフライン(帆布を吊る索)を廃した「トップレス」が登場し、これを第6世代と数える人もいれば、第5世代の範疇と見る人もいる。いずれにせよ、それ以降の進歩は炭素繊維によるフレームの剛性向上と、伸びの少ないラミネート帆布の採用による性能向上が中心で、その代償として操縦性(ハンドリング)が犠牲になってきた。現在の機体間の差は「どれだけ操縦性を犠牲にして性能を取るか」の調整に過ぎず、この方式での改善余地はほぼ尽きたと彼は見る。

第7世代を可能にする技術的土台の一つが、コンピューターシミュレーションの進歩だ。パラグライダー業界は10年以上前からシミュレーションで翼を最適化しており、その成果は性能に表れている。パラグライダーは内部空気圧で膨らみ、無数のライン(索)が寄生抵抗を生むという本質的な妥協を抱えながら、設計制約の理論限界にかなり近づいている。一方ハンググライダーは、パラグライダーと同じ膜面翼でありながら剛性部材を持つという利点がある。鳥の翼は「剛い骨格に膜状の皮膚を張った」構造であり、工学的にはパラグライダーよりずっと良い性能を出せるはずだ。しかしシミュレーションで見ると、ハンググライダーはまだ性能を「テーブルに置き忘れている」状態だという。

最大の課題が「揚力分布」である。翼の各断面が生む揚力の翼幅方向の分布には、楕円という理論上の最適解がある。そこから外れると、翼の一部が互いに打ち消し合い、ある部分は働きすぎ、別の部分は働かなくなる。スウェイトは1990年代の競技パイロットから聞いた話として、当時の機体を高速で飛ばすと翼端側がたわみ、外舷側が揚力ではなく下向きの力を生んでいた例を挙げる。その分、内舷側が余計に揚力を出さねばならず、翼全体が抵抗を生む。現在はそこまで酷くはないが、理想の楕円分布には程遠い。パラグライダーは翼形状と性能数値から見て、ほぼこの分布を達成していると考えられる。ハンググライダーがこれを達成できれば、大きな性能向上の余地が開ける。

従来のアプローチは、翼を平らに押さえつけて理想分布に近づける「力ずく」の方法で、炭素の剛性や硬い帆布で翼を固める方向に進化してきた。しかしそれには限界がある。スウェイトの狙いは、もっと「自然な」翼、空気の流れによって形が決まる翼だ。予告映像で見せるカモメの翼のようなガルウィング形状はその一部で、翼の各断面を望みの迎角に、力ずくではなく自然に配置できるようにする。これにより、操縦性を犠牲にせずに揚力分布を改善できる可能性がある。

33:00同調剛性と非対称運動という難題

第7世代のもう一つの技術的核心が「対称剛性と非対称運動の両立」である。翼が翼として機能するには、パイロットの体重(中央で下向き)と揚力(両翼で上向き)という対称荷重に対して剛性を保つ必要がある。乱気流で翼が負の荷重(下向き)を受けたときも同様で、形状を保持してタンブル(前転)から確実に回復できなければならない。つまり左右均等な荷重に対しては剛くあらねばならない。ところが旋回のために体重移動(ウェイトシフト)をかけると、片側だけが荷重を受け、翼は非対称に動く必要がある。この「対称荷重には剛く、非対称荷重にはしなやか」という相反する要求を、翼全体を一つの巨大な機構として捉え、その機構の振る舞いとして設計するのが彼の構想だ。

この発想は、従来の「剛い部材で翼を固める」方向とは根本的に異なる。剛性を上げれば対称荷重には強くなるが、体重移動への応答は鈍り、操縦性が犠牲になる。逆に柔らかくすれば操縦性は良くなるが、乱気流での形状保持とタンブルからの回復が危うくなる。スウェイトはこのトレードオフを、材料の剛性ではなく構造全体のメカニズム設計で解こうとしている。鳥の翼がまさにこの性質を持っていることが、彼の設計の生物的模範になっている。

ギャビンは映像の中でパイロットの身体に多数のセンサーを装着して飛んでいることに触れ、計測手法について尋ねる。スウェイトは「その部分はやや遅れている」と認める。ここで本編は有料版への誘導で途切れるため、センサー計測の詳細、プロトタイプの具体的なテスト方法(冒頭でギャビンが言及した「滑走路を走る車の上でのテスト」=車載テスト)、そして実用化までのスケジュールは有料版で語られる。本編で確認できるのは、シミュレーションによる設計最適化、ガルウィング形状のプロトタイプ、そして揚力分布と同調剛性という二大課題の理論的枠組みまでである。

26:40スポーツの構造問題と第7世代の意義

スウェイトが第7世代に賭ける理由は、単なる性能向上ではない。彼がAvianを買った動機そのものが「ハンググライダーに起きたこと(縮小)に対して何かしたい」というものだった。第7世代が成功すれば、性能の向上だけでなく、操縦性の改善による間口の拡大、そして究極的にはコスト構造の変化まで視野に入る。ギャビンは冒頭で、これが実現すれば「スポーツのアクセス、性能、そして潜在的にコストを変え、何十年も続く参加者減少に歯止めをかけられるかもしれない」と位置づけている。

