
#280 記録を破り、ロボットを作る:Jeremy Soperと語る未来
- イギリス人ハンググライダーパイロットのジェレミー・ソーパーが、高所恐怖症を克服して記録破りのパイロット兼ロボティクス起業家になるまでの軌跡を語る。ケニアでの377kmアウ...
- [4:15] シリコンバレーでロボット事業を立ち上げる ジェレミー・ソーパーは現在カリフォルニアに拠点を移し、ロボティクス企業を立ち上げている。彼の掲げるビジョンは壮大で...
- 具体的な仕組みは、トラクターの後部に16対のヒューマノイドアーム(人型ロボットの腕)を搭載し、ホンジュラスから遠隔操作で除草作業を行うというものだ。人手不足に悩む農業現場...
Cloudbase Mayhem Podcast / Gavin McClurg
イギリス人ハンググライダーパイロットのジェレミー・ソーパーが、高所恐怖症を克服して記録破りのパイロット兼ロボティクス起業家になるまでの軌跡を語る。ケニアでの377kmアウト・アンド・リターン記録、パラグライダーに追い上げられるハンググライダー界への危機感、そしてAIとロボットによる農業自動化の未来という3つの柱が有機的に絡み合う。ホストのギャビン・マクラーグとの会話は、技術的な飛行の議論と楽観的な未来論を行き来しながら、自由飛行への純粋な情熱が随所に滲む温かいトーンで進む。
シリコンバレーでロボット事業を立ち上げる
ジェレミー・ソーパーは現在カリフォルニアに拠点を移し、ロボティクス企業を立ち上げている。彼の掲げるビジョンは壮大で、「地球上と宇宙空間に豊かさのインフラを構築し、最終的にはあらゆる肉体労働を自動化する」ことだという。まず最初の事業として、シリコンバレーから車で1時間ほどのサリナス渓谷——「世界のサラダボウル」と呼ばれる農業地帯——の有機農場で、遠隔操作のヒューマノイド・アバターを使って除草を行う計画を進めている。
具体的な仕組みは、トラクターの後部に16対のヒューマノイドアーム(人型ロボットの腕)を搭載し、ホンジュラスから遠隔操作で除草作業を行うというものだ。人手不足に悩む農業現場で、農薬ではなくロボットで雑草を除去するという発想である。
ギャビンがAIに対する見解を尋ねると、ソーパーは「AI業界にいる身としては前向きに聞こえなければならないが」と前置きしつつ、現実世界におけるAIは「これまでのところ約束過多で成果不足」だと率直に認める。だからこそ、作業の自動化が確実にできるまで人間をループに入れ続ける設計を採用しているのだという。多くの企業が実世界へのロボット投入に失敗してきた経緯を踏まえ、「同じ過ちは繰り返さない」と語る姿勢に、楽観と慎重さが同居している。
自動化と雇用の未来——農業革命の歴史的教訓
ギャビンは、ロボットがレタス収穫などの仕事を奪った場合、人類全体の豊かさにつながるのか、それとも富が一部の上層部に集中するだけなのか、という根本的な問いを投げかける。配管工のような仕事が不要になったとき、人間は何をするのか。ベーシックインカム(UBI)の可能性についても話題が及ぶ。
ソーパーは歴史的な類推で応答する。農業はかつて人口の99%を巻き込んでいたが、数世代のうちに2%未満へと縮小し、その一方で収量は50倍から100倍に増えた。「生きている記憶の中ですでに最大級の段階的変化を経験している」のであり、同様の変化が再び起きても不思議ではないという。肉体産業に従事する人の数は減り続けるが、その分人々は今日では想像もつかないようなことに時間を使えるようになる。「人間がやることは常にある。ただ、それが何なのかはまだわからないだけだ」というのがソーパーの見解だ。