ただしコスト面の現実は厳しい。スウェイトが説明した悪循環(小規模→量産効果なし→効率化投資が無駄→値下げ不可→儲からない→規模拡大不可)は、第7世代の設計が成功してもすぐには解消しない。むしろ新しい設計は初期コストを押し上げる可能性もある。彼が強調したのは、入門用の中古機市場は健全で「機材だけなら最安の航空スポーツ」だという点であり、問題はスクールとインストラクターの不足、つまり「教える人」の供給にある。設計革新は性能と操縦性の両立を通じて「もっと多くの人が飛べる翼」を作れるが、それを教える体制の再建は別の課題として残る。

競技シーンの役割も見逃せない。スウェイトは英国の競技会が新規参入者に寛容で、回収体制も整っていることを、参入の実利的な入口として評価している。彼自身が2016年にブリティッシュ・オープンから競技に入ったように、競技会は「組織化された回収」という実利を提供することで、クロスカントリー飛行の最大の障壁(着陸後の帰還)を取り除く。第7世代の翼が操縦しやすくなれば、この競技入口の価値はさらに高まる。設計、教育、競技コミュニティという三層が揃って初めて、スポーツの縮小に歯止めがかかるという構造が見えてくる。

まとめ

この回の中心にあるのは、ハンググライダーが「第6世代トップレス」以降四半世紀にわたり、炭素とラミネート帆布による剛性向上=性能向上という一方向の進化に閉じ込められ、操縦性を犠牲にするトレードオフの限界に達しているという診断だ。ティム・スウェイトは航空宇宙工学と複合材料の博士号を持ち、週2日は大学で炭素繊維製造の研究を続ける設計者であり、その専門性から「材料で固める」のではなく「翼全体を一つの機構として設計する」という第7世代の構想を説得力をもって語る。揚力分布を楕円の理想に近づけること、対称荷重には剛く非対称荷重にはしなやかに応答する同調剛性、そしてカモメの翼のようなガルウィング形状。これらは鳥の翼の構造を工学的に再解釈したもので、パラグライダーがシミュレーション最適化で理論限界に近づいた一方、剛性部材を持つハンググライダーにはまだ大きな性能の余裕が残されているという指摘が説得力を持つ。

スポーツの現状については、入門コストは歴史的低水準で中古機市場も健全だが、スクールとインストラクターの不足が最大の障壁であり、小規模メーカーの量産効果なきコスト悪循環が新品価格を押し上げているという構造が丁寧に描かれる。第7世代は性能と操縦性の両立を通じて間口を広げる可能性を秘めるが、教育体制の再建は別課題として残る。本編はセンサー計測の詳細とプロトタイプテストの具体像を有料版に譲って途切れるが、設計思想の骨格とスポーツの未来像は本編だけで十分に把握できる。ハンググライダーに詳しくない聞き手でも、翼の力学と業界の経済構造を同時に理解できる構成になっている点が、この回の価値である。

要点

  • ハンググライダーの最後の大きな進化は1990年代後半の第6世代トップレス翼で、以降は炭素繊維とラミネート帆布による剛性・性能向上と引き換えの操縦性悪化という漸進的改善に留まっている。
  • ティム・スウェイトは航空宇宙工学学士・複合材料博士で、シェフィールド大学の複合材料製造研究グループに週2日所属しながら、2017年からAvian Hang Gliders(1989年創業、業界最小級)を率いる。
  • 第7世代の技術的核心は、楕円の理想に近づける揚力分布の改善、対称荷重には剛く非対称荷重にはしなやかに応答する同調剛性、そしてカモメの翼に似たガルウィング形状による「空気が形を決める」翼の実現である。
  • パラグライダーは10年以上のシミュレーション最適化で理論限界に接近しているが、剛性部材を持つハンググライダーはまだ性能の余裕を残しており、鳥の「骨と皮膚」構造を工学的に再現できる余地がある。
  • スポーツ最大の課題は初心者獲得で、英国ではハンググライダーのスクールとインストラクターが深刻に不足している。入門機材は中古市場のおかげで歴史的低コストだが、教える人材の供給が細っている。
  • 小規模メーカーは量産効果を得られず、効率化投資が節約額を上回るため値下げも効率化もできない悪循環にあり、新品トップレス競技機は約1万ポンドに達する。
  • 英国の競技会は新規参入者に寛容で組織化された回収体制を提供するため、クロスカントリー飛行の最大の障壁(着陸後の帰還)を取り除く実利的な参入口として機能している。
  • 本編はパイロット身体のセンサー計測やプロトタイプの車載テストの詳細を有料版に譲って終わるが、設計思想の理論的枠組みとスポーツの構造問題は本編で十分に把握できる。