教育についても踏み込む。哲学者サム・ハリスの「どの学位を取るべきかは本当にわからない」という最近の主張に触れ、ソーパー自身は「伝統的な学位取得の道に必ずしも進むべきではない」と考えるという。彼自身はハードスキルを可能な限り身につけたが、これからの時代はむしろソフトスキル——人間を時代遅れにしない要素——が価値を持つようになると指摘する。もし子どもがいたら「たくさん友達を作り、情熱を追い求めなさい」と助言するだろうと語る。好きなことを見つければ上手くなり、いずれそれで報酬を得られるかもしれないからだ。
高所恐怖症からハンググライダーへ——飛行の原点
「バーで知らない人に『何をしている人?』と聞かれたら?」というギャビンの問いに、ソーパーは機知に富んだ答えを返す。ハンググライダーパイロットばかりの部屋では「ロボット工学者」と名乗り、ロボット工学者ばかりの部屋では「ハンググライダーパイロット」と名乗る——つまり、常に群衆の中で際立つ存在でありたいということだ。
ソーパーの飛行の原点は、宇宙飛行士への憧れだった。誰もが通る「宇宙飛行士フェーズ」を彼は手放さなかったが、大きな問題があった。極度の高所恐怖症である。イングランド南西部の田舎、平屋建ての家で育ち、2階に上がるだけで恐怖を感じ、1階の窓から外を眺めるだけでめまいがしたという。周囲には羊の方が人間より多い環境で、山といっても300フィート(約90m)程度しかなかった。
恐怖を克服する最善の方法は正面から挑むことだと考えたソーパーは、空を飛ぶことを決意する。最初はYouTubeでウィングスーツの動画に夢中になったが、「動画を作っている連中が動画を公開するより早く死んでいく」事態に直面し、動画を見尽くしてしまう。するとYouTubeのアルゴリズムが「ウィングスーツが好きなら、ハンググライダーもどうですか」と勧めてきた。これがハンググライダーとの最初の出会いだった。生存率が多少高そうで、巨大な崖の少ないイギリスでもアクセスしやすいと考えたのだ。
17歳で運転免許を取得するとすぐ、コーンウォールのCloud 9というハンググライダースクールへ向かった。実物のハンググライダーを見たのは、初レッスンでクリップインした瞬間が初めてだったという。うつ伏せ(プローン)の姿勢で鳥のように飛ぶことに魅了され、以来13年間飛び続けている。現在30歳。かつてはイギリス最年少のパイロットだった。ハンググライダーを入口に固定翼機や回転翼機、マイクロライトの免許も取得したが、タンデムパラグライダーは「物足りなかった」と語る。プローンではないからだ。「ハンググライダーに代わるものはない」と断言する筋金入りの信奉者である。
パラグライダーとの記録競争——ハンググライダーの存在意義
ソーパーがケニアで打ち立てたアウト・アンド・リターン記録は、オーウェン・モースの記録を破るものだった。モースはかつてシエラで377マイル(約607km)を飛んだパイロットで、このポッドキャストにも出演している。ソーパーはXCマガジンの記事で「さあ、パラグライダー諸君、かかってこい」という趣旨の挑発的な言葉を残している。
これは友好的なライバル関係だが、ソーパーは真剣に危機感を抱いている。理論上は性能が低いはずのパラグライダーが、着実にハンググライダーの世界記録に迫っているのだ。実際、トライアングル記録ではパラグライダーがかなりの差をつけてハンググライダーを上回っている。ハンググライダーは携帯性と利便性ではパラグライダーに永遠に敵わない。だからこそ「性能の高さ」が唯一のUSP(独自の強み)でなければならず、それを証明する唯一の方法が「より遠くへ飛ぶこと」だという。
もし性能の優位性を失えば、新規参入者がハンググライダーとパラグライダーを比較したとき、ハンググライダーを選ぶ理由がほとんどなくなる。「鳥のような感覚」は魅力的だが、未経験者には伝わりにくい。ソーパーは「パラグライダーを寄せ付けないための一助になりたい」と語る。
ギャビンは、アントワーヌ・ジェラールがパキスタンで400kmのFAIトライアングルを飛んだこと、テキサスにはダスティンが保持する700マイル超のオープンディスタンス記録(ハンググライダー)があることを挙げ、「テキサスに来るべきだ」と誘う。ソーパーは「十分近づいている」と応じつつ、レイクタホにも行ったことがあり、この地域のサイトは素晴らしいと語る。ギャビンは「オーウェンズ(カリフォルニアの有名フライトサイト)ほど大きくはならない」と、その強烈なコンディションを強調した。
ケニア遠征——リフトバレーでの記録挑戦
ソーパーは記録を検討する中で、オープンディスタンスはテキサスでなければ無理、トライアングルはフランスのコル・デ・ザールでパラグライダーが名を上げている場所で挑戦済み、という状況を整理した。残るアウト・アンド・リターンが最も実現可能に見えたため、Google Earthで最も長く連続する尾根を探し、リフトバレーに行き着いた。しかしパラグライダーがすでにこの地を発見しており、ハンググライダーでは1990年代にジュディ・レドンらがエアロトウ遠征で飛んで以来、誰もフットローンチしていなかった。
ソーパーは数カ月前にハンググライダーを船便で送り出した。「無事に届くとも、ましてや同じ10年内に届くとも思っていなかった」が、届いたという連絡を受けて現地へ飛んだ。サファリワゴンを運転するドライバーを見つけ、飛べるかどうかもわからないまま現地へ向かったところ、結果的にハンググライダーに最適な場所だった。
離陸場所の確保には予想外のドラマがあった。最初に見つけた候補地には5本の木が邪魔をしていたが、ドライバーが借地農家と交渉し、なんと30分以内にチェーンソーを持った男が現れて5本の木を切り倒してくれた。フェンスを外し、地主に支払いをして、新しい離陸場が完成した。しかし3〜4日後、地主の兄弟が「自分には支払いがない」と不満を抱き、フェンスを元に戻してしまう。さらにこの家族には8人の兄弟がいて、全員が利益の分け前を求めたという。ケニアならではの物流的課題だったが、離陸場自体は完璧だった。風が常に吹き上げるチュート(斜面の窪み)に真っ直ぐ向かい、尾根に出れば南のターンポイントまでわずか1kmという好立地だった。
377kmアウト・アンド・リターンの実際——10時間半の闘い
ケニアの尾根は南北に走り、卓越風が尾根に当たる。気象風は東寄りで、行き帰りに多少の循環の助けはあるが大きくはない。鍵となるのは、卓越風が尾根を越えて吹き下ろすカタバティック風(夜間冷却による下降風)を打ち消せる強さの日を見つけることだった。しかしこの地域には数百km間隔でしか気象観測点がなく、まともな天気予報がない。毎日飛んでみるしかなく、記録の可能性があるかどうかは遠端まで行ってみないとわからない。しかも引き返す最速の方法は飛んで帰ることなので、離陸した時点で8〜10時間のフライトに事実上コミットすることになる。
日中に谷の真ん中に不時着するのは危険だ。家に帰れば竜巻と呼ぶようなダストデビルが発生し、谷に不時着すればライオンやゾウがいる。記録当日、ソーパーは「遠端到達が半日で半分なら、自分は大幅に遅れていた」と振り返るが、帰路はずっと速かった。行きは遅く、帰りは雲がリフトを示してくれれば速く走れる。「早すぎる諦めは禁物」という教訓だ。
記録は377km、飛行時間10時間半。時速約37kmという数字にギャビンが「かなり遅い」と指摘すると、ソーパーは「私はブロックで一番速いパイロットではない。カテゴリー1の大会でトップ10に入ったこともない」と認めつつ、「私のUSPは10時間半耐え続けること。それ自体がスキルだ」と返した。実際、尾根伝いのダイナミックリフトで飛べるのは最初の1時間だけで、南側の急峻な区間を過ぎると傾斜が45度程度になり、メテオロ風も弱いためサーマル(上昇気流)を使って旋回する必要がある。ソーパーは「持続的な10m/sのリフトがあったが、驚くほど滑らかだった」と語る。パラグライダーパイロットが「尻が縮む」と感じた日も、ハンググライダーではそれほどでもなかったという。
リスク管理と「尻が縮む」瞬間
ケニアの地形には「上の棚」と「下の棚」があり、下の棚に降りると2,600mの高地で高温・高高度という厳しい条件での着陸を強いられる。ハンググライダーは非常に高速で進入するため、下の棚の縁を越えられるかどうかは瀬戸際の勝負になる。ソーパーは何度か「慎重にリフトが続くことを祈りながら、下の縁を越えられる地点まで到達するのを待つ」場面があったと告白する。
最もスリリングだったのはアウトランディングのリスクだ。事前にGoogle Earthで確認したものの、実際の状況は異なる。尾根が途切れて後退する「フィンガーズ」と呼ばれる区域では、尾根の裏に閉じ込められることを警戒し、大きく迂回した。ほとんどのフライトでは平地を横切るラインを取ってコーナーをショートカットしたが、それには帰還時に雲街(クラウドストリート)が出現するタイミングに依存するという不確実性が伴う。
このエピソードはここで通常チャンネルでの配信を終え、残りはサブスクライバーチャンネルで提供される。ギャビンはサブスクリプションへの移行に伴う技術的な問題について謝意を述べ、SpotifyとYouTube Musicがプライベートフィードに対応していない点を除き、ほとんどのプラットフォームで視聴可能だと説明している。
まとめ
このエピソードは、一見無関係に見える3つのテーマ——ハンググライダーの記録挑戦、パラグライダーとの競争、AIとロボットによる農業自動化——を、ジェレミー・ソーパーという一人の人物の「限界に挑む」姿勢で見事に結びつけている。ケニアのリフトバレーで377kmを10時間半かけて飛び切る持久力は、彼が語るロボット事業の「人間をループに入れながら確実に自動化を進める」慎重さと通底する。パラグライダーに記録を奪われつつあるハンググライダー界への危機感は、単なるスポーツの競争を超えて、コミュニティの存続に関わる切実な訴えとして響く。聞き手に残るのは、恐怖を正面から克服し、情熱を追い続けることの価値——ソーパーが若者に伝えたいというメッセージそのものだ。
要点
- ジェレミー・ソーパーはイギリス人ハンググライダーパイロット兼ロボティクス起業家で、ケニアのリフトバレーで377kmのアウト・アンド・リターン世界記録を樹立した。
- 極度の高所恐怖症を克服するために17歳でハンググライダーを始め、YouTubeのアルゴリズムがきっかけで出会った。
- 記録飛行は10時間半、平均時速約37km。最初の1時間はダイナミックリフト、以降はサーマルを使った旋回飛行だった。
- ケニアでは離陸場確保のため地主家族8人との交渉、木の伐採、フェンスの撤去・再設置といった物流的課題に直面した。
- パラグライダーがトライアングル記録でハンググライダーを大きく上回っており、ソーパーは性能面での優位性維持をハンググライダー界の存続条件と位置づける。
- ソーパーのロボット事業はサリナス渓谷の有機農場で、トラクター搭載の16対のヒューマノイドアームをホンジュラスから遠隔操作して除草する計画。
- AIは現実世界では「約束過多で成果不足」と認めつつ、農業が人口の99%から2%未満に縮小しつつ収量を50〜100倍にした歴史的類推から、楽観的な未来像を描く。
- 若者への助言は「学位取得より友達作りと情熱の追求」。ソフトスキルが人間を時代遅れにしない鍵だという